感想のページ 作者「し」
チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷
塩野七生新潮文庫
(2009.3/28読了)
一国も持たず、一兵も無しに出発した彼の野望、王国創立と言う野望は、この二十七歳の若者の眼前に、いまや明確な形をとって広がっていた。自軍の旗印に書かせた彼のモットー"Caesar aut nihil"(皇帝か無か!)にこめられた彼の気概とともに。
『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』本文より
惣領冬実の『チェーザレ』に興味を持ったので塩野七生の『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』を読む。
これまでのチェーザレという人物に対して持っていたイメージがかなり覆った。
毒殺という方法を用い政治的な権力を拡大していったという人物であると思っていたのだが、そうじゃないじゃないか。
彼がイタリア統一を成し遂げるまでの権力の拡大に民衆の支持を得るための方法etc
あぁもう…そりゃ偉人とも言われるわ…
また彼と邂逅したマキャベェッリやレオナルド・ダ・ヴィンチといった人物との関わり合いも興味深く描かれていた。
伝記であり小説であり戦記ものでもある。
ものすごく変わった描き方でありながら臨場感や登場人物に対するイメージが簡単にできてしまう。
これは面白い。
ちょっと他の著作も読んでみようかと思えた。
イタリア史も好きですしね。
その前にこの本を読んだからにはマキャベェッリの『君主論』はやはり読まなければいけないだろうな。
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マキアヴェッリ語録
塩野七生新潮文庫
(2009.4/22読了)
歴史は、われわれの行為の導き手である。
『マキアヴェッリ語録』収録『ヴァルディキアーナ地方の住民の統治方法について』より
だが、とくに指導者にとっては師匠である。
塩野七生によるマキアヴェッリの言葉を引用した本。
惣領冬実の『チェーザレ』を読み、塩野七生による『チェーザレ・ボルジア』、そして今度はこの『マキアヴェッリ』。
確かにチェーザレを知る上ではいつかはマキアヴェッリの君主論なり政略論を読んだ方がいいとは思っていたが正直読むのはしんどい。
そういったこともあり、塩野七生のような歴史家が編纂した語録というものがあるということから読んでみた。
語録とはいえ、十分に歴史家でもあるマキアヴェッリの考え方というのはよく理解できる。
ニコロ・マキアヴェッリが君主論などの本を書いたのが500年前。
そして塩野七生が編纂したこの本はもう20年も前のものになる。
しかしその本質は今でも新しく、そして現在の日本にも通じるところがあるように思える。
それどころか多くは今なお通じるのではないだろうか。
そう思えてしまうということは、歴史と言うものは常に繰り返されているということなのだろう。
いくつかの言葉は強く印象に残り、いくつかは反論を試みたいと思わされた。
いまなお人の心を大きく動かしてくれる本だと言っても過言じゃない。
政治や歴史というものに興味があるのなら是非一度は目に通しておいて損はないかと思います。
ってか今の政治家にこれを読んでみて欲しいもんです(笑
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犯人に告ぐ 上
雫井脩介双葉文庫
(2007.11/22読了)
刑事を続けていると、自分が追っているはずの犯人に、ふと、そこはかとない恐怖心を抱くことがある。
雫井脩介『犯人に告ぐ 上』本文より
たいていの場合、それは相手の姿が見えないからだ。
「04ミステリーベスト10」や「04最高に面白い本」で1位を獲得した『犯人に告ぐ』。
過去に誘拐事件で大失態をし、神奈川県警の権威を失墜させた刑事。
だが、その刑事はそれから着実に成果を上げ、再び表舞台に立ち、残忍で挑戦的で頭の切れる犯人と対峙することになる。
マスコミを使い、自らの存在を世に示す犯人と、同じくマスコミを使い犯人を追い詰める主役として劇場型捜査をはじめた警察。
その戦いのはじまりまでが前半。
プロローグが長い長い。
けれども、そのプロローグにさえ戦慄してしまった。
主人公の刑事がものすごくカッコイイ。
背負っているものがあまりに重い。
それでも自分の信念を貫く人なのである。
もはやハードボイルド。
見えない犯人を相手にする警察の描写も鬼気迫るものがあった。
過去の誘拐事件で誰もが全力を尽くし捜査したにも関わらず、マスコミによって徹底的なまでにに権威を失墜させられた警察と一人の刑事。
その刑事の熱意に反比例するかのように報われない現実。
しかしそこから予想もつかないような努力をしたであろう末に這い上がり、再び現場の第一線へ戻った時には感極まったような感じがした。
ただでさえ刑事の背景を丁寧に描いているだけに。
下巻は近いうちに。
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犯人に告ぐ 下
雫井脩介双葉文庫
(2007.11/27読了)
「でもこの世界、嘘をついたり人を出し抜いたりしなきゃいけないことも多い。あなたは無理してそれをやってる」
雫井脩介『犯人に告ぐ 下』本文より
巻島は肩をすくめる。
「嘘が苦手なだけじゃないさ……」吐息を挿んでから呟く。「本心をさらけ出すのも苦手だ」
雫井脩介の『犯人に告ぐ』下巻。
主人公の巻島がハードボイルドすぎである。
もはやカッコいいの一言に尽きる。
昔マスコミによって地位を失い、それでも這い上がり今度はマスコミを利用し見えざる犯人とニュース番組を通じて対決する。
敵は見えない犯人だけじゃなく、警察の内部も、マスコミや民意ですら敵になりうる。
そしてそれらは決して目に見える形で現れるわけではない。
そんな「敵」と戦う姿には惚れ惚れできた。
ラストも「こういうラストが見たかった!」という展開だったので満足。
映画版はどうやら豊川悦司が主役とのこと。
ということは主人公の設定をある程度変えてるんだろな。
それでも巻島の背負うものは変わらないだろうけど。
【映画 犯人に告ぐ】
http://www.hannin.jp/
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火の粉
雫井脩介幻冬舎文庫
(2008.1/7読了)
「世の中って、何でこんなに報われないんでしょうね」
雫井脩介『火の粉』本文より
そう口にすると、余計に涙がこぼれてしまった。
雫井脩介の『火の粉』。
『犯人に告ぐ』を呼んだときは男性心理とかしっかり書けてる本だよなー、と思ってこれを読んだら女性の深層意識まで描いててびっくりした。
こういうのも書ける人なのか。
なるほど。
『クローズド・ノート』を書いた作者っていうのに納得した。
『火の粉』は老人介護と冤罪事件、そして隣人関係をメインに、普通の主婦や元裁判官たちを襲う非現実さを描いた本だと思った。
誰がおかしいのか。
それとも自分がおかしくなってしまっているのか。
緊張感がだんだんと高まり、極限に達したときに見られた登場人物の描かれ方が実にすごかった。
何気ないけれども、結構身近なテーマが多かったので感情移入しながら読めた気がする。
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失楽の街
建築探偵桜井京介の事件簿
篠田真由美講談社ノベルス
(2006.5/28読了)
建築探偵桜井京介の事件簿10巻。
第二部閉幕編。
いつもなら一つの場所で事件が起こってそれを解決する。
けれども今回は東京という街そのもので起きる爆破事件と同潤会アパートで起きた過去の事件が同時に進行する。
しかも半ばまで京介はおろか蒼も深春も出てこないし。
それでも建築探偵の中でも屈指の出来なような気がする。
神代先生サイドと犯人サイドの視点が交互に移り変わるけれども、ここまである種の違和感を醸し出す犯人サイドがえらく怖いです。
常軌を逸しているというかなんというか。
桜井京介の「他者」に対する考え。
あまりに突き放した考え方というのはやはり第三部でなにか過去と関連してくるんだろうなぁ。
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胡蝶の鏡
建築探偵桜井京介の事件簿
篠田真由美講談社ノベルス
(2006.4/21読了)
1912年にヴェトナムのハノイで起きた事件。
それから90年。
古都京都にて事件の真相は明らかになる。
建築探偵桜井京介の事件簿第3部開幕編。
伊藤忠太とヴェトナムの話を第3部の開幕編に持ってきたか。
冒頭でいきなり京介の過去と現在に触れるような独白からはじまり、舞台がヴェトナムにうつり事件へと関わっていく。
ヴェネチアの巻のときも思ったけど篠田真由美ってその土地の空気や人との関わりってのをうまいこと描いてくるなぁ。
建築探偵も残り4冊。
京介の謎が解かれる日も近い、か
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聖女の塔
建築探偵桜井京介の事件簿
篠田真由美講談社ノベルス
(2008.12/15読了)
その代わりあなたは確実に『彼』を、桜井京介を破滅させなければならないって
『聖女の塔』本文より
「建築探偵桜井京介の事件簿」第12作目『聖女の塔』。
ラスト最後の15作目に向かってスパートがかかってきた。
キリスト教の一派を名乗る教団の集団自殺。
蒼の友人の友人のカルト教団への入信。
それらの事件はやがて、京介や蒼に対して牙を向けてきた。
もはや第3部に入ってからは初心者さんお断りの雰囲気。
ミステリとしての1作というよりも大きな15部作のうちの12作目。
ってかもはやミステリとしてよりも、シリーズの謎のほうが気になって仕方ないです。
いよいよ京介の謎が次第にはっきりと浮き彫りになってきたな…
蒼や京介、深春との楽しかった時代はもうすでに過去のことだよなぁ。
そろそろ彼らを巻き込む最大の事件がおきそうな感じだ。
どうも今回の宗教の事件は前哨戦のように思えるし…
彼らの関係は今後どうなるか。
そして京介の謎の真相はどこにあるのか。
残り3作。
この佳境に入ってきたシリーズを楽しめるのもわずかだと思うと少々寂しいものがあるが、ラストが楽しみだと思わせてくれる12作目でした。
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一角獣の繭
建築探偵桜井京介の事件簿
篠田真由美講談社ノベルス
(2008.12/28読了)
しかし君が元気そうで、ぼくとしても嬉しいよ、薬師寺香澄君
『一角獣の繭』本文より
建築探偵桜井京介の事件簿第13作目『一角獣の繭』。
ラスト3冊。
第3部からはもはや1冊1冊がラストのための伏線を次々に張っていくので、もはやあらすじも必要なさげ。
12作目『聖女の塔』の直後の話。
そして蒼と京介の間で強烈なまでの最大の事件が起こるのが今作。
12作目の絶体絶命の出来事なんて、まだまだ序章に過ぎなかったのかもしれない。
もうね…
戻れないところに来ちゃったなぁという感じ。
だってもうラスト50Pだけでお腹いっぱい。
蒼の心のなかですさまじい勢いで変化が起こるわけだが…
ああっ、もうっ。
なにを言おうとしてもネタバレになりそうでなにも言えないってどういうことだよ(笑
なかなか事件らしいものが前面に出てこないなぁ、って思ってたら終盤この「一角獣の繭」という作品単体での謎解きと、シリーズすべての伏線が一気に動き出した。
そんでもってとんでもないところで終わりやがった。
しかも14作目は過去編。
その次が最終作。
つまり今回語られなかったあんなことやこんなことがたぶん過去で起こって、それから最終作につないでいくわけか。
なるほどな…
素直に楽しみである。
今作はもうこのシリーズを読み続けていてよかったなと思い知らされた。
あと『一角獣の繭』というタイトルの秀逸さに度肝を抜かれた。
そりゃタイトルからあれやこれやと想像できることはあったのだが、その想像の上を飛び越えていきやがった(笑
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センチメンタルブルー
篠田真由美講談社ノベルス
(2005.10/30読了)
建築探偵桜井京介の事件簿の登場人物の一人「蒼」が11~20歳の間に出会った4つの事件。
短編集の中の後半の2編『ダイイングメッセージ』と『センティメンタル・ブルー』がえらくおもしろかった。
ネットで知り合った彼女は演劇をしており彼女が主演の「鏡の国のアリス」を見ることになった。
そこで語られる『鏡の中』と『こちら側』の世界。
「鏡」というのがキーワードとなり、その存在自体が今まさに問題になっていることの一つであるトランスセクシャルを表してたとはな…。
それに関して深く考えさせられた気がする。
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angels
天使たちの長い夜
篠田真由美講談社ノベルス
(2005.10/30読了)
夏休み、人気がない校内で死体が発見された。
学校にいた人物にしかできない犯行であることは間違いない。
高校生たちは自分たちで犯人探しという名のゲームを始める。
建築探偵桜井京介の事件簿の番外篇。
建築探偵の登場人物の一人『蒼』は出てきているが完全に登場人物の中の一人である。
推理ゲームどうこうよりも一人一人の視点から語られる登場人物の心情を抉っていくようなストーリィがもう秀逸。
タイトルに騙されてはいけませんw
いや、むしろ騙されたほうがおもしろいと思う(笑
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アヴェマリア
篠田真由美講談社ノベルス
(2006.3/15読了)
薬師寺事件(原罪の庭)から14年。
時効目前に薬師寺事件の唯一の生存者である蒼の元へ手紙が届く。
そこには「REMENBER」とだけ書かれていた。
蒼が主人公の建築探偵番外編。
本編8巻『月食の窓』と9巻『綺羅の柩』の間の話。
蒼がなぜ年齢よりもはるかに下に思えてしまうのか。
蒼に影を落としている薬師寺事件というトラウマを乗り越えていく話。
こうやって少年は成長していくわけか。
京介や蒼の友人の翳たちに囲まれて愛情を受けてきた蒼は受けてきたわけだけど、その愛情の深さが改めて実感できるなぁ。
こういう人たちがいたから今の蒼がいるわけで。
男性の読者の目から見ると蒼の京介を見る視線は親(代わり)への愛情というよりは恋愛感情に見えてしまうし、翳の蒼に対する心情っていうのは親友を通り越して恋でもしてるかのように見えてしまった(笑
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TENGU
柴田哲孝祥伝社文庫
(2009.1/27読了)
雑感として、これがもし犯人の足跡だとすれば、その男は少なくとも身長二メートル以上、体重二百キロ以上ということになるが―
『TENGU』本文より
道平は、ノートを閉じた。背筋に悪寒が奔り、それが止まらない。
天狗、か……。
昭和四十九年。
奇妙な事件が起こる。
被害者の頭部は怪力によって握りつぶされ、犯人の足跡はあまりに巨大な人間のようなもの。
静かな村で起こった誰にも知られることなく葬られた事件は26年の時を経て予想外の方向へ動き始める。
大藪春彦賞受賞作。
文庫の解説は西神心太。
最初ミステリーかと思った。
猟奇事件はだんだんと予想外の方向へ動き出し、最後はとんでもないところに着地しやがった。
ミステリーであり、恋愛小説であり…
そしてなによりも浪漫にあふれた内容だったのではと思う。
いやもうだってさ。
架空の「天狗」と呼ばれる存在へのアプローチの方法がもうすごいのなんの。
世界には天狗のように伝説的な「人間のような存在」が語られている。
随分昔から誰かが「見た」とは言っても、それを誰も証明できない存在。
なぜ証明に至れないのか。
UMAと呼ばれる存在の一端と猟奇事件をからませるうちに一人の女性が浮かび上がり、衝撃の事実が発覚する。
えぇ。
もうその真相。そして真相が明らかにされていった後の展開に衝撃という以外の言葉の何を使えというのだろうか。
もうまさかこんだけスケールのでっかいものを読ませられるとは…
大藪春彦賞を取ったというのも頷けるってなもんです。
すごいわ、この小説。
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黒い仏
BLACK BUDDHA
殊能将之講談社文庫
(2008.7/17読了)
「石動戯作? 妙な名前だな。何者だね」
『黒い仏』本文より
「名探偵だよ」
「名探偵だって?」
星慧が疑わしげに首をかしげたので、星慧はたしなめるように、
「本当に名探偵なんだ。なにしろ、ありもしないアリバイトリックを破ってみせたんだからな……。」
石動戯作シリーズの2作目『黒い仏』を再読。
あぁ。
前作の『美濃牛』では名探偵ぶりを発揮したのに(笑
このあたりから石動さんは実に迷走しはじめたように思う。
だから面白いんだけど。
やはりこのシリーズ、妙に深い知識が披露されまくる。
今回は特に洋楽だろう。
どれだけ石動は「コール・ポーター」がすきなんだよ。
さて。
これはミステリだ、ミステリじゃないと色々と喧々諤々の議論というか主張がなされている作品なわけだけれども、ぶっちゃけどうでもいいじゃないかと思う。
なにも謎があって、それを現実的に解決していく。
それだけがミステリじゃあないだろう。
この本を通してこの本の世界の謎という、それこそスケールのドデカイ謎を解決してしまうのだから。
そういう意味ではこれもミステリと言えるのではないかと思う(笑
再読というだけあって、そういう謎を知った上で読むとなんか以前と随分違って楽しめて読めた。
…やっぱり最初は「なんだよこれ orz これはないわ……」という感想を持っていたんで。
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鏡の中は日曜日
樒/榁(しきみ/むろ)
殊能将之講談社文庫
(2005.6/18読了)
梵貝荘で起こった14年前の事件。
名探偵水城優臣によって一度は解決されたのだが、
自らの名刺に「名探偵」という肩書きを入れている
石動戯作という探偵に事件の再調査が依頼される。
文庫版は「鏡の中は日曜日」に加え、「樒/榁」も収録されている。
解説は第5回本格ミステリ大賞をとった法月綸太郎。
デビュー作であり第13回メフィスト賞の「ハサミ男」も映画化され
今年は殊能将之の年だ、と言わんばかりの活躍…をするのだろうか。
とは言え、1年に1作くらいしか出さないというのは分かっているので今年の新刊に期待。
多作な作家よりも、練りに練った本を出す作家の方が個人的には好き。
しかし、まさか「鏡の中は~」と「樒/榁」が合本になるとは予想していなかった。
確かに「樒/榁」から読んで「鏡の中~」に遡って読むと後悔すること必至なので
こういう形の方が自然なのかもしれない。
解説は、法月綸太郎でおなかいっぱいだし、
感想は?と聞かれて答えるとすれば「見どころは名探偵の共演」かな。
石動を「名探偵」と呼ぶべきかはなかなか迷うところだがw
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キマイラの新しい城
New Castle of Chimaira
殊能将之講談社ノベルス
(2006.2/18読了)
ヨーロッパの古城「シメール城」を移築し、その城をメインとしたテーマパークが作られた。
しかし、城を移築した際に亡霊も一緒に日本へと来てしまい、テーマパークの社長に取り憑いてしまう。
亡霊が成仏できないのは750年前にあった事件が解決されていないかららしい。
かくて名探偵石動戯作は捜査に乗り出すこととなった。
石動戯作シリーズ第5弾。
ついに石動さんは亡霊にとり憑かれたという妄言ですら取り扱う探偵さんになり果てました。・゚・(ノД`)・゚・。
750年前に起きた事件と現実に起こった事件の謎、そして中世の人間が現代の日本に来たらどんな反応を示すのか、それに振り回される人間たちというギャップがなぜかうまいこと融合してしまってる。
なんか不思議。
序盤から何度か出てくる「天使は三段論法ができる」という議論があんな結末を呼ぶとは…
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子どもの王様
child king
殊能将之ミステリーランド
(2006.12/11読了)
大人になんか、なりたくない!
殊能将之『子どもの王様』本文より
ショウタは心の中で叫ぶ。
いつまでも子どもでいたい。
かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド第1回配本。
今更ながらに読んでみた。
小中学生向けの本。
だけれども大人が読んでも楽しめるというコンセプト。
小野不由美の「くらのかみ」は読んだことあったけれども。
小野不由美もそうだけど殊能将之だもんなぁ。
ミステリーで子どもにも読めて。
そんな殊能将之の本であれば是非とも読んでみたい。
読んだ。
確かにそんな内容だった。
怖いなぁ。
20前半だけれどもものすごい怖い本だった。
大人の関係がものすごくホラー。
子どもを通してみているだけに。
作中に出てくるトレンディ戦隊モノよりよっぽどリアルだ。
さすが、美濃牛で無駄に豊富な知識を披露した殊能将之だ…
あの戦隊ものですらワーグナーの戯曲が原作かっ!
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ハサミ男
殊能将之講談社文庫
(2009.4/30再読)
「きみは今回の事件が本物のハサミ男の犯行ではないと知っている、この世でたったふたりの人間のうちのひとりなんだよ。きみが探さなければ、誰が探すのかね」
『ハサミ男』本文より
「たったふたりの人間? もうひとりは誰だ」
「真犯人さ」
殊能将之のデビュー作でもあり第13回メフィスト賞受賞作。
しゅのたんの新作がなかなか読めないので3回目の再読。
何度読んでも端麗すぎる文章。
ウィットに富みまくった会話。
そもそも主人公が世間を騒がせている殺人鬼のハサミ男。
それでいて脳内に友人がいるという人物。
暇があると自殺を試みて結局失敗。
そんな人物が自分の模様犯の殺害現場の第1発見者になってしまうという内容。
そして真犯人探しへ。
もうなんともどうしようもない人なのだが、この特殊性あふれる人だからこそどんどん引きこまれて謎にかく乱されていき、果てはとんでもないラストに向き合わされ「こういうことだったのかよ!?」と驚かされる。
再読してみると恐ろしいほどの伏線の張り方だし、まったく違ったものとして読めるのも魅力のひとつだよなぁ。
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倒凶十将伝 巻之拾参
庄司卓イラスト:結賀さとる
ソノラマ文庫
(2006.3/8読了)
現世魔王はかつてない強大な力を手に入れた。
それに対して幽将たち10人の力で結界をつくり、その中に魔王を封印しようとする。
倒凶十将伝最終巻
6年ぶりの新刊。
そして最終巻。
ついに終わったぁぁ。
これまで張っていた伏線(二振りの刀とか零将の存在とか)も回収されたし。
満足満足。
唯一の問題点はいままでの話を思い出すのにちょっと苦労するところとかだろうか(苦笑
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東京バンドワゴン
小路幸也集英社
(2006.8/6読了)
家族10人が暮らす古本屋兼カフェで起こるちょっとした事件と日常を描いた作品。
「本の雑誌」の上半期4位。
面白い。
大所帯の団欒がなによりおもしろい。
みんなで集まって食べる食事って楽しいんだろうなぁ。
なにしろ4世代。
そりゃもう年から何から何まで違う。
でも家族だ。
そしてみんなで日ごろ起こったいろんなことについて話す。
で、ちょっとした事件が起こって、それをあーだこーだ言いながら解決してしまう。
この過程がすごく読んでて楽しい。
なんというかいつまでも読み続けたい本だなぁ。
大家族っていうものに対する憧れのようなものもあるんだろうけど。
この本の中の日常みたいに10人も人がいるのってお盆とかお正月の時期しか過ごしたことないしな。
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シー・ラブズ・ユー
東京バンドワゴン
小路幸也集英社
(2008.1/28読了)
淋しいってよ、わんわん喚いたり暴れたりするのも、まぁ子供らしくていいけどよ。男の子はよ、やせ我慢ってものをしなきゃならねぇんだ。どんなに淋しくてもよ、辛くてもよ、自分一人で頑張るんだっていうやせ我慢ってやつをよ、覚えなきゃあなんねぇんだよ。
『シー・ラブズ・ユー』本文より
『東京バンドワゴン』第2弾。
今のご時勢めったに見られない大家族の物語。
大家族で生活して、古本屋とカフェを営みながら過ごす毎日。
一日の夕方にはみんなで集まって夕食を食べ、問題があればみんなで考えetc.
なんというかホームコメディとでもいうんだろうか。
コメディとも違うな…
人情もの?
ちょっとした日常の謎系のミステリ?
まぁいろんな要素が詰まった心温まる4つの話が収録されてます。
昔から伝わる家訓で守るべきものは守る。
しっかりと。
そんな家族なもんだから、現代では忘れられているような家族の姿っていうのを見ることができるのがなんだか心にグッとくる。
暖かい心を持っている人が多いし、怒るべきところではしっかり怒る。
こういうのがニュースとか見ててもなんだか欠けてきているんじゃないかと思えるんだよな。
感動した、泣ける。
そういうものではなくて、読んだら心がほっこりと暖かくなる本だと思う。
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高く遠く空へ歌ううた
pulp-town fiction
小路幸也講談社文庫
(2008.2/25読了)
寝て起きれば、忘れちゃいけないことだけが残っています。それをどうやって受け止めていけるか。それが、大切なんですよねぇ
『高く遠く空へ歌ううた』本文より
パルプタウン・フィクション2作目『高く遠く空へ歌ううた』。
でも1作目読んでなくてもまったく大丈夫です。
なぜか幼少のときから死体を見つけてしまうことが多々ある主人公のギーガン。
義眼だからギーガン。
小学校の6年生。
彼はついに10人目の死体を見つけてしまう。
そこからどんどんミステリ風味に…なることもなく、ギーガンの身近な話がずっと続く。
友達と遊んだり、先生のライブに行ったり etc
最初に起きた事件が少しミステリのように思えてくるのはずっとあと。
それよりもこのギーガンの周りに起こる事のなんとノスタルジーあふれることか。
みんなで近所を冒険したり、はじめて友達の友達と遊んだ事、野球の練習場をめぐっての試合とか、なんか最近は見慣れない風景というかずっと昔に「こんな風に遊んだよなー」とノスタルジーに浸れる。
そんな郷愁や、大人が子供に教える当たり前のこと。
例えば大人が叱る時って子供の事を考えて怒るのが当たり前だし、それが経験から来るものであったりするもの。
そんな今では失われた(いや、実際には失われてないんだろうけど、最近のニュースやご近所を見ているとそうも思える)当たり前の光景がすごく懐かしくて新鮮に思えてしまう。
それがすごく心があったまる。
ミステリの部分も決して陰惨なものであったりするわけじゃなく、何らかの感情を読者に残してくれるような読後感がする。
そういう本としての暖かさっていうのがすごく感じられた。
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うた魂♪
小路幸也原作:栗原裕光
朝日文庫
(2008.3/7読了)
ハートは、心は、大切なのだ。何十人もの声を合わせる合唱は。ハーモニーは、ただ合わせれば綺麗には聴こえる。でも、それはただ綺麗なだけ。
『うた魂♪』本文より
「それだけじゃ、人の心は揺さぶれないのよ。そんなの、あなただって音楽好きなんだからわかるでしょ?自分の好きな音楽に、心揺さぶられた経験はない?」
揺さぶられた。
思いっきり心を揺さぶられたぜっヽ(゚∀゚)ノ
邦画の「ノベライズ」か、まぁ小路幸也の本だし買っとくかくらいのノリで買ってみたら恐ろしく面白かった。
そして色々と直球ストレートにソウルフルにコトバを投げつけられた気分だ。
もっと自分に正直に生きてみようと思わされた(笑
歌が大好きなちょっと自惚れが入った女の子とヤンキーだけど尾崎豊の「15の夜」を聞いてから歌に目覚めた男の子。
みんなでがんばって合唱コンクールに向けて練習、けれども色々いざこざがあったけど仲直りして優勝なんていうありふれたものなんかじゃなく、えらくハイテンションなノリとラブコメと熱血が見事なハーモニーを奏でているような感じで語られる話。
みんなで何かをやってみよう!という高校生が主人公の映画っていうのは「スウィング・ガール」だったり「青春デンデケデケデケ」などがあるが、そういうものともまたちょっと違った感じ。
なんというか登場人物みんな素直なのだ。
まっすぐ生きてるのだ。
だから挫折もするし、落ち込む。
それでも自分の「好き」なものが見えている。
そういうのってうらやましいよなぁ。
現実的なちょっと先のことを考えて現実的に妥協する大人が忘れかけているようなことをコメディという中でひっそり丁寧に描かれていた。
それがなんとも心地いい。
というか小路幸也に家族や暖かい人間関係を描かせたらやっぱりスゴイものができあがってくるよなぁ。
いい本でした。
200ページちょいで文字も大きめという読みやすい本なので、あんまり本を読まない人にもおすすめ。
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そこへ届くのは僕たちの声
小路幸也新潮社
(2007.8/30読了)
父さんは人間という動物のいいところは、わからないことを知りたいと思うところだって言ってた。それが人間の文明とか文化の根源だって。
『そこへ届くのは僕たちの声』本文より
小路幸也の4冊目の本だったかと思う『そこへ届くのは僕たちの声』。
3年ほど前の本だけれども、小路幸也は少しずつ確実に知名度を上げているような気がする。
それが懐かしさや大人が普段忘れてしまっているような感覚や雰囲気を作り上げてしまえることが要因のひとつじゃないかな、と思う。
上にあげたような文章も印象に残った文のひとつで、確かに大人たちは知らないものを知ろうする。
けれども知ったことで失くしたものとかはなかっただろうか。
眼に見えないもの、聞こえないもの、それでも存在するもの。
そんな存在するけど、それがなにか分からないものへのロマンというか憧れというか。
見るもの触れるものすべてが新鮮、そんな風に思えた子供の時。
その時のように理解ができない世界へ行くことでそんな子供のときの感覚を思い出させてくれる。
そんな普段忘れているような感覚を思い出させてくれたような本だった。
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ホームタウン
小路幸也幻冬舎
(2005.8/31読了)
故郷から追われるように街を出た兄と妹。
それからはお互い離れて暮らしていた。
妹から久々に来た手紙には「結婚する」という報告。
周りの人は素直に喜んだが、結婚を目前に妹は失踪。
財布もなにもかもを残したままどこかへ行ってしまった。
妹だけでなく、妹の婚約者も姿をくらましていた。
人と人との会話がものすごく温かい。
それと対比するかのように深まっていく妹失踪の謎。
謎の展開と畳み方は見事でした。
ラストシーンは予想はできる、けれどもそれが素晴らしいラストに思えてならないです。
ネタバレ含む感想(反転)
結局のところ妹が失踪した理由の一つに家族を作ろうとしたというのがあるわけですが、
その場合には養子になる、つまりは一種の生まれ変わろうという願望があったということなんだろうか、と思った。
そもそも結婚という儀式めいたことに理由を求めるとそこにたどり着くことも可能なわけで。
……だとすると養子になることで殺人者の娘だという過去や血とは関係ない人になって結婚する=俗に言う清い体で妻となると同じことなのかな。
ここまで。
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おおきくなりません
白倉由美イラスト:鶴田謙二
講談社
(2007.1/8読了)
僕は君のために語るよ、僕達以外には誰も知らない物語を
白倉由美『おおきくなりません』本文より
メフィストで連載された白倉由美の「おおきくなりません」。
表紙/イラストは鶴田謙二!
主人公は42歳の売れない小説家。
その小説家の35歳の籍を入れていない妻が大学に通いだした。
世界が文学だったらいいのに―と最初に言い出したのはなんだっけか。
白倉由美のセーラー服物語だったのかロリータ℃だったのかは覚えてない。
けれども大塚英志の世界を語る上でのひとつのキーワードだろう。
作者は白倉由美だけれども、世界は確かに大塚英志の世界だった。
35歳の大学生は白倉由美の一時期の肩書きであったし、席を入れていない夫の方はどこか大塚英志っぽく見えなくもない。
きっと、また設定だけ現実に少し近いもので、物語は虚構そのものだけど。
永遠の17歳を生きる妻。
彼女は物語を現実世界の中で無意識に演じてしまう。
ぐりとぐらの世界だったり、ゲド戦記の世界だったり。
それこそが彼女がおおきくなれない、理由に結びついてくるわけだけど。
17歳。
おおきくなれない。
通過儀礼。
三木・元幸・エリクソン先生。
大塚英志に触れたことがない人には不思議な世界を。
大塚英志や白倉由美の作品に触れたことがある人には上にも挙げたようななんだかどこかで聞いたことのあるような物語性がいっぱい感じられる(笑
実際、またか、と少し思いながら読んでました。
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ロリータの温度
PHOTO 伊島薫WORD 白倉由美
角川書店
(2006.10/15再読)
何故彼女は六回も死ぬようになってしまったのだろう
白倉由美『ロリータの温度』本文より
「多重人格探偵サイコ」のスピンオフ作品。
大江朔や夏目エリス、西園伸二、大江公彦と言った名前も見受けられるがここはそれ。
大塚英志に関わる作品だからきっと名前の使いまわし。
大した意味や記号は持っていないはず。
「ロリータの温度」はあくまで「ロリータ℃」の物語。
フォトグラフと小説のコラボとういことで6回死んだ12歳の少女の永遠、そしてそこには彼女以外が写らないというあまりに現実的でないものが描かれている。
気づいてびっくり。
4年前に読んだときにはそんなこと気にも留めなかったよなぁ。
永遠であるがゆえの儚さが滲み出てます。
ロリータ℃なんだから「サイコ」と絡めてなにか分からないだろうか。
けど色々読み解けそうで読み解けない小説でもある orz
「サイコフェイク」あたりと一緒に読むとなにか読み解けるのかもしれないけど。
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丘の上の小さな街で 白鳥和也自転車小説集
白鳥和也枻文庫
(2009.4/17読了)
自転車で旅をするという、見かけはごく単純で明快なことが、世間にとっては案外わかりにくいことであることを、角田はそのときから意識するようになった。
『丘の上の小さな街で』本文より
なんてマニアックな小説…
自転車乗り向けに描かれていて、その中でもさらに特定の人にターゲットを絞ったような本だな…
それを象徴するかのように表紙には収録されている話の中で出てくるSHIMANOのリアディレイラー「CRANE」。
自転車に乗る。
それも10kmや20kmなんて距離ではない。
その上たった一人で旅に出ちゃうような人たち。
なぜそんなことをするのかと聞かれても、行きたいから、ってこと以外には答えようがないというかたぶん人には理解されないであろう。
まさにそんな人たちのために書かれた本だと思う。
旅の途中で出会う風景や人。
ここまで行けた、という達成感。
そういうものを感じたいがために個人的に旅に近いような行為を休みの度にやってるわけだが、この本の主人公たちもそんな感じだった。
もう「うひゃー」ですよ。孤独すぎですよ。
ちょっと自分の未来像を考え直してみたくなってしまった(笑
いや、いまの時点でも十分楽しめてるし、なんも不満はないし、この本の主人公たちが求めるものも理解できるので何も言うことはないです。
むしろ感情移入余裕でできてしまいます。
でも、そうなんだよなぁ。
人に理解されないんだよなぁ。
この趣味は。
なんでひとりで?とか聞かれた日にゃあ答えられませんもん。
誰かに誘われたら誘われたでホイホイついていくし、急にそうだ今日どこそこに行こうと思い立つのもよくあること。
それに誰かと行くときには計画とか立てなきゃあいけないじゃないか。
その楽しさもあるんだけど、スケジュールが誰かとの予定で埋まりまくることなんてあるわけがないし。
だからひとりで行くことが多くなるのは必然。
旅先や行き先で誰かと出会ったり話をすることだってよくあるし、それで十分じゃないだろうか、とは個人的に思ってるわけだが…。
そういえば先日「ひとりでどっかいくのはいいにしても、もし何か事故とかにあったら誰も気づいてくれないんじゃないのか」と言われた。
ごもっとも。
もちろん十分な備えはしてあるし、それ以上のことをしようと思ったら労力を使いすぎませんか?、と思わなくもない。
手軽に身軽に誰かに気をかけることもなくひとりで行くのなら、ペースも時間も自由に使えていいと思うんだけどなー。
まぁ結局なにが言いたいかというと、「ひとり旅いいですよ。自転車の旅は楽しいっすよ」ということだ。
収録話:
・ 「CRANE」
・ 「雑木林の丘」
・ 「丘の上の小さな街で」
・ 「ウェザー」
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聖殺人者
新堂冬樹光文社
小説宝石連載『聖隷』を改題
(2005.9/6読了)
『悪の華』に続くガルシア三部作2作目。
イタリアンマフィアの一人であるガルシアは追っ手を逃れ日本へとたどりついた。
日本で資金を集め、造反しマフィアのボスへと上り詰めた旧友マイケルを殺すために。
日本のヤクザの中でも強大な力を持つ組の組長の娘を匿ったことから、ガルシアとその組との戦争がはじまった。
第二部完。
今回は帝国の逆襲、次は完結編のジェダイの復讐、というのと似てるw
前巻で主要人物がどんどんいなくなったから、今回のガルシアはえらく孤高。
そして今回も例によって例の如くガルシアに関わった人物は…。
血の掟を破ったものや将来復讐の可能性があるものは家族や親戚、女子供関係なくすべて殺せ。
この掟と共にこれまで生きてきた。
そしてその掟のために追われる身となったことから自分の周りを必死に護ろうとする姿。
そしてこれからイタリアへ戻るところが描かれるわけだけど、この掟とガルシア自身の生き様をどう見せてくれるか楽しみ。
1冊分を連載するのに1年くらいかかるのが単行本派としてはネックだなぁ。
その間にどんどん本を出してくれるだろうから間はきっと持てる気がする(笑
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あなたに逢えてよかった
新堂冬樹角川書店
野性時代連載
(2007.5/14読了)
昨日まで、もしかしたら十秒前まで親しげに語り合ったり、ともに暮らしていた大事な人を忘れてしまったら?
新堂冬樹『あなたに逢えてよかった』本文より
その人が誰だかわからなくなっているから、哀しみさえ感じることはないのだろうか? それとも、記憶はなくなっても、大事な人のことはなんとなくわかるのだろうか?
白い方の新堂冬樹の純愛三部作完結編『あなたに逢えてよかった』。
3部作だったの?
『忘れ雪』も『ある愛の詩』も一応読んでるけど、そんな感じ全然なかったけどなぁ(汗
もし大事な人の記憶が少しずつなくなっていったら?
会うたびに交わされる「はじめまして」。
記憶はなくなっても、その人自身の想いは心の中のどこかに残ってる。
そんな可能性を信じる話。
白いよぉぉぉ。
純愛。
まさに。
二人が出会って、会うだけで満たされて。
打算とかそんなのではなく、精神的に満たされるそんな恋人ふたり。
中学生の恋愛かっっ(笑
とか思わなくもないけど、実に純粋なのです。
そんな二人を引き裂くような出来事。
それをどうやって乗り越えるのか。
帯いわく、「衝撃のラスト12ページにあなたは号泣せずにいられるだろうか」だそうです。
純愛モノが好きな人にはオススメ。
黒い方の新堂冬樹が好きな人やミステリ読みには激しくオススメしません(笑
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毒蟲VS.溝鼠
新堂冬樹徳間書店
問題小説連載
(2006.8/15読了)
表紙を見て「ジェイソンvsフレディ」かよっっ(笑
復讐代行屋の「溝鼠(どぶねずみ)」の2作目。
幸福企画の"溝鼠"鷹場が帰ってきた。
ほとぼりも冷め、新たな名前を手に入れ、再び復讐代行屋をはじめる。
しかし、業界には毒蟲と呼ばれる"別れさせ屋"が現れていた。
二人の仕事のターゲットがバッティングした時に事件は起きた。
新堂冬樹はこれまで闇金の取立てとか家庭内暴力、新興宗教の洗脳などかなりえぐい描写をしてきたが、いままでの中でもっともひどいものを書いてきたんじゃなかろうか。
"溝鼠"にせよ"毒蟲"にせよ、仕事をきちんと完膚なきまでにこなす様は異様。
非道だな…。
ターゲットは人間として死んでいないだけではなかろうか、と思えるほどに。
まだ"溝鼠"は肉体的、精神的な暴力で想像しえる範囲内のえげつないことだが、"毒蟲"のムカデやサソリ、クモなどを使った暴力は((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
……さすが「世界最強虫王決定戦」とか「クワガタ&カブト 最強バトル大百科」とかの作者だな、と。
そういうところに関する「いっちゃった感」はズバ抜けてるような気がするけど、前作などにある「どんでん返し」のような展開がなかったのが残念でならない。
暴力的描写が主だとどこを楽しめばいいのか分からない orz
暴力描写が苦手な人だったり「忘れ雪」や「ある愛の詩」「天使がいた十二月」といった新堂冬樹の純愛小説を読んだファンになったからと言ってこれに手を出すのはやめておいたほうがよいかと。
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アサシン
an Asasssin
新堂冬樹角川書店
(2005.8/19読了)
殺戮マシーンとして育て上げられた涼は『仕事の現場』で咄嗟の衝動で目撃者である少女を連れ去ってしまう。
その少女は親をなくし孤独だった。そして涼も。
愛することを許されなかった暗殺者と、暗殺者を愛してしまった少女の純愛物語。
新堂冬樹でタイトルが「アサシン」!?
どんなドス黒い話なんだろう、と期待してはいけませんw
「忘れ雪」や「ある愛の詩」と同じ系統のお話です。
決して「悪の華」や「聖殺人者」と同じ類のものではないかと。
連載の途中から携帯小説として連載されたこの小説。
携帯で小説を読むという人が総じてそうだからなのかは分かりませんが、小説の構造は非常に分かりやすいです。
そして専門なのかは分かりませんが、
新堂さんらしく銃器や暗殺者の背景もリアリティのある描写で
より臨場感があり物語にのめり込めました。
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黒い太陽
新堂冬樹祥伝社
小説NON連載
(2007.9/10読了)
黒い太陽に向かう道はひとつではない。
新堂冬樹『黒い太陽』本文より
汚れていようが非道と呼ばれようが、藤堂を叩き潰すことが出来れば、それでよかった。
新堂冬樹の「黒い太陽」。
どちらかといえば「黒新堂」。
なんともまぁこの作品がドラマ化だけじゃなく漫画化までするとは思わなかった(笑
今回の世界はキャバクラ。
そして風俗業界。
ホールから訳入りで業界入りした19歳の主人公。
そして東京一帯を仕切るような風俗王と呼ばれる経営者に認められ、どんどん才覚を発揮していく。
しかし、ある事件により風俗王と袂を分かち、彼を叩き潰す計画を練り始める。
風俗である。
詳しくはしらない。
知ってる知識は主に新堂冬樹の小説でくらいだろう。
あとは北方謙三のエッセイ?
それだけしか知らなかったが、この小説でえらい奥の奥まで知れたかもしれん。
経営方法から方針、どんな手を使って商売を成り立たせているのか。
風俗業の裏が垣間見れます。
それだけじゃなく小説としても十分に面白かった!
もうなんか、最近の新堂冬樹はなんかパンチが足りないとかいう人に十分薦められる。
黒とか白の新堂冬樹でもなく、中途半端なものでもなくあらたな新境地を開いてきた、そんな風に思った。
もう純真な少年がどんどん業界に染まっていき、抜けられなくなっていく様なんてもう…
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砂漠の薔薇
新堂冬樹幻冬舎
(2006.7/18読了)
新堂冬樹と言えば暗黒系小説もしくは純愛系小説か、というので分けられる作家だと思います。
純愛系の「忘れ雪」を読んだ後に暗黒系の「無間地獄」とか「溝鼠」を読むと大変なことになります。
この「砂漠の薔薇」は、というと黒い方の新堂冬樹入門編といった感じかと。
舞台はお受験。
中流家庭で有名私立を受けようとしている母親と、私立の幼稚園はあたりまえの富裕層の母親たちの物語。
必死でやりくりしてなんとか生計をたて、他の母親の前ではそんなそぶりを一切見せない。
しかしあまりに立場が違うためにどうしても日陰者になってしまう。
そんな苦悩が続いたことで少しずつ母親は変貌を遂げていく。
お受験とは。
子供にとっての幸せって一体なんなんだろう。
そんなことを考えさせらたりだとか、お受験に走る母親たちの狂気のようなものを垣間見れる…かもしれません。
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三億を護れ!
新堂冬樹徳間書店
(2005.8/9読了)
しがないサラリーマンが三億円を当てた。
それを狙うプロの詐欺師集団。
態度をガラリと変えていく周りの人々。
サラリーマンに協力する人。
様々な人の三億円に対する思惑が交錯する。
主人公の片方、三億長者があまりに弱い。
常に虚勢を張るために嘘をつき続け、少しでも自分より強い立場の人が現れると媚びへつらう。
それに対して、もう一人の主人公詐欺師集団のリーダーの手腕の鮮やかなこと。
思わず詐欺師の味方をしたくなる読者に対して、次から次へと不測の事態を起こす作者。
お見事でした。
二転三転どころか四転五転くらいしたんじゃないだろうか。
まるでノンストップで駆け抜けるジェットコースターのような小説。
もし三億を当ててしまったら。
お金をすぐに全部使ってしまおうw
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背広の下の衝動
新堂冬樹河出書房新社
文藝連載
(2005.8/27読了)
「文藝」に掲載された小説が2編。
書き下ろし2編。
・邪(よこしま)
・団欒(ホームドラマ改題)
・嫉(ねたみ)
・部屋
「邪」
4時間かけての通勤。
妻に罵倒され、娘になじられ、上司からこき使われるサラリーマンの物語。
社会に対しての嫌味を内に秘め、希望のある未来を想像することすらできない。
ものすごく弱いよなぁ。
「団欒」
マスオさんから見た磯野一家の物語。
下手すりゃ二次創作で終わる小説だけど、さすがは新堂冬樹。
家族に安らぎを与えるためにいつでも笑い続ける男。
会社づとめで疲れていようともお義父さんに誘われた酒は笑顔で受け、義弟や義妹から相談ごとを熱心に聞き、義弟がお義父さんから説教を受けてると仲裁に入り、妻の話にもしっかりと耳を傾ける。
気遣いってなんだろう。
とにかくかなり恐ろしい話である。
「嫉」
円満に暮らしていた家族に突如異分子が入り込む。
よくできた娘が家庭教師を雇って欲しいという。
大事な時期で自ら勉強をする気になった期を逃す手はない。
しかし現れた家庭教師は一流大学の出でスポーツもできる好青年。
その好青年が妻に対して好意を持っているのではないかと疑った夫が取った手段とは。
短編集の中で最も新堂冬樹っぽい作品かなぁ黒い方の。
「部屋」
自らの存在とは一体何かを問う作品。
「もの」をひたすら虐待する人。
虐待されるがままの「ひと」でありたいと願っているひと。
両者の視点から語られる物語。
グロ系がダメな人は読まないほうがいいかも。
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底なし沼
新堂冬樹新潮社
Timebook Townにて連載
(2007.9/10読了)
蔵王に睨まれた人間は、完済するまでは、どこまでも、どこまでも、無限に追い込まれる。
新堂冬樹『底なし沼』本文より
まるで底なし沼に足を踏み入れたように、足掻けば足掻くほど、深みへと呑み込まれてしまう。
過去に、蔵王の取り立てから逃れた五パーセントの人間は、いずれも自殺。
そう、蔵王の取り立てから……底なし沼から逃れるには、金を払うか死ぬしかない。
ひさびさに黒の方の新堂冬樹の本を読んだ。
そしてひさびさに金融モノへと戻ってきた新堂冬樹の本でもある。
金融モノだったら「炎と氷」以来の6作目だろうか。
今度の取り立て屋の蔵王は二重の取り立て屋。
闇金から領収証をもらってなかったり借用書が破棄されてない迂闊な借り手に対してもう一度取り立てるというかなり非道な取り立て屋である。
もちろんいつもの金融モノのようにライバルは当然存在する。
結婚相談所のやり手社員。
どちらも人を騙しながら生きている奴ら。
彼らの戦いは実に些細なことからはじまった。
非道な取り立てや残虐な暴力シーン、結婚相談所のある裏側の実態、ヤクザの信念。
そしてラストのどんでん返し。
おいおいおい、ちょっと待て、そういうことかいっと思わずツッコミを入れたくなった(笑
結構見所が満載。
ただのバトルものだと思ったらものすごくスケールがでかくなっていったのも本作の特徴かと。
黒い方の新堂冬樹を数冊読んでいる人なら楽しめると思う。
ただし毎回読んでいる人は…なんだろうな。
なんかいつもの展開だorzと少し思えてしまうかも。
「(「溝鼠」+「無間地獄」)/2」みたいな感じだろうか。
黒新堂の入門編にはすごくいいと思う。
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誰よりもつよく抱きしめて
新堂冬樹光文社
(2005.11/21読了)
あらすじ
児童書専門店の店員と児童書を書いている作家。
ふたりは運命的な出会いをし、結婚する。
しかし、夫の不潔潔癖症によりずっと長い間お互いに触れ合うことも出来ないでいた。
結婚して8年。
新たな出会いやすれ違いを経てふたりは……
感想
純愛系新堂さんの6冊目の本。
切ない系の本です。
児童文学の本を通して丁寧に描かれるふたりの関係。
優しい夫を愛している。
けれども潔癖症がゆえにすべてを理解することができない。
そこにあらわれる同じ潔癖症を持つ女性。
彼女と夫が理解し合うのを見て心がイタくなったり。
愛っていうのは乗り越えていくものってことか。
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天使がいた三十日
新堂冬樹講談社
(2005.9/25読了)
あらすじ
最愛の妻を亡くした音楽家の男。
失意から仕事からお金までありとあらゆるものをなくしてしまう。
そんな時に出会った一匹の犬によって生きる目的を見出し、再び新たな一歩を生み出す原動力を得る。
感想
白い方の新堂冬樹なのでヤのつく仕事の人が出てきたりとか精神的に見ていて痛々しいシーンなどは一切ありません。
純愛と奇跡の物語です。
忘れ雪の時も思ったけど新堂冬樹って犬が好きなんだろうなぁ。
犬に向ける愛情がありありと感じられるし。
純愛も嫌いじゃないけどやっぱり新堂冬樹は黒い方が好き。
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動物記
Wild Animals I Have Known
新堂冬樹角川書店
野生時代連載
(2006.1/27読了)
わすれていないか、人間たち
新堂冬樹『動物記』帯より引用
新堂冬樹による野生に生きる動物たちの生き様とそれに関わった人間たちとの心が温まったりゾッとしたりする3つの物語
「極北の王者アダムの生涯」
アラスカに生きる最強の生き物グリズリーの話。
「兄弟犬ミカエルとシーザー」
仲が良い二匹の兄弟のような犬。
しかし突然の別れが訪れ、一匹は警備犬としてのトップレベルの訓練といっぱいの愛情を受けて育ち、もう一方は捨てられ自然を徘徊し、凶暴な野生を見につけていった。そして再び二匹は出会う。
「大草原の穴ぐらのジョン」
プレーリードッグの家族の話。
「わすれていないか、人間たち」
帯にある言葉だけれど、これほどこの本を表す言葉もないだろうなぁ。
ペットブームの昨今、動物は愛でるものとか一緒に暮らす家族とか暖かいイメージがあるけれども、いやいや自然に生きる動物はそんなものじゃないよ、と。
日々生きるために戦っている。
そりゃそうだ。
人間だって生きるために殺してるし、食べてるし。
動物だって同じだ。
そう再認識させられた。
新堂冬樹による「動物記」です。
実際、心温まる話たちです。
でも、描写が容赦ないです。
あぁ、新堂冬樹だな、って思わせるようなそんな描写です。
そんでもってペットブームにおぼれる日本人に対して警鐘を鳴らしているような、そんな感じもする。
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日本一不運な男
新堂冬樹中央公論新社
Web小説中公連載「ミッション」を改題
(2007.11/14読了)
「志賀雪子を殺してもらう。それが、お前を拉致した目的だ」
新堂冬樹『日本一不運な男』本文より
「ぬわっ……」
サッカーボールサイズの氷塊で、頭を打ち砕かれたような衝撃が脳天から全身に走った。
「じょ、冗談でしょ!? ぼ、僕がどうして、かか、彼女を、こっ、こっ、殺さなければならないんだ?」
新堂冬樹の『日本一不運な男』。
白新堂でも黒新堂でもない新堂"新色"という帯文句。
確かに、これまでと違う毛色だと思う(笑
拉致されて下されたミッションは「殺し」。
失敗すれば恋人は殺されてしまう。
その殺しを達成するために様々なトレーニングを受けさせられることになる。
……とここまでの内容ならば『闇の貴族』とか『ろくでなし』みたいなハードな展開になりそうなものなのだろうけれども、主人公はものっすごく弱い(笑
身体的にも精神的にも。
なのでまじめなシーンでもコメディタッチで描かれているところがおもしろいところ。
主人公本人は至って本気なんだけれども、彼の思うことと行動のギャップがなんとも楽しかった。
けど、やっぱり黒新堂というような展開の方がずっと好きです orz
黒新堂に慣れ親しんだ人には拍子抜けかもしれない(笑
でも、逆に白新堂の読者や新堂冬樹初心者にはちょうどいい本なんじゃないかなーと思う。
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吐きたいほど愛してる。
新堂冬樹新潮社
小説新潮連載
(2006.1/24読了)
黒い系の新堂冬樹の短編集
収録作品
『半蔵の黒子』
『お鈴が来る』
『まゆかの恋慕』
『英吉の部屋』
新堂冬樹の黒い系の『カリスマ』とか『溝鼠』なんかは大好きなんだけどこれはちょっとムリかも…。
どれも一般的にいう「普通」というものからズレていて二度と交わらない平行線のような世界にいる人間を、「普通」の世界から覗いた短編ばかり。
『半蔵の黒子』
『三億を護れ!』の自称アイドルのナッキーと似たような人物が主人公。
描写がっ描写がっ。
食べるものも部屋の様相も行動ももうダメだ…
想像力を書きたてて読むとだめなのかもしれない。
文字を追ってて吐き気がしたのは久しぶり。
『お鈴が来る』
あるきっかけから統合失調症になってしまった妻と正面から向き合う夫の物語…と言えば聞こえはいいのか。
だけど、その行動はあまりにも…
実際にも小説内にあるような行動をとることがあるのだろうか...
『まゆかの恋慕』
自宅アパートの前で座り込んでいる女の子。
その子は自転車に乗っていてケガをしてしまい、動けなくなったらしい。
そこからはじまるラブストーリー…だと幸せな白い新堂さんの話になりそうなんだけれど、これは黒い新堂さんのお話。
軽く読み返してみると序盤からかなり伏線がはってあってあることに気付いた。
『英吉の部屋』
娘のところに転がり込んだ80を超え介護が必要になった英吉。
若いころに一大財産を築きあげた彼だが、不祥事から財産を没収。
転がり込んだ先の娘夫婦の家では冷たく接され…
かわいい娘を愛するがためにとってきた親の行動は娘にはどういった意味にとられていたのか。
人と人の意思の齟齬、それこそ現代の社会問題と言える…かもしれない
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僕の行く道
新堂冬樹双葉社
小説推理連載
(2005.8/27読了)
小学3年生の僕は、毎週手紙を交換している仕事で忙しくて今は会うことができないお母さんに一人で会いに行くことを決意する。
はじめての新幹線。
はじめて訪れる見知らぬ土地。
幾人もの暖かい人たちに助けられながら飼い猫のミュウと共に小豆島を目指す。
小説推理に掲載された同名作品に加筆修正を施した小説。
新堂冬樹初の児童文学…にしては漢字にルビが振ってないのでこれは大人に向けられた物語。
親が離婚して母親に育てられた子、破産し息子から見捨てられた親。
それでもみんな大切な気持ちをもっている。
自分が成しえなかった気持ちに気付き、その気持ちを「僕」に託し、「僕」の背中を押してやる。
最初から最後まで物語の展開には察しがつく。
それでもラストには感動した。
それだけこの物語の主人公を読んでいる応援してたんだろう。
個人的には白い新堂冬樹の傑作かと。