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チーム・バチスタの栄光 上

海堂尊
宝島社文庫
(2007.12/20読了)

私は始めからずっと見ていましたが、おかしな点には気づきませんでした。どう見ても単なる医療ミスではなさそうです。何かが起こっている。それが何かわかりません。何が何だかさっぱりわからないんです。

『チーム・バチスタの栄光 上』本文より

第4回「このミステリーがすごい!」の大賞作『チーム・バチスタの栄光』。
2008年2月に映画化。

チーム・バチスタと呼ばれるバチスタ手術を奇跡の成功率でなし遂げる天才チーム。
しかし、ここのところ連続して失敗を繰り返している。
医療ミスなのか殺人なのか、それとも。
それを突き止めるために院長先生はひとりの医師を派遣する。

なんとも魅力的なテーマな小説。
ミスか殺人か。
上巻だけ読み終わったけれども、なにも分からない。
伏線はたくさん張られているはずなんだけれども、一体なにが問題でこの事件に発展しているのかが謎。

どうも下巻を読まないことにはなにも言えそうにない。

フィクションなのは分かっているけれども、子供に対する心臓外科手術の背景や紛争地域の子供に対する手術に対する各省庁のどたばたっぷりは色々考えさせられる。
実際に小説内のようなことが起こったら世間はどう動くんだろうかとか考えてしまう。
それくらいに「実際」の医療の現場はどうなのか知らないんだよなぁ。

ラストに第2部の最初の1章分を収録するなら下巻に2部以降を収録して欲しかった。
それよりもそんなにページ数ないんだから上下に分けなくても…と思った。
文庫版の作りにちょっとげんなり。

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チーム・バチスタの栄光 下

海堂尊
宝島社文庫
(2007.12/21読了)

スネイル(かたつむり)にシーアネモネ(いそぎんちゃく)。白鳥の話は知性の地平線を越えて大空に旅立ってしまった。俺はひとり置き去りにされた。

『チーム・バチスタの栄光 下』本文より

『チーム・バチスタの栄光』下巻。

第2章からラストまでを収録。

あまりに変態的な厚生労働省の役人「白鳥」が登場。
田口とともに事件の真相を暴こうとするのだが。
これがまたあまりに変人。
聞き取りに必要なパッシブ・フェーズとアクティブ・フェーズってなんだよw
もはや何がやりたいのか全然わかんねーよ。

言うなれば奥田英朗の伊良部医師よりおかしいよっ、この白鳥(笑

予想外の規格の人物に苦笑しながら読み進めていくと、前半のマジメで謎がさっぱり浮かび上がらない展開と後半の奇天烈な展開に整合性が見えてきだして、真相へ。

事件の謎や現代にある医療現場の裏に潜む問題。
それらを暴き出して、かつ爽やかに幕を閉じる展開にはもはや拍手をしたいくらい。
見事なまでのエンターテイメント小説だった。

あの白鳥役を映画では阿部寛か…
ものすごく合いそうな感じだ。

【映画 チーム・バチスタの栄光】
http://www.team-b.jp/index.html

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ナイチンゲールの沈黙 上下

海堂尊
宝島社文庫
(2008.10/14読了)

子供と医療を軽視する社会に、未来なんてないわ

『ナイチンゲールの沈黙 上』本文より

田口・白鳥シリーズ第2弾『ナイチンゲールの沈黙』。
バチスタ事件から9ヶ月後、彼らは再び再会する。

そして白鳥は相変わらずな奴だったw

ミステリでありながら、医療現場に一歩踏み込んだ内容が非常に面白かった前作。
近作は小児科に焦点があたる。

医療あたる医師や看護師側、そして子供の側視点の描写が非常におもしろい。
現実にまさにありそうなシチュエーション。
一筋縄にいかない小児科ならではの親との問題や術前のメンタルケアの問題など。

なるほどなぁ、と思いながら読んでいた。
時々出てくる「これはないわー」と思える医療の現場の描写も、よくよく考えたらありそうでなんかイヤだ(笑
「極楽病棟」とか「ドア・トゥ・ヘブン」とか(笑

そういう苦笑しがちなものがありながらも、子供たちの直球の本音や成長がしっかり描かれるところも今作で好きなところだ。

まぁでもあくまでこの感想は本筋とはズレたところの感想なのですが(笑
もちろん本筋の歌姫の入院や事件の方ももちろん文句ナシです。

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ジェネラル・ルージュの凱旋 上下

海堂尊
宝島社文庫
(2009.3/8読了)

それなら聞きたい。医療を、いや、救急医療をここまで追い詰めてしまったのは一体誰だ?

『ジェネラル・ルージュの凱旋 下』本文より

田口・白鳥コンビの3作目。
2作目の『ナイチンゲールの沈黙』と同時進行で進むもうひとつの物語がこの『ジェネラル・ルージュの凱旋』。
映画の予告では何度も見たのだが…あれ?まったくの別物なんじゃないか(笑

今度のテーマは救急医療。
現在のと言っても過言ではないような描写で救急医療における不正をテーマに描かれていくのだが…
ジェネラル・ルージュ=速水先生がカッコイイ!

彼がジェネラル・ルージュと呼ばれる所以となった事件での行動も含め、彼の行動力ひとつをとっても非常にさまになる。
もうこの本は彼が主人公だろ(笑

田口先生や白鳥はあくまで脇役のようだ。
…なんていいつつも白鳥のいつもの論理戦も見所。

現場と病院のお上の対立、そして息もつかせぬ救急医療の現場の描写。
それに激しい心理戦が繰り広げられる会議。
なによりあまりに個性豊かなキャラクターたちや、「桜宮」という街を舞台にし様々な事件が絡まりあう様は圧倒的。
「ナイチンゲールの沈黙」は同時進行だから、そりゃもう見事なまでにリンクしているのだが、「螺鈿迷宮」へ至る姫宮の行動や、「チーム・バチスタの栄光」が病院に与えた影もものすごく小説内で活きている。

だからか、それらの本を読んでいるとものすごく楽しめるかと思う。
ってかミステリ性を排除してエンターテイメントに徹してるだけにただただ面白いです。

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螺鈿迷宮 上

海堂尊
角川文庫
(2009.1/18読了)

「どうして患者に働いてもらう、なんてことを思いついたのですか?」
「妹のアイディアです。患者は病気を持った普通の人、病気だからといって、普通に生活する権利や生きる楽しみまで奪うのはおかしい、ベッドにくくりつけていたら、よくなる人までも悪くなる、というのが彼女の持論です」

『螺鈿迷宮 上』本文より

バチスタ・スキャンダルから1年半経ったとある病院が舞台。

碧翠院桜宮病院。
ここでは政府も見捨てつつある終末医療について取り組む病院。
病気の程度に関わらず、患者自身も働いているというここはまるで生活共同体。
病院には寺としての機能もあり、死が非常に身近な場所でもある。

一見すると現在のニーズに見合っている新しい病院を模索しているように見えるが…
大学生の記者バイトの天馬はこの病院で失踪した男の行方を捜すという依頼を受ける。

現在の末期治療の問題点、経営難がなぜ起こっているのかという問題を提起しながら、物語としての面白さ。
つまりは病院で行方不明になった男、また不審死という謎の魅力が際立っている。

そりゃ病院としてはあまりに特異。
特異だけれども、その経営の仕方には思わず納得してしまう。
いまの医療のあり方そのものが昔のやりかたそのままではどうにも立ち行かなくなってしまっているのではないかと思えてくる。

これだけテレビでも医療問題が次々に取り上げられている現状でこんなものを読んでしまったらなぁ。

帯には「白鳥」とうい名前が堂々と出ていたが、上巻ではなかなか出てこない。
でも、いやこれでも十分面白いじゃないか。
というか上巻まで読んで白鳥が出てくる雰囲気じゃないよなーと思いつつも、途中で登場した彼がどう流れを変えていくのかに期待。

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螺鈿迷宮 下

海堂尊
角川文庫
(2009.1/19読了)

「一体何なんですか、この病院は。僕がきてからもう三人の患者さんが亡くなった。患者なんて十人そこそこしかいないのに、こんなに短期間でこの数は異常です」

『螺鈿迷宮 下』本文より

『螺鈿迷宮』下巻。

言いたいことはほぼ上巻の感想で書いてしまったし…

まぁとにかく下巻は伏線の回収がすさまじかった。

白鳥という東城大からの刺客や、新聞社のバイトとしてもぐりこんだ主人公の天馬。
その二人がメインでいろいろなものを桜宮病院の実態を目にしてしまうわけだが、それ以上に上巻で語られた内容がとんでもないところで引火していくかのような展開は凄まじかった。

小説の面白さってまさにこういうもののことだよな、と思えた。
もちろん白鳥というチームバチスタで活躍した人物の登場や、同じ世界観を舞台に展開するストーリーも見もの。

なんとなく「チームバチスタ」と「ナイチンゲール」を読んでいたのが、この作品で読んでいてよかったって思えたしなぁ。

また、いつものことながら医療の闇とでもいうべき問題に対する提起の仕掛け方と見せ方も非常に興味深く読めました。

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バイバイ、エンジェル -ラルース家殺人事件-

笠井潔
創元推理文庫
(2006.6/18読了)

1979年の笠井潔のデビュー作にして矢吹駆シリーズ1作目の新装版。

舞台はフランス。
探偵役の駆のほかの人物に日本人は当然のごとくいません。
なので翻訳モノが苦手な方はちょっとしんどいかも。

赤い血文字からはじまる赤に彩られた首なし死体の発見現場。
密室の中爆死した死体。

のっけからなんか本格のような要素がいっぱいです。
読み進めていくといわゆる「本格推理小説」とはまた一線を画したような要素に気づかされるわけですが。

この本自体が本格推理小説ファンのために書かれた推理小説ではなく、"評論家笠井潔"が目指した思想を読み解くために必要な手段として本格推理小説が選ばれ執筆された。
それだからか犯人との"対決"のすごいおもしろい。
憎悪や快楽とかそういった動機のものとは全く違うある種の高みに達した探偵と犯人とのやりとりがものすごかった。

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OKAGE

梶尾真治
新潮文庫
(2005.10/4読了)

世界各地で子供が行方不明に。
子供にしか見えない生き物たち、起き上がる死者たち。
現実が少しずつ、しかし確実に何かが変わろうとしていた。

感想。

誰しも変身願望ってのは多少なりとも持っているものだと思う。
何かに導かれるようにして世界の核心を垣間見たり、世界を救ってみたりしたいと思う。
または実際にできるんじゃないだろうかと思えてしまうとか。
そんな誇大妄想も時を経るにつれ「やっぱり無理だとか」「ありえない」の一言で片付けてしまうようになってしまう。
でも実際にできると思って行動したりするのって傍目から見てみたり、自分で到達していく様を実感するのはステキなことじゃないかな。
そんなことを読みながら思ってた。

いろんなジャンルの楽しいことをごちゃまぜにして、より楽しく見せたのがこのOKAGEだと思う。
単純にSFとはまた別のものなんじゃないかな。

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クロノス・ジョウンターの伝説

梶尾真治
ソノラマ文庫
(2005.11/17読了)

「クロノス・ジョウンター」という過去へ跳ぶことができる機械が発明された。
しかし過去へ跳ぶことができるが、それには代償を伴ってしまう。
過去へいくことはできるが「現在には帰ってくることが出来ない」
飛んだ過去の時間の2乗の未来へ飛ばされてしまう。つまり2年前に行ったら4年後へ。4年前なら16年後に飛ばされてしまう。
たとえどんなリスクがあろうとも変えたい、取り戻したい過去のために「クロノス・ジョウンター」を使って過去へ飛んだ人々のお話。

『この胸いっぱいの愛を』の原作となった小説。

この胸~、とは似て非なる物語ですが、ものすごく好き。
心に刻みたい場所や助けたい人がいる、この小説の中には純粋な想いがいっぱいです。

行って見たい、もう一度やり直したい過去かぁ。
やっぱりある。
その"時"に変化をくわえたら今の人生がガラリと変わってもおかしくないようなターニングポイントが。
実際変えたらどうなるだろう。
そんなことを考えてみるのもおもしろいかな、ふとこの本をよみ終わってから思った。

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この胸いっぱいの愛を

梶尾真治
小学館文庫
(2005.10/21読了)

映画「この胸いっぱいの愛を」ノベライズ。
原作ではありません(笑

1986年の門司(もじ)。
やり残したことがある時代へと来てしまった登場人物たち。
そのうちの一人の鈴谷比呂志は大好きだった女性に再会する。
その人は病気で死んでしまったが、この時点ではまだ死んではいなかった。生きていた。
幼かった頃、彼女が死んでしまうことに耐えられず東京へと何も言わずに帰ってしまった。
今度こそ彼女を死なせない、そう決意し幼い頃の自分と一緒に彼女を助けようとする…。

ラストが映画と大分違う!?
でもこれって(反転)【未来を変えたことによってヒロは飛行機に乗らずにすんで助かったわけだけど、他の人はやっぱり現在に戻って死んでしまうわけで…………】。
だとするとこれって本当にハッピーエンドなのか?

映画との違いにちょっと驚いた。

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サラマンダー殲滅

梶尾真治
ソノラマ文庫NEXT
(2005.9/30読了)

<汎銀河聖解放戦線>のテロに巻き込まれ、夫と子を亡くした神鷹静香。
彼女は汎銀戦に対して復讐することを決意する。
しかし普通の主婦が一流の戦士となり、さらなる力を欲した時に記憶を代償にする必要があった。
そして彼女は復讐を遂げるために一つの選択をする。

第12回日本SF大賞受賞作。

遠くの未来のはずなのに今と変わらない人間。
もしくは人の手によっていびつになってしまった人間。
豊かで輝かしい未来とはかけ離れてしまっている舞台。
それでもどこかでこんな未来もあるかもしれないなと思えてしまう。
それってどうなんだろう。
未来に希望が持てていないのだろうか。

物語自体はものすごく面白い。
全編CGでありえないアクションとかをこれでもかというくらいに詰め込んだ映画のよう。
そんなありえないようなことでさえ文字を読めば想像ができてしまう描写がすさまじいなと思う。

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ドグマ・マ=グロ

梶尾真治
新潮文庫
(2005.9/30読了)

病院内に潜む闇。
存在し得ない怪物を中心に日本を変えようとする右翼の人や秘密組織、戦前から病院に隠れ住むアメリカ人、その他様々な人の思いが病院内で交錯する。

群像劇です。
そして幻想推理小説(?)の「ドグラ・マグラ」の影響を受けたSF作家の梶尾真治による「ドグマ・マ=グロ」。
SFならではの設定が物語を読み進めるほどに次々と出てくるので、SF好きな人にとってはニヤリとしてしまうところが多々あったり。

登場人物がものすごくたくさん出てきます。
しかも個々の視点で物語が進んでいく。
けれども誰が誰のことやらよく分からないなんてことがなかったてのは作者の力量なんだろうなぁ。

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美亜へ贈る真珠

梶尾真治
光文社文庫
(2009.4/4読了)

「彼は、もう私のことを忘れているかもしれません。肉体的時間、新陳代謝だけが遅くなって、精神的、感覚的な時間経過は外部の私達とそう変わらないとしたら、もう私のことなど、忘れてしまっているのではないでしょうか」

『美亜へ贈る真珠』本文より

梶尾真治のデビュー作『美亜へ贈る真珠』を収録した短編集。
解説は山田正紀。

短編傑作選、しかもロマンチック篇と銘打たれただけあって名作揃い。
もう切なすぎる。

時間と距離と愛。
これらにSFという素材を入れたら余計に愛が際立った、まさにそんな短編が揃っていた。

「黄泉がえり」や「この胸いっぱいの愛を」だけが梶尾真治の真骨頂じゃないのだよ(笑
むしろ短編の方が好みです。

なんだろうな…
やはりこの作者の「切ない系」はかなりぐっときます。
成就する愛とかじゃなくて、むしろ決して結ばれない愛というかそんなの多いよな…
でもそれだけじゃ終わらない、さらに二転三転させてくるのだからあなどれないです。

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ムーンライト・ラブコール

梶尾真治
光文社文庫
(2008.9/14読了)

自分が必死で学究に励んできた結果が、こんなふうな形で役に立つなんて予想外じゃないか。痛快じゃないか。他に何も要りはしない。あのウェンディのような娘の笑い顔が自分達への報酬だ。無事に「最後の一葉」がやれそうじゃないか。

『ムーンライト・ラブコール』収録『ヴェールマンの末裔たち』本文より

ヴェールマンの「枯れ木に一枚の葉を描き、少女に生きる希望を与えた」という逸話と時間を止めるという能力をミックスした「ヴェールマンの末裔たち」がこの短編集の中ではもっとも好きだ。

SF作家である梶尾真治の短編集。
2007年発売の文庫だったので、比較的最近のものが収録されているのかと思いきや80年代初頭に発表されたものが多く収録されている。

裏表紙に「すべての読者に幸福な気持ちを運ぶ」とかかれていたのと、そろそろSFが読みてぇなぁと思い読んでみた。

見事に策略にはまった。
この読了後のじんわりくる幸福感は絶大すぎ。

SFとしても堪能。
SFといっても、ハードなものではなく、どちらかというと「すこし不思議」という意味での「SF」が多かったかと思う。
短編だから読みやすい上に、SFとしてもライトなSF。
それから80年代初頭というSFがブームとなった年代ならではのノスタルジーも感じれたと思う。

ノスタルジーとほんわか気分を満喫した、つまりは雰囲気に浸れるもの満載だったかと思います。

梶尾真治と言えば『黄泉がえり』っていう人にぜひオススメ。
そんでもってこれをきっかけにSFの世界へいらっしゃい、ってなもんです(笑

収録話:
・ムーンライト・ラブコール
・アニヴァーサリィ
・ヴェールマンの末裔たち
・夢の閃光・刹那の夏
・ファース・オブ・フローズン・ピクルス
・メモリアル・スター
・ローラ・スコイネルの怪物―B級映画怪物映画ファンたちへ
・一九六七空間

さて、書き忘れたがこの文庫の解説は尾之上浩司。
滔々と梶尾真治の著作ベスト10を語っていたわけだけれども、どうにも好かない。
なんで切ないSFの「ちほう・の・じだい」や、ごった煮なのに読後感すさまじいものがある「OKAGE」を入れないかなぁ。
「クロノス・ジョウンター」ももっと上位にあってもいいと思うぞ。

なんて思ってたけど、上位は納得。
いや、梶尾真治を語る人って大抵こういう順位にしちゃうんだよな。

「エマノン」と「サラマンダー」「未亜」は傑作だと思います ヽ(´ー`)ノ

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実録鬼嫁日記~仕打ちに耐える夫の悲鳴~

カズマ(鬼嫁被害者の会 会長)
アメーバブックス
(2008.2/1読了)

「あなたの財布はいくら抜いても入ってる魔法の財布ね!」

『実録鬼嫁日記』本文より

カズマさんのblog「実録鬼嫁日記」を本にしたもの。
2003年1月~2004年12月まで。

2006年あたりには直接読みに行っていたんだけれども、初期の頃はまったく知らなかったので楽しめた。
というか泣けてきた。・゚・(ノД`)・゚・。

ひどい。
この扱いはないわ。・゚・(ノД`)・゚・。

愛情はそのうち情愛になるとか聞いたことがあるけど、これって情愛なんだろうか。
それともツンデレか?(笑
9:1くらいの。
たった1のためにだけに理不尽さも甘んじて受けられるくらいの愛を持って結婚生活が続いているんだろうか。

なんにせよこの嫁をなんとかできるのは著者のカズマさんくらいだろうと思う。
読み終わってみたら「がんばれ」とエールを送りたくなった。

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ナルキッソス narcissu

片岡とも
カバーイラスト:ごとP
本文イラスト:いくたたかのん
MF文庫J
(2008.7/26読了)

寒空、慣れないクラッチに車体を揺らした日のこと。
二人してパジャマ姿のまま国道を目指した日のこと。
そんな冬の日のこと。

『ナルキッソス narcissu』本文より

ねこねこソフトのライターである片岡ともによる『ナルキッソス』。

片岡ともという名前を見かけて思わず買ってしまった。
もう随分と長い間アドベンチャーゲームというものから遠ざかっていた。
けれども、最近ねこねこソフト再起とかいうのを聞いて5年ぶりくらいにうずうずしてますw
そのタイミングでこの小説発売、と。
銀色やみずいろに歓喜してゲームをやっていた世代からするとやっぱり買っちゃうわけです(笑

さて、この『ナルキッソス』ですが。
いわゆるラノベで求められるものとは少し違ったような印象を持ちました。

病院の7階に踏み入れれば必ずいつかは死んでしまう。
3度目の一時の退院はあっても4度目は無い。
そんな病院の7階でひたすら死を待つ少女と少年の逃避行が描かれる。

ただどこへというわけでもなく、ただ死という現実を待つ病院を抜け出しどこかへ向かう。
その中でふたりの間に連帯感のようなものが生まれてくる。

自らの運命に抗うわけでもなく、ただひたすら死という運命から逃げ続ける。
今まで諦めでしかなかった人生に、何かを見つけるわけでもない。
強いて言えば死に向かって進むことに対して何か意味を見つけようとでも言うのだろうか。

逃れられない運命に対して彼らがとった行動にもはや何か言うべきことはなにもない。
いや、なにも言えない。
ただこれは……
。・゚・(ノД`)・゚・。 切ねぇよ

ラブコメでもラブストーリーでもなく、これはひとりの少女の生き方そのものを描いた小説だと感じた。

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しずるさんと無言の姫君たち
The Silent Princess In The Unprincipled Tales

上遠野浩平
イラスト:椋本夏夜
富士見ミステリー文庫
(2006.12/12読了)

基本的に物語というのは身勝手と独善と、そして抑圧が絡み合っているものだけど、白雪姫というのはその中でも特に欺瞞が多い種類に入るでしょうね

『しずるさんと無言の姫君たち』本文より

今度はまるで童話のような殺人事件が4つ。
白雪姫、人魚姫、眠り姫、赫夜姫。
……あ、全部「姫」だったのか。

一見すると謎に満ちている。
けれども紐解いてみるとそんなことはない。

にしても副タイトルはよくできているよなぁ。
この本のことそのものじゃないか(笑

語られざる物語の黙する姫君、といったところか。

物語自体も少し動いたようだし、もしかしたら次が出る頃にはさらにしずるさんという物語自体が動くことになるかもなぁ。

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メイズプリズンの迷宮回帰
ソウルドロップ虜囚録

上遠野浩平
イラスト:斎藤岬
NONノベル
(2007.4/19読了)

あなたがどこに行こうが、それを止める者はいない―監視もされていないし、罰を与える者もいない。どこに行こうが、あなたの自由―そうじゃないんですか?

『メイズプリズンの迷宮回帰』本文より

上遠野浩平の「ソウルドロップ」シリーズ第3弾。

脱獄囚と出あった家出少女の有香の話。

迷っていた。
まさに誰もが迷っていた。
人生という迷路そして牢獄に。

ペイパーカットの絡みも絶妙のタイミングだったし、最後のオチも最高によかった。
全部が全部、合理的に説明されるわけでもないんだけれども、最後へ至る物語の流れがあるからこそ、こんな終わり方でもいいんだよなと思える。

毎度毎度、上遠野浩平の本は読むたびに「このシリーズは久しぶりだなぁ」と思えてしまう。
しっかりとシリーズを覚えてるのなんてないし(汗

でもよく考えたら別に大丈夫な気がせんでもない。
どれもシリーズ途中だろうとも楽しめるのばっかな気がする。

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トポロシャドゥの喪失証明
ソウルドロップ彷徨録

上遠野浩平
イラスト:斎藤岬
NONノベル
(2008.3/19読了)

「知的な興奮とか、数学の純粋な美しさとかよく言うが――それってどういうものなんだろうな」
本当に不思議そうに、彼は言った。
「世界をパズルのようなものに見立てているのか。それでぴったりと填ると気分がいいのか。しかしそれにしては――」

『トポロシャドゥの喪失証明』本文より

ペイパーカットのシリーズ4作目。
位相幾何学なオブジェを作る芸術家のもとに届いたペイパーカットからの予告状。

いつものように「生命と同等の価値を持つもの(キャビネット)」をめぐる話なのだが、テーマは「位相幾何学(トポロジー)」。
証明をすることすら難しい数式や現実に対して果たしてどのようにイコールを求めていくのか。
そもそもそんなに難しく考える必要性すらあるのか。

難しそうに見えて、結構単純だったりすることなんて多々あるものだからこそ、幻想的な話も分解されて本質が見えると意外と現実的な話だったりする。
今回は実にそうゆうような話だよなぁ。

最初は「またブギーポップと関連のあるような単語とかいっぱいだしやがって。ここまでついてきたんだからどこまでもついてってやるよ」みたいな感じで読み始めたけど、最近はこのシリーズ単体だけでも十分楽しんで読めてるような気がする(笑

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ブギーポップ・イントレランス
オルフェの方舟

上遠野浩平
イラスト:緒方剛志
電撃文庫
(2006.4/26読了)

【Intolerance】
1 耐えられないこと.
2 雅量のないこと,狭量,不寛容

ギリシャ神話の「オルフェの方舟」を基にしたお話。

誰が「オルフェウス」で誰が「エウリデュケ」だったのか。
エウリデュケにとって存在した場所があの世であり地獄だった。
だから、そこから連れ出してくれる人を待ち望んだ。
こういうことだったのか orz

…相変わらず上遠野浩平は重厚感ある話を作ってくる。
ラストあたりで物語の構造に気づかせて、こういう話だったのかと納得させてしまうところがニクイですなぁ。

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ブギーポップ・クエスチョン
沈黙ピラミッド

上遠野浩平
イラスト:緒方剛志
電撃文庫
(2008.1/31読了)

人は……ほとんどの人は一生かかっても、上にも下にも行けない。ものすごい達成感とか、どうしようもない絶望とか、そういった上下の起伏のどちらでもないような、中途半端なところをふらふらして、一生を終えるのだ。

『沈黙ピラミッド』本文より

随分久しぶりのブギーポップシリーズ。

友情とは恋愛とは世界とは生とは死とは。

そんな漠然としながらも答えられない数々の疑問を通り過ぎながらも、時間は止まることなく進んでいく。
おいおいちょっと待てよ、とまれ時間とか言った所で止まっちゃくれない。
まぁそんな壁のような疑問も後から振り返ってみれば実は些細な真実だったりするんだけれど。

そんな疑問という「壁」にぶち当たった人や統和機構の人たちが主役のこの『ブギーポップ・クエスチョン』。

そりゃあかつありえない設定の小説でフィクションなんだけれども、今までのシリーズに比べて彼らが感じた疑問ってのは結構身近なものに思えた。

久々に読んだブギーポップは確かに面白い要素はたくさんあったんだけど、一体このシリーズをどこに連れて行く気だーーともちょっと思ってしまった(笑

章ページの扉の可愛さは新鮮。
二頭身かよっ(笑

(それにしてもなんとも説明しづらい話だよなぁ、ブギーポップシリーズは。まぁそれがブギーポップってやつなんだって

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ヴァルプルギスの後悔 Fire1.
"Repent Walpurgis" Fire 1. "Warning Witch"

上遠野浩平
イラスト:緒方剛志
電撃文庫
(2008.12/22読了)

奴は結局は悪党だった。そして俺も悪党だ。だがそんな悪人でも、自分の心を救ってくれるひとと出会えることもあるんだ。俺には救世主が必要で、そして―悪党こそ、それを絶対に裏切ってはいけないんだ。俺はそう思っている―

『ヴァルプルギスの後悔 Fire1.』本文より

上遠野浩平のブギーポップシリーズのスピンオフシリーズ第2弾。
いまさら、ついに。
炎の魔女の話が開幕。

ブギーポップは世界を救う。
それに対して炎の魔女の凪は人間のために戦おうとする。
その価値観は非常に近いようで平行線の関係でもある。
そして今回の凪を巻き込んだ事件は決してブギーポップが介入することはない。

だからこそ、ブギーポップのシリーズの中でも核をなす統和機構をまただいぶ違った視点から見れたりだとか、凪のルーツの奥深いところまで見せてくれそうな気配がこの1巻からですらひしひしと感じた。

こいつは実に面白そうなシリーズになりそう。

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キーリⅦ
幽谷の風は吠きながら

壁井ユカコ
イラスト:田上俊介
電撃文庫
(2006.3/29読了)

キーリとハーヴェイ、そして兵長はこれまで一緒に旅をしてきた。
「俺が本当に壊れて動かなくなったときは…」と普段と違い弱気な反応を見せた兵長。
その少しあと兵長のようすがおかしくなり…

キーリ第7巻

キーリという物語の核ともいえる「旅」。
そしてどこまでも続くかに思えた線路。
けれども旅の終着点では線路も途絶える。
そんな終りを予感させた7巻。

けれども旅が終わってしまうことを恐れるキーリ。
思えば1巻のときから物語の中で3年も過ぎてるんだよなぁ。
この旅の終りというのは未来に対してのキーリの恐れなのかも。
3年間で育んできたもの、それが一体終りのその後にどうなっていくのかがわからない不安感のようなものだろうか。
そんなものがひしひし、と。

8巻9巻でラストだそうで。
最終巻が出てから残りは一気に読もうかと。

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キーリⅧ
死者たちは荒野に永眠る(上)

壁井ユカコ
イラスト:田上俊介
電撃文庫
(2006.4/24読了)

明日も一年後も今日と同じように迎えられるとは限らない。
もしかしたら明日なんてないかもしれないし、一年後には世界自体がなくなっているかもしれない。
本もまたしかり。
物語は少しずつ終局へと向かって進んでいく。
キーリも残り1冊。
下巻を残すのみ。
キーリとハーヴェイ、兵長の3人が続けてきた旅の終着点が非常に近い。
そんな予感をひしひしとさせつつ、下巻へ続く。

明日には最終巻を読み終わりそう

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キーリⅨ
死者たちは荒野に永眠る(下)

壁井ユカコ
イラスト:田上俊介
電撃文庫
(2006.4/25読了)

『キーリ』は最初から最後までキーリとハーヴェイの物語だった。
登場人物のひとりひとりの物語がひとつずつまるで途中下車のように幕を下ろし、最後に物語という列車のの中にはキーリとハーヴェイのみ。
そして物語の終着点でもある「世界の果て」での最後のエピローグ。

ラストページのハーヴェイの言葉に不覚にもウルッ、ときてしまった。

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.hack//ANOTHER BIRTH もう一つの誕生
Vol.4 絶対包囲

川崎美羽
監修:伊藤和典
角川スニーカー文庫
(2006.4/30読了)

ブラックローズから見た「.hack」の最終巻。
ゲーム版と違い現実世界での出来事も絡ませつつゲームの内容をなぞることで新たな見方が出来たような気がする。
小説の外伝「AI-Buster」や「ZERO(2巻以降はどうなったんだろう...)」アニメ版「SIGN」「Liminality」「腕伝」と.hackを語りつくしたあとだからこそできた小説版だなぁ。

まさかANOTHER BIRTHで出てきた「川崎美羽」が.hackの新アニメ「ROOTS」にも関わってくるとは連載開始された頃には思いもしなかったなぁ。

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