感想のページ 作者「え」
江戸川乱歩集
日本探偵小説全集2
創元推理文庫(2006.9/30読了)
今でも、殺すことが、どうして悪事なのか、ほんとうに、わかっていないのですよ
『江戸川乱歩集』本文より
江戸川乱歩の短中篇を集めた本。
20を超えてから江戸川乱歩を読むとずいぶんと昔と違った印象を受ける。
小学生の時なんかはミステリという謎解きのおもしろさを知ったり少年探偵団ものの冒険を読んでどきどきしてたものだけれども。
大抵の話になにか人間としての一線をほんの少しズレてしまった人が登場している。
殺すことと愛することを同じに捉えてしまう者、欲求がないために歪んだ欲求を持ってしまった者など。
人間でありながら人間ではない。
一体なにものであるのか。
分からない理解できない、それでも彼らは彼らなりの倫理観の中で生きている。
そんな人たちを想像して怖しくなる、ぞっとする。
それこそが乱歩の描く世界の恐ろしさを構成するもののうちの一つなんだろうなぁ。
「うつし世は夢 夜の夢こそまこと」
その意味を少しだけ理解できたような気がする。
【収録作品(大正12年~昭和31年)】
二銭銅貨
心理試験
屋根裏の散歩者
人間椅子
鏡地獄
パノラマ島奇談
陰獣
芋虫
押絵と旅する男
目羅博士
化人幻戯
堀越捜査一課長殿