感想のページ 作者「さ」

召喚教師リアルバウトハイスクール 13

雑賀礼史
富士見ファンタジア文庫
(2006.3/23読了)

涼子に発現した能力「月の眼」。
その能力によって異形のモノたちと人間とを区別できるようになる。
その能力を巡ったバトル「サムライガール天魔降臨編」完結。

やっぱり薄かったか orz
リアルバウトを読んでいる人にとって200pを超えることは奇跡を待つようなものなのだろうか。
でも10巻11巻は平気で超えてたしなぁ。
それと定価が同じだというのは納得がいかなかったりw

この前リアルバウトの1巻の奥付を見てみたら97年1月。
来年で10周年か…
えらく長く続いてるなぁ。

今回の13巻で随分久しぶりに登場した人物が。
まさかカオルーンの花嫁が出てくるとわ。
しかも慶一郎の過去を調べてるときたもんだ。
ここまで長く続いてきたシリーズもので慶一郎と因縁深いキャラの再登場に加えて過去までが語られるということは……。

とりあえず次巻では主人公の慶一郎が実に1年ぶりくらいに活躍してくれそうなのでヨカッタヨカッタ。

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召喚教師リアルバウトハイスクール 14

雑賀礼史
富士見ファンタジア文庫
(2006.10/20読了)

彼は…南雲慶一郎は今、どこにいるの?

『召喚教師リアルバウトハイスクール 14』本文より

クライマックス近し!?

あとがきで「もうかれこれ十年前ですよ」と書かれたときにはどうしようかと。
ついてきてる人もそれはそれでよくついて来てるよなぁ。
最初の方とかの人もアニメから入った人とかもういい年齢だもんな…。
もうついてきている人はラストを見届けるためだけに読んでいると言っても過言ではないだろう。

静馬、慶一郎の帰還。
東方流玄の出現。
京極家頭首の登場。

核に迫る人物たちが物語りに戻ってきてラストには驚愕の展開がっ。
いや、まさかこんな出方をするとは…

とにかくラストが近づいてきているのは間違いない模様。
あとはいい終わり方をしてくれるのを祈るのみ。

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召喚教師リアルバウトハイスクール 15

雑賀礼史
富士見ファンタジア文庫
(2007.6/24読了)

この惑星の電子ネットワークを掌握しました。収集したデータを解析中……

『召喚教師リアルバウトハイスクール 15』本文より

リアルバウトハイスクール15巻。
15冊っすよ…
1巻からはや10年くらい。

前巻前々巻で話が進んだため、今回はゆっくりめ。
ってか2行くらいでまとめられないだろうか

つまり
・レイハが現実世界にやってきた。
・慶一郎のケガが全快し、戦線復帰した。

こういうことが15巻だった。
……まぁそれもレイハの破天荒っぷりがこの展開になったわけだけれども。
あれ?こんなに破天荒だっけか(笑

しかし、ラストで思いっきり伏線を張っていたので16巻からはまた一気に面白くなることに期待。

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召喚教師リアルバウトハイスクール 16

雑賀礼史
イラスト:いのうえ空
富士見ファンタジア文庫
(2008.2/21読了)

「他人事として想像してみたまえ。飛鈴君のような美人が献身的に尽くしているというのに、それをさも当然のように享受しながら何ら見返りを与えようとしない傲岸不遜な男がいたとして――どう思うかね?」

『召喚教師リアルバウトハイスクール 16』本文より

『召喚教師リアルバウトハイスクール』いつのまにやら12周年の16巻目。
そろそろ最終局面。
1巻からずっとそのままにされていた伏線もついに回収に入った。

ついに慶一郎が動き出した。
まさにそんな巻だった。
ってか本編おもしろいじゃないか!?
レイハや飛鈴が本編入りしてまだ数巻ごたごたしながら進むんだろうな、と思っていたら急にラストスパート。
前巻までのラストが近いハズなのにさっぱり進まないように思えた内容はまったくなんだったのかとすら思える(苦笑

途中でこのリアルバウトの設定が1996年ということに気づいてびびった。
そんな前だったの!?
確かにいろんな携帯やらそういった先端機器はまったく出てこないよな。
レイハの検索システムについても超最先端みたいな描かれ方なんだよな…
確かに90年代半ばだ、これは。

あと数巻なんとしても最後まで見届けます(笑

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召喚教師リアルバウトハイスクール 17

雑賀礼史
イラスト:いのうえ空
富士見ファンタジア文庫
(2009.2/22読了)

あたふたと出て行った二人の気配が遠ざかると、慶一郎は抑えていた力を解放し、全身から鋭利な殺気を放射した。それを心地好い微風のように肌で感じながら、ゲイツは歯を剥いて笑った。
「―――いざ!」

『召喚教師リアルバウトハイスクール 17』本文より

ついにラストバトル開始!
もう…
この瞬間をどれほど待ったことだろうか。
慶一郎とゲイツの戦い。
こうなることは10年も前から分かっていたのに、まさかこれほど待たされるとは(笑

しかし待った甲斐はあったってなもんです。

リアルバウトらしく、Kファイトの壮大なバージョンともいえるKウォーズを舞台にした最終決戦。
現実とソルバニアが見事にストーリーに融合し、アーリー・デイズやEXのシリーズからも次々に登場人物が参戦。

まさに最後のお祭り騒ぎ。

まさかこんだけラストに盛り上げてこようとは。
GJです。
そしてラストである18巻に期待してます!

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リアルバウトハイスクールEX 5
ですぱれーと☆サマー

雑賀礼史
富士見ファンタジア文庫
ファンタジアバトルロイヤル連載
(2007.8/20読了)

そうか……なるほどな。これで謎が解けた! 鵜飼の女嫌いの原因は殿村、お前だ!!殿村から受けたトラウマで、女に対する恐怖心が植え付けられたんだ

『ですぱれーと☆サマー』本文より

エロテロリスト現る!

リアルバウトハイスクールEXという短編シリーズの6年ぶりくらいの新刊。

おいおい。
このEXシリーズまだやってんのかよ…
いい加減本編がぐだぐだしてんのにEDシリーズに続きまた短編!?
しかも表紙に知ってる人物いないし。
一気にまた新キャラ祭りかよ。
いい加減にしろよ作者……買うけどさ。

そんなふうに新刊を見たときに思った。

読了後。

いや途中の展開からすでに個人的に神展開!
普段、どんな本を読んでてもくすくす笑ったり没頭することはあってもこんなことはなかった。
大 爆 笑 !
(一応、声には出してないが心の声では大爆笑

すんごいおもしろい!

そう。
まるで6~7年前くらいのリアルバウトの世界に戻ったような。
傍から見ていたら南雲や静馬ってこう見えてたんだよ!
普通の高校にイレギュラーな存在たち。
その破天荒ぶりを横目に見ながらどんどん巻き込まれていく新キャラ7人組。

7人も新キャラ!?
確かに思ったが、読み終わる頃にはもうすでに全員キャラが立ちまくっているという状態。

それくらいエピソードも充実してた。
短編の威力ってすごいもんだ。
高校生たちのバカバカしさ×尋常じゃない個性の教師や生徒たちとのコラボレートの結果がこのEX5巻だった。

こいつら7人の侍ならぬ7人の新キャラたち最高!

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リアルバウトハイスクール<アーリー・デイズ>3
雛は舞い降りた!

雑賀礼史
富士見ファンタジア文庫
ドラゴンマガジン連載
(2008.8/26読了)

そして物語は……
召喚教師リアルバウトハイスクールに続く!

『雛は舞い降りた!』本文より

『リアルバウトハイスクールED』最終巻。
ED1巻が出てから5年。
ついに完結!

最後の言葉に震えた。
うおおぉぉ。
すっげぇぇぇ!
本編に繋がるのがこんなに気持ちのいいものとは思わなかった。

いや、確かにわかっていた。
このEDのラストは最初から決まっていたようなもんだし、本編1巻の時点で分かっていた。
その後のコミック版でも描かれ、そしてついに小説でも「正史」としてあのシーンが描かれた。

静馬vs涼子。

いやいや…
実に迫力のある一戦でした。
そうとしか言えない(笑

EDが終わったいま、残るは本編の最終決戦のみ。
完結待ってます。

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裏山の宇宙船

笹本祐一
イラスト:放電映像
ソノラマノベルス
(2008.6/18読了)

「で、どうするの、これ?」
発掘作業要員、一人追加、と胸のうちだけで呟いて、文はにっこりと笑った。
「決まってるでしょ、掘り出すのよ」

『裏山の宇宙船』本文より

笹本祐一の復刊シリーズ『裏山の宇宙船』。

民俗伝承研究会に所属する4人の高校生。
そのうちひとりが裏山で空から降ってきた物体を見つけてしまい…

なんという典型SF。
そんでもってボーイ・ミーツ・ガール…じゃないな。
まさに未知との遭遇。

UFO見つけちゃったよ…。
しかも中には…、というストーリーなんだけど、なにがいいって会話がすごくいい。

田舎の高校生たちが主人公なんだけど、会話のけだるさと高校生らしい独特な感じがものすごく出てる。
そしてさぁいざ掘り出すぞということになってからの、ひたすら掘り出すだけの内容がその会話によってなんだか楽しさが増してくる。

民俗学的なものと科学オタの会話や天然、それに男女の友情っぷりがひたすら描かれるのだからこそばゆいことこの上ない(笑
こんな高校生活を送ってみたかった。

後半の怒涛の展開も終わってみれば爽やかな読後感を与えてくれる。
あと、色んな名作SF映画の影響を受けたんじゃないかなーと思えるシーンも色々あったりするので、分かればニヤニヤできること間違いなし(笑

 

SF好きにはたまらない作品でした。

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星のダンスを見においで

笹本祐一
イラスト:藤城陽
ソノラマノベルス
(2008.11/15読了)

「俺たちは、宇宙海賊だ。この宇宙すべてが、俺たちの星さ」

『星のダンスを見においで』本文より

笹本祐一の『星のダンスを見においで』合本版。

うおおおー。
めっさ燃える。
これぞSF、スペオペだ!

女子高生の唯佳はふとしたきっかけで知り合いのジャンク屋とともに宇宙へ行くことに。
ジャンク屋かと思っていたオジサンは実は元宇宙海賊で…
彼女らはともに夏休みの間、銀河の果てにあるという「大海賊の秘宝」を探す旅に出る。

宝探しはもちろんのこと、
ドンパチもあり、宇宙海賊達の友情や仁義もあり。
ドレッドノート級の戦艦とのチェイスもある。

もういろんなSF的ギミックを詰め込んだ小説。
SF好きには楽しくて仕方ない(笑

しかも普通の女子高生が宇宙海賊たちの仲間入りするってなもんだから、余計にそういうハードなSF設定とのギャップがたまらないです。

ハードSF×女子高生のタッグっていいもんだよなぁ。
この組み合わせでここまで楽しめたのってヤマモト・ヨーコ以来かも(笑

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ユーフォリ・テクニカ 王立技術院物語

定金伸治
イラスト:椎名優
Cノベルス
(2008.11/18読了)

「あ、すみません!わたしエルフィールって言います。エルエルと呼んでください!」
「……エルでいいじゃないか」
「はい!ただ、そちらの方がプリティかつラブリーでお気に召していただけるかと存じまして!」

『ユーフォリ・テクニカ 王立技術院物語』本文より

定金伸治の『ユーフォリ・テクニカ』。
『とるこ日記』の頃からこの人はただもんじゃないと思っていたが、まさかここまでとは。

ドツボにはまった。
がんばる女の子っていいよな (*´Д`)

時代は近代っぽくてヨーロッパっぽい場所。
なんとなく錬金術から科学へと移行していった時代。

そこで技術員として働く世界の最先端の技術に魅せられた女の子。
研究熱心で面白いと思ったことはとことんまで追求する。

けど、破天荒で暴走気味。
しかも王女さまときたもんだ。

主人公も主人公でいいやつ。
東洋人ではじめて研究者として地位を得た人物。
でもまだまだ研究者という立場では若造。

だから周りから偏見の目で見られる。
でも実にマイペースな奴でもある。

そんなふたりの破天荒とマイペースがうまいこと奏でる二重奏のごとく楽しく響きあうかのような感じ(笑
これがすっごくいい!

舞台が死ぬほど忙しくて、何徹もしてなんだかテンションがおかしくなるほどの研究室でのあれやこれや。
コメディがメインだけど、研究だけに挫折も成功もある。
もちろんやりとげた達成感なんて読んでるこっちも嬉しくなるような描写だった。

そんなこの小説がかもし出す空気がすんごくよかったです。

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とるこ日記

定金伸治・乙一・松原真琴
集英社
(2006.5/13読了)

ダメ人間(褒め言葉)が揃いも揃って海外旅行をしたらどうなるかを描いた旅行記。

トルコへ行って感動した!
すばらしい!
ブラヴォー!!

ということはほとんど書かれてなく、

ぼられた。
パンツを干した、乾かした、吊った。
熱い。
しんどい。
ゲームボーイ。
タモリ。

そんな言葉がいっぱいです。

このヘタレ具合に共感したらアナタもきっと引きこもり(笑
このくだらない(褒め言葉)本が楽しめたことに、なんだかなぁ
楽しめていいのだろうか、と思ってしまう。
明日から悔い改めて生きようかと思う。

巻末に乙一の短編小説「毒殺天使」が載ってます。
撲殺天使じゃあありませぬ(笑

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飾られた記号
The Last Object

佐竹彬
イラスト:千野えなが
電撃文庫
(2008.12/9読了)

それでは、未知の領域と要素を持たない空集合について語ろうと思う。
誕生は記憶から、
再生は忘却から始まるものだ。

『飾られた記号』本文より

φシリーズ1作目。

時は近未来(っぽい時代
図書館にて死体が発見される。
しかし第1発見者と実際発見された場所が食い違っていた。
嫌疑をかけられた第1発見者である朝倉渚は自ら犯人を探そうとする。

タイトルに引かれて購入。
なんともミステリっぽいじゃあないですか。
電撃でミステリとはこれいかに。
確かに電撃文庫出身の三雲岳人はレオナルド・ダ・ヴィンチが活躍する本格ミステリを書いていたりもするし、電撃もついに本腰を入れたのか!?

読み進めていくとどうやら近未来ミステリらしい。

主人公も随分と自分と言う存在に対して客観性を持って眺めているような感じ。
ゆえに主人公と他人の距離というのが、随分と遠く感じあっせてくれるよなぁ。

よく言えば自分を確立している、悪くいえば他人と接するときに一歩引いているような印象を受ける。

物語も淡々と進み、時に「intermission」と称して別の他人の視線を織り交ぜながらテンポよく進んでいく。

けれども「本格ミステリ」という強固に固定されたジャンルに入るかというと、それはまずない。
かなり広義な意味でのミステリとして捉えないといけないかもしれない。
SF的要素にしても、SFを普段から読む人から見ると世界観に対してけっこうあいまいな印象をどうしても受けてしまう。

けれども、今後おもしろくなりそうな予感はする。

だから悪くない。
決して話が悪いわけではない。
むしろSF要素や理数系みたいな雰囲気を楽しむという意味では、本格的なものとは違ってすごく入りやすい雰囲気を持つ本だと思う。

あとがきにて森博嗣の影響を受けたと作者は書いているが、確かにその影響は随所に見受けられます(笑
だからといって森博嗣→佐竹彬という流れで読むのではなく、むしろSF入門・理数系小説の入門として佐竹彬を読んで雰囲気を楽しんでから、本格的なミステリ・およびSFに入っていった方が面白いのかもしれない。

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開かれた密室
BEING AS UNFIXED

佐竹彬
イラスト:千野えなが
電撃文庫
(2008.12/24読了)

マーリアが頭上の『現場』を仰いだ。
「open closed room......」
(開かれた密室、か)
わたしは呟いた。

『開かれた密室』本文より

φシリーズ3作目『開かれた密室』。

2作目すっとばして3作目を読んだ。
いや、もうだってさ。
タイトルに(*´Д`)ハァハァ

ミステリ好きとしちゃあたまらんです。
密室ですよ!
しかも開かれた密室。
こんなタイトルで飛びつかないわけがないです(笑

というわけで、実はこの3作目を一番最初に買ってたりします。
バリバリのミステリを期待したら、1作目でちょっと外した感があったので、今度は大丈夫。

ミステリとしてよりも、各登場人物。
特に日阪の過去が気になるところ。
実は開かれた密室とは彼のことではなかろうかと思ったりする。
物語の核をなす謎であるだろうし。
彼がこれまで頑なに自分を閉じていたわけだし。
それが徐々に渚たちの影響で開き始め、物語の深遠が見えてきた気がする。

そんなわけでシリーズものとしての話の方が楽しめました。
ミステリ的な部分では…ちょっと、ね。

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フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人

佐藤友哉
講談社文庫
(2007.3/27読了)

どうしてこれほどまでに『意味』に固執するのだろう。
そのこだわりには、価値があるのだろうか?
いや、
惑わされない。
僕は惑わされないぞ。
惑わされるものかッ。

『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』本文より

佐藤友哉の処女作「フリッカー式」文庫版。
鏡家サーガ1作目。
ついに文庫。
表紙はいつもどおりの笹井一個。

処女作とはいいつつ、手を加えすぎ(笑
話自体は当然変わってないけど。
あぁ、だからこれほどまでに文庫化が延びたのか。

なので旧版および新装版まで買っちゃった人も読んでみたら印象変わるかも。

 

妹がレイプされ自殺した。
そしてその現場を録画したテープを持ってきた謎の人物。
さらにその人物はレイプ犯の娘たちの行動パターンが記された紙を鏡公彦に渡す。
そして彼は娘たちの拉致を開始する。
一方、巷では突き刺しジャックという77人を殺した凶悪犯の犯行が重ねられていっていた。

 

このネガティブで理解できない構成が大好きだ。
序盤から「おにいちゃーん」という内容。
そして自殺。
さらに拉致。
そこからどんなものに発展するのかと思ったら予想外も予想外。
突き刺しジャックとその犯人の犯行時にだけ犯行現場を「見て」しまう超能力が加わったり。
そもそもレイプ犯たちの言っている「儀式」とはなんなのか。

実にカオス。
そして逸脱しすぎ。
ジャンルの特定なんかできるわけがない。
もうまったくなんなんだろな、この小説は。

ミステリ作家の法月綸太郎が絶賛し、大塚英志の流れを汲むような内容。
そこから考えてもわけがわからない(笑

読んだのは3回目だけど、やっぱりわからないがおもしろい。
『意味』を放棄した。
そんな「あの80年代生まれ」が体験してきた様々なサブカルチャーを取り込んで、一つのそれらの作品に対する答えを示したもののような気もする。
「エヴァ」しかり「MADARA」や「サイコ」とかさ(笑
あれらも「意味」を探させた物語であるだろしなぁ。

2作目以降も文庫化されますよーに。

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エナメルを塗った魂の比重 鏡陵子ときせかえ密室

佐藤友哉
表紙イラスト:笹井一個
講談社ノベルス
(2009.2/4再読)

香取羽美からナコルルへの移行。
一言で云えば、それは逃げです。逃避です。
私は逃げている。その自覚はもちろんあります。
でも別、別に良いじゃありませんか。逃避を悪と規定する、その一方的な勘定こそが悪ではないのか?

『エナメルを塗った魂の比重 鏡陵子ときせかえ密室』本文より

久々にノベルスの新装版を再読。

佐藤友哉の鏡家サーガ2作目『エナメルを塗った魂の比重』。
2作目は鏡陵子が主役、というわけではないけど彼女が大きな役目を果たすのは確か。

人肉しか食べられなくなった少女や、コスプレによって自己を別人に投影することに自分を費やす少女たちが登場する近作。
また、自分より下位における人をいじめるという構図によって安心するクラスというものも登場。

そのすべてが自分という存在に対する不安や不満を表しているかのよう。
そう、いわばまるで「これが青春」とでも云わんばかりに。

鏡家2作目ではこういった不安定さの描写がたまらないです。
つきつめれば自分ってなによ、ってな事を主張しているかのような。

そういった若さゆえの不安定さっていう主題とともに、もうひとつの物語の主軸となるのが「予言」。
またかよ。
1作目もそうだったじゃないか、というのもありますが、それはそれ。
またまた予想外の方向へと行きやがります。

閉ざされた一部の世界における未来を予知する「予言」なんていう大層な代物。
この予言のもとに登場人物たちの奇怪な行動が終結し、いい意味で馬鹿げた終結を迎えていく。

やっぱ鏡家はこうでなきゃ。
1作目でも主人公がいっていた「狂える鏡家」というものをまさに表しているかのよう(笑
そういうところもサリンジャーの「狂えるグラース家」を描いたグラースサーガをしっかり意識してるよなぁ。

あらゆる不安定さがこの小説独特の雰囲気を醸し出していく。
青春小説とはまさにこういうものって言っていいとすら思う。
青春なんて美しくなんてない、っていう意味で。

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青酸クリームソーダ <鏡家サーガ>入門編

佐藤友哉
表紙イラスト:笹井一個
講談社ノベルス
(2009.2/11読了)

「話戻すけど、事件に入りこめないってのは、僕も気持ちが解る。ありきたりな猟奇殺人にしか見えないから推理するって感じでもないし。そもそも、頭のおかしい猟奇殺人犯に推理なんてナンセンスだからね。失って気づいたけど、密室とか館とか探偵とか、そういうのは大切なものだったんだよ」

『青酸クリームソーダ』本文より

鏡家サーガ5作目『青酸クリームソーダ』。
そうか…
4作目からもう4年の月日が経ったのか。

その間いろいろありました。
ユヤたんは遠くに行ってしまったという感じがあったけれども、今作を読む限りそんなことはない!
みんなのユヤたんが帰ってきた!
まさにそんな感じ。

そうそう。
これこそが鏡家サーガだ!

佐奈のかわいさはもちろんのこと、鏡家のどこかおかしな言動。
そこはかと散りばめられた小説やマンガにアニメに文学からの引用。

そしてなによりラストに向かって崩壊していく物語。

今回も竹やりで人を殺す少女が主人公の公彦のもとで「私がなぜこんなことをしたのか真相をつきとめろ」とせがむ話。
まったく、最初の章からなんのこっちゃって展開である。
竹やりて。
血だらけの少女って。

犯人わかってる。
殺害方法もわかってる。
解らないのは動機だけど、本人に問いただすことはNG。
でも探偵しろ。

わけがわからない。
でもそれでも物語が成り立つのが鏡家サーガってなもんです。

久々の鏡家の新作。
存分に楽しませてもらいました。

じゃあ次は鏡家「ナイン・ストーリーズ」を…

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クリスマス・テロル
invisible×inventor

佐藤友哉
講談社ノベルス
(2006.8/20再読)

講談社ノベルス20周年企画「密室本」のうちの1作。

吾妻ひでおの「うつうつひでお日記」を読んでたら急に佐藤友哉が読みたくなったので再読。

いいなぁ。
やっぱりいいなぁ。
作家佐藤友哉の鬱屈具合が此処に!という内容ですよ。
初心者にはお薦めできないよなぁ(笑
ファウストなどのエッセイでニヤリとした方は是非。

読み返してみて、副題の「invisible×inventor」ってうまいことつけたタイトルだと思った。
確かにこの本と存在自体を語るにふさわしいものだと思う。

この本が起こしたテロにしてもきっと届いた人なんてとてつもなく一部の人だけなのかもしれない。
そんな境地を乗り切って「鏡姉妹の飛ぶ教室」や「子供たち怒る怒る怒る」を出した佐藤友哉は実はすごい作家なのではないかと思う。
そして(ネタバレにつき反転)「作家佐藤友哉のどん底具合をフィクションという創作」で描かれたという「クリスマス・テロル」が大好きです(笑

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子供たち怒る怒る怒る
Children Shit! Shit! Shit!

佐藤友哉
新潮社
(2005.6/2読了)

第21回メフィスト賞受賞者の佐藤友哉初の短編集。

収録作品
・大洪水の小さな家
・死体と、
・慾望
・子供たち怒る怒る怒る
・生まれてきてくれてありがとう!
・リカちゃん人形

全編に共通して出てくる子供たち(死体と、の子供は死体でしたが)。
彼らは大人から見ればまだまだ子供に過ぎない。
けれども大人顔負けの自分なりの考え方ってものを主人公の子たちはみんな持っていた。
大人は理解できないもの排除したがるものだけど、果たして本当に子供の考えを理解しようとしてあげてるのだろうか。

社会を常識的に生きてる大人から見れば「非常識極まりない」ような言い分でも、しっかりと筋道立てた純粋な論理である。
そういうことって多いように思える。
自分が子供だった時、考えて考えて出した答えや考えなのになんで大人は分かってくれないんだ、と思ったことが何度もあった。

子供の意見でも大人の意見でも自分の理解が及ばないことであっても、
ちゃんと聞く、理解しようとするという人として最低限の姿勢はとっていきたいものです。

それにしても佐藤友哉の文章表現はなんともキモチ悪い(褒め言葉
描写が残酷だけれど妙にドライな感じがする。
少々嫌悪感はあっても、それでも一気に読めてしまう。
こういう読ませる文章というのも一種の才能なんだろうなぁ。

新潮に掲載されているような佐藤裕也の文学作品も好きなんだけれども、
鏡家サーガのようなエンターテイメント作品も忘れないで書いてほしいです(切に

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アインシュタイン・ゲーム

佐飛通俊
講談社ノベルス
(2008.4/19読了)

生粋の日本人なのに名をザナドゥ鈴木といって――本名は鈴木ザナドゥなのだが、格好がいいからという理由で対外的には姓名をひっくりかえして名乗っている

『アインシュタイン・ゲーム』本文より

作家で評論家、歴史人類学者だったり探偵だったりするザナドゥ鈴木が活躍するミステリ。

アインシュタインが来日した時に残した不可解なメッセージを軸に、奇妙奇天烈な人物たちがあれこれ自己を主張しながら議論していく。

哲学はニーチェなど、文学もルバイヤートにファウストに、ボードレールなんかからいろいろ登場人物たちが会話の中で引用したり、果てはトイレの歴史についても知れるという謎な本。
もちろん物理も結構語られます。

知識のごった煮のような本だった(笑
ミステリの部分がもはやおいてけぼり…というわけでもないんだけど読んでて本題を忘れそうになることもしばしば。

確かに会話はおもしろい。
でもそれを話してる人物たちがもう変人ばっかりで(笑
そもそも名前からしてザナドゥ鈴木はねーよ、というのはまだマシで。
主要な人物だけでも円桜池白冷(えんおういけ はくれい)とか破邪滅羅(はじゃめっら)や片庭明明(かたばみょう あきら)とか(笑
それでいて変人揃いなんだからもうね…。

この本はいろんな意味で濃かった(笑
あと軽く読み流しながらという感じで読むと楽しめるよーな気がする。

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宴の果て 死は独裁者に

佐飛通俊
講談社ノベルス
(2008.11/5読了)

コーヒーカップは九人それぞれが好きに取ったんだから、事前にどのカップが最後に残って総書記の机に届くかは予測不可能だった。

『宴の果て 死は独裁者に』本文より

佐飛通俊の『宴の果て 死は独裁者に』。
前作『アインシュタイン・ゲーム』で懲りずに3作目も読んでみた。

苦笑しっぱなしである。
架空のなんだか北っぽい国で国の実験を握っていた総書記が殺害される。
そして総書記の影武者を拉致してきて、まるで生きているかのように振舞わせる。

うわ、もう大丈夫かこの本(笑
まぁフィクションだし、架空の国だし、まぁいいか。

まるでミステリのような幕開けだが、北の実情っぽいものが延々と描かれ。
また、なぜあの国が成り立っているか、また民族的な問題などを孕みながら展開する話は歴史を孕んだエンタテイメントでもあると思えなくもない。

ミステリっちゃあミステリな部分は確かにある。
時期的にも非常に面白い題材のエンタテイメント小説でもあるかもしれない。

でもそれが楽しいかというと…うーん。

悩むところではあると思う。

読み終わってから思ったことがあった。
さらに参考文献を見て確信した。

是非もうあと一歩踏み込んだ資料をもとにこのネタで小説を書いてもらいたかった。
惜しい小説です。

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円環の孤独

佐飛通俊
講談社ノベルス
(2007.5/8読了)

金を愛し、金のために生きている人間は、金のためにやむなく生命を落とすことはあっても、金のために自ら生命を落とすことはありません。彼等は金というものを通して、ただひたすら、この現実を愛しているんですから。

『円環の孤独』本文より

佐飛通俊の『円環の孤独』。

講談社ノベルスで出てて、興味だけはあったからと購入。

近未来。
宇宙ステーションのホテルで客が殺される。
密室の中、その部屋はDNAを鍵としているために誰も入れない。
その中で殺されていたのは探偵だった。

 

近未来で、宇宙で、密室で。
そして時間旅行さえも金を出せばいける時代かよっ。

でも、至極まっとうなミステリだった。

登場人物がなんか読んでいて、まるで海外のミステリを読んでいるかのような。
ある意味で懐かしいような、そんな印象。
キャラが強烈の個性付けされているのをよく読む昨今ではなんか珍しいタイプの本だった。

ミステリとしてちょっとガチガチなんだけど、少しロマンティックで詩的なところがあったのが微笑ましかった(笑

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