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全日本じゃんけんトーナメント L

清涼院流水
幻冬舎文庫
(2007.4/24再読)

……どこから狂い始めたのだろう。ぼくは、なぜこんなところに迷い込んでしまったのだろう。ごく平凡な中学三年生のぼくが、なんの間違いからか、多くの人々に注目されることになってしまった。

『全日本じゃんけんトーナメント L』本文より

清涼院流水の木村彰一シリーズの1作目『全日本じゃんけんトーナメント』。
『エル 全日本じゃんけんトーナメント』の文庫版。
再読。

あらすじはタイトルのまんま。
何の因果か日本でもっとも視聴率の高い番組「全日本じゃんけんトーナメント」に出場することになった木村彰一。
彼は負けたいのになぜか次々に勝ち進んでしまい…

 

思えばこの本から清涼院流水を読み始め、森博嗣に至り、メフィスト賞作家を読むようになった。
そう、このバカバカしいタイトルにものすごく惹かれた。
その時すでに新本格ミステリには少し手を出していたので、後にコズミック・ジョーカーに出会ったときはぶったまげた(笑

この本で清涼院流水は文庫を本の最終形態であると言っているが、どうもすべての本が新しいものに思えるのは気のせいだろうか(笑
改良に改良を重ねて、同じだけど違う印象のものになったりだとか。
なのでなぜかこの人の本だけは2冊ずつ持ってるんだよなぁ。
新書と文庫と。

もし、「清涼院流水の本の中でオススメのものない?」と聞かれたときにおそらくこの本を薦めるだろう。
良くも悪くももっとも「まとも」な大説だと思う(笑

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億千万の人間CMスキャンダル

清涼院流水
幻冬舎文庫
(2007.4/24再読)

撮影した憶えなどないのに、自分がTV画面の中にいる。
木村彰一の背中を、得体の知れないものが滑り落ちた。ぞぞぞぞぞぞぞと膝下から脳天へ悪寒が這い上がり、全身に鳥肌が立つ。

『億千万の人間CMスキャンダル』本文より

清涼院流水の『億千万の人間CMスキャンダル』。
『ユウ 日本国民全員参加テレビ新企画』の圧縮改稿文庫版。
巻末の東京在住の会社員である木村彰一氏による『メタレベルにおける木村彰一』も見もの。
木村彰一シリーズ。

「エル 全日本じゃんけんトーナメント」に引き続き、同じ木村彰一シリーズで登場人物も似ている。
しかも今度はテレビの人間CM。
毎日放送される人間CMはゲーセンなどのプリクラのようなところで撮影し、テレビに送られ放送される。
その中から視聴者の人気が高いものが毎週、毎月、そして年間で選ばれるというもの。
自分はそんなの撮った覚えがないのになぜか放送され、どんどん勝ち上がっていく。

今度の木村彰一は大学生。
前回のような幼さはないもののしっかり巻き込まれるのは今回も。

さて、圧縮改稿版。
確かにノベルス版のほうがはるかに長かったし、丁寧すぎた。
けれどもさ…
本当にこっちの圧縮文庫版の方がよかったんだろうか。
ラストは特にそう思えてしまう。

そんな疑問を抱きつつも、とんでもないラストすら清涼院流水っぽいからいいか…

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Wドライブ院

清涼院流水
講談社文庫
(2007.7/18再読)

室内の三人は、木村彰一が扉を開くと同時に視線を向けてきた。
まったく同じ顔で三方から同時に見られる。かなり異様だった。
室内で待っていた三人は、全員、木村彰一とまったく同じ容姿。

『Wドライブ院』本文より

清涼院流水の『19ボックス』の文庫版である『Wドライブ院』を再読。
文庫版というよりも改定版みたいな感じだろうか。

文庫版の解説は活字倶楽部の編集長の武井千秋。

『19ボックス』に収録されている
・『カウントダウン50』
・『木村間の犯罪×Ⅱ』のふたつを改定し、
・『Wカウントダウン50』
・『木村さん殺人実験W』として収録。

なお
・『華ある詩~モナミ~』
・『切腹探偵幻の事件』はカットされているので、興味がある人はノベルス版を読んでみるのもいいかも。

ミステリというわけでもなく、小説というわけでもない。
増える恐怖を描いた『木村さん殺人実験W』と減る恐怖の『Wカウントダウン50』のバランスも実にいいと思う。

なにより、この頃の清涼院流水の中ではもっとも短いというのも魅力。

また独特の言い回しやレイアウトに凝った文字の羅列という20世紀~21世紀初頭に見られた清涼院流水ならではの物語の書き方もたぶんこの頃が絶頂期。

いま読むとなんか懐かしい感じすらするんだよなぁ。
『トップランド』以降は少しずつ変わっていった感じがするし。

初期の清涼院流水に触れる場合には必読かと(笑

ラストの「物語の外」はあるお寺だったかと記憶してます。
たぶん奈良県奈良市のある場所。
地図でよっく見るとあら不思議。
なんかお馴染みっぽい場所が(笑
もうホントにある意味くだらなくも、でも盛大に笑えるネタだよなぁ(笑

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とく。(とくまる)

清涼院流水
徳間デュアル文庫
(2006.3/8読了)

1000人のボディーガードたちが一瞬にして殺された夜霧邸を脱出した特馬たち5人。
しかし、5人は刑殺の手によって分断されてしまう。

とくまシリーズ完結編。


前回までの内容は一体なんだったんだろう。
1巻からはこんな内容になるとは思いもしなかっただろうし、2巻からも予想ができるはずもない。

良くも悪くも「清涼院流水」。
妙な言い方をすれば「カーニバル」にもっとも近い気がする。

こんなんアリかよっ。
清涼院流水は健在だった…

でもそういったものをたまに清涼院流水に求めてしまうのもまた事実 orz

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トップラン 第1話 ここが最前線

清涼院流水
表紙イラスト:田島昭宇
幻冬舎文庫
(2007.5/4再読)

「僕と会った事実、会話の内容、それにトップラン・テストのことは、決ッして誰にも話しちゃいけないよ。親友にも家族にも、例外はない。1月31日まで、君ひとりの胸にしまっておくんだ。もし誰かに秘密を話したら、君は自動的に失格だ。」

『トップラン 第1話』本文より

トップラン第1話。

2000年から2001年にかけて隔月刊行されたシリーズ。
もう7年も前か…

貴船天使を名乗る人物から「トップラン・テスト」を持ちかけられた。
参加費は500円。
テストに回答するだけで99万円が手に入るという。
傍目に見たら怪しげなことこの上ないテストだが、そのテストの内容はあまりに人を試しているないようで…

こんなことあったなぁ。
清涼院流水の本に描かれる様々な時事ネタ。
確かにその時期に起こったことを描くことでリアル感が増すような気がする。
懐かしー、と思えるものもいっぱい。

いま『トップラン』を読み返してみるとこの1巻のテストを受けるだけの内容で恋子の人物説明がほとんどなされてたんだなぁ。

大河ノベルが高くて手を出せないのでトップラン&ランドを腹いせに読みかえしてみる(笑

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トップラン 第2話 恋人は誘拐犯

清涼院流水
表紙イラスト:田島昭宇
幻冬舎文庫
(2007.5/9再読)

「第2のトップラン・テストは、予定が変わったわけではなかった。
アタッシュケースの「荷物」は、既に届けられていた。約束どおり、恋子の部屋に」

『トップラン 第2話』本文より

トップラン第2話。

前回の第1話で第1のテストをクリアし、第2のテストがはじまるまで。

 

これってさ…最後の50Pさえあれば、話はしっかりと通じるような気がするんだけどどうなんだろ。

あらすじと第1のトップランテストの解答でほとんど費やしちゃってるし。

再読してみると激しくいらない部分が多いような気が少し(苦笑
でも、あの解答は解答で今後の展開を予測するための要素ってのもあるから下手に読み飛ばすのはもったいないしなぁ。

1話の補足が2話って気がします。

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トップラン 第3話 身代金ローン

清涼院流水
表紙イラスト:田島昭宇
幻冬舎文庫
(2007.5/23再読)

「悪戯だと思う?」
「悪戯 ― にしては、センス悪くないですか? かなり」
「悪すぎるよ。誘拐事件の身代金をローンで請求するなんてさ」

『トップラン 第3話』本文より

トップラン第3話。

現在のトップランの試験は「7500万円を誰にも見つからずに隠すこと」。

そんな折にかかってきた電話「姉を誘拐する。そのために身代金をローンで払え」。

身代金なのにローンかよっ。
思わずツッコミを入れたくなるが、主人公の恋子はいたって冷静にこのバカバカしい状況を乗り越えようと智恵をしぼる。

清涼院流水らしい、コトバにこだわった文字の羅列。
そして現代をパッケージングするかのように当時起こったことをバックグラウンドに置きながら進む物語なのはいつもどおり。

ラストの2度目の真剣勝負。
恋子とよろず鑑定師の貴船天使の戦いは見もの。
そんな彼の思考を読んで読んで、彼が只者ではないということを見極めようとするシーンが特に好き。

久々に読んでみると意外と内容忘れてるなぁ。

再読のはずなのに4巻がちょっと楽しみ。
(最初と最後は覚えてるけど、間がさっぱり憶えてないんだよなー。どうしたもんか

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トップラン 第4話 クイズ大逆転

清涼院流水
表紙イラスト:田島昭宇
幻冬舎文庫
(2007.5/25再読)

「……『時』を……賭ける?」
「そうさ。オレたちは大金の代わりも、『時』をチップにする」
「オレたちは、秘密を話すまでの『時間』を賭けるんだ ――」

『トップラン 第4話』本文より

トップラン第4話。

3話までにスローテンポな展開は終わり、一気に緊張感が高まりスピード感も増してきた4巻。

ついに彼らの秘密が暴かれる時がくる。
しかし、その秘密を暴くためにはリスクを負わなければならない。

この緊張感がたまらない。
いままでのなんだかなぁ、という展開は一体なんだったのか(笑

新たな登場人物もくわわり、恋子の友人、そして両両親たちも「トップラン」にどんどん絡み、
いや、それだけじゃなく、実はすでに関わっていたという恐ろしくおもしろい展開。

前巻のあとがきで4回はおもしろくする、と言っていたのはこれのことか、と思えた。

トップランを楽しむにはここまで耐えれたらあとは普通に楽しめると思う。

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トップラン 第5話 最終話に専念

清涼院流水
表紙イラスト:田島昭宇
幻冬舎文庫
(2007.6/8再読)

「でも、まだまだ人生に未来の時間が残っているのに、勝手に自分の全盛期を過去のどこかに設定するというのは、現在と未来の自分の人生を盛り上げる努力からの「逃げ」でしかないと思う。」

『トップラン 第5話』本文より

トップラン第5話。
次で最終話。
名台詞の多い第5話だった。

表紙はひきこもりの狐森キツネ。
出番はかなり最後だったが。

第4話のクライマックスに向けて盛り上がるところかはじまり、いよいよラストへ向かったトップラン第5話。

第4話からの貴船天使たちとのゲームが最終局面を迎え、このゲームの謎が解かれた。

しかし、結局最後の謎「トップラン」とはなんだったのか。
それだけが解かれることのないまま第5話が終わった。

まさに最終話の前のためだけに存在する第5話だった(笑

再読中だけどラストがどうも思い出せないので最終話を読むのは結構楽しみだったりする。

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トップラン 最終話 大航海をラン

清涼院流水
表紙イラスト:田島昭宇
幻冬舎文庫
(2007.6/19再読)

「2001年1月1日―21世紀開幕の歴史的な瞬間が、スグそこまで迫っている。
2000年12月31日―20世紀から21世紀へカレンダーが変わる「世紀の一瞬」。
闇の中で「世紀の一瞬」を待っていると、1年前のことが頭に浮かんでくる……。」

『トップラン 最終話』本文より

トップラン最終話。

5巻までとの内容は少し変わって、この6巻だけは一つの締めくくりのためだけに存在している。

いわゆる「トップラン」とは結局なんだったのか。

流水ファンが待ち望む、なんだよこの展開っっ!(笑、もしくは(苦笑
そんな風に思えるラストには再読にも関わらず嬉々とできた。

そんなことから清涼院流水が築いた流水大説の一つの頂点がこの「トップラン最終話」だと思う。

この後、ミレニアム(2000年)企画である「トップラン」からシリーズは「トップランド」シリーズに至るわけだけれども、そこでこのシリーズは一つの清涼院流水のひとつの挫折を迎える。

トップラン&ランドが完結してから「ぶらんでぃっしゅ」で新たな清涼院流水が再出発するまでの頂点と迷走記こそがこの「トップラン」というものだったんだろうな、と今は思える。

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トップランド2001 天使エピソードⅠ

清涼院流水
表紙イラスト:田島昭宇
幻冬舎文庫
(2007.6/30再読)

トップランド―それは、どこでもない場所。

『トップランド2001』本文より

トップランド1作目。
「トップラン最終話」の直後からはじまる物語。
けれども、トップランを読んでいなくても大丈夫なつくり。

「現代」を1年ごとにアーカイブ化するという目的もあるトップランシリーズ。
1作目は「2001年」。

そういやこんなこともあったなぁ、と思いながら読めた。

物語の方はどうなのか。
しょっぱなからあまりに重大な事件が起こるものの、1作目はいろいろな伏線が散りばめながら終了。

でも、この作りは清涼院流水のいう「1作読みきりストーリー」というのになってるんかなぁ。

トップランを読んでいなかったらどう読めるのか。
本当に1作で完結しているといえるのか。
その二つの点はどうしても中途半端なような気がしてならない。

この後貴船天使がどうなるのかってところにしか興味がもてないんだよなぁ。

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トップランド1980 紳士エピソードⅠ

清涼院流水
表紙イラスト:田島昭宇
幻冬舎文庫
(2008.3/17再読)

「死なないこと――と――生きること、は違うのか?」
「兄ちゃん、そりゃ、まったく違うよ。生きることは、垂れ流しの人生でもできるこった。死なないこと、ってのは、そのための努力と信念がいる。その差は大きいゼ」

『トップランド1980』本文より

『トップランド』2冊目。
1950年から1980年までの時代の流れと共に、トップランの恋子と銀子の両・両親の一人である笙造の物語を描いた作品。

やはりメインは昭和の大事件の一つである3億円事件にスポットを当てているのだけれども、トップランシリーズとの関わり方が見事だと思う。

大金をかけたあまりに突拍子もないゲームを描いたトップランのようにやはり父親の笙造も大きな事件に関わっていた。
そのもっとも過酷である事件を描くことで、どのようにして笙造が「紳士」になりえたかを想像させてくれるわけだけれども…

やっぱり終わってないよなぁ。
1冊で終わる話であるというのが『トップランド』シリーズであると清涼院流水は述べているのだけれども、いま再読してみてもやっぱりこれはエピソード0であり、序章。
まだ話がはじまっていないというように感じてしまう。

もし『トップランド』シリーズが続いていれば、1950年以降の歴史の集大成のようなシリーズが完成されていたのだろうか。

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トップランド2002 戦士エピソードⅠ

清涼院流水
表紙イラスト:田島昭宇
幻冬舎文庫
(2008.3/17再読)

この世でいちばん素晴らしい場所。
どこでもない場所(ノーホウエアランド)は、ここにあった。

今という瞬間、君のいるこの場所こそがトップランドだ。

『トップランド2002』本文より

『トップランド』完結巻。
清涼院流水が読者に審判を仰ぎ、この巻にて完結したという話がこの『トップランド2002』。
その後『トップラン&ランド完』という本が出たわけだけれども。

良くも悪くも、今から考えるとこの本が清涼院流水の転換期になっているような気がする。
清涼院流水が清涼院流水であった由来。
独特の文SHOWと音韻、そして文字の配置が織り成す不思議な感覚。
それがこの本の頃に大成し、新たなにどんどん変化していったのがこの後であると思う。

さて、清涼院流水が審判を仰いだ「この本は果たして1冊で完結しているのか、それともしていないのか」。

記憶を無くした貴船天使が日本に戻り、2001年から新聞の記事によってニュースを追体験し、2002年をエピソード記憶をなくした状態で体感する。

それは今までのトップランシリーズのように2001年から2002年をパッケージングした本のよう。

そして貴船天使はラストで大きく運命を揺さぶられるわけだけれども…
傍目に見れば分かりやすく「終わっている」。
けれども終わっていないように思えてならない。

じゃあなぜ3人称で彼は「まだ先の未来も生きている」ように描かれていたのか。
その瞬間「」が訪れたはずなのに、「未来」があるのはなぜなのか。

これは一種のテレビドラマなどでいう「引き」じゃないのか、って思う。
いいところで終わりやがって次に続くのかよっ、って。

そういうことを考えるとやっぱりこれは「続いている」物語なんじゃないかなーって思えるわけです。

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トップラン&ランド完

清涼院流水
表紙イラスト:田島昭宇
幻冬舎文庫
(2008.3/18再読)

35年の歳月が流れても、変わらないものがある。

『トップラン&ランド完』本文より

『トップランド』が2002でシリーズが完結してから2年後に発売された真の完結編『トップラン&ランド完』。
すべての謎があきらか…になってるのか。
なってるのかもしれないけれども、「えええぇぇえぇ」とはなるな(笑

50年代からのNEWSを取り込みながら、その年年のNEWSを1冊の本ごとにパッケージングし物語を進めてきた『トップラン&ランド』シリーズもこれで終わり。
なぜNEWSが重大なのか。

世界で何が起こって、何が変わってきたのか。
歴史と共に人の価値観や考え方も変わってきたのか。

それを読者が再認識しながら読み、最後に究極的に『変わらないもの』を提示した大長編だった。
ここにたどり着きたかったのかよっ。

以前に読んだときは2年ぶりに読むということもあり、前までになにがあったっけかなと思いながら読んでいた。
今回は結構短めのスパンでシリーズを一気に再読したので、ようやくこのシリーズで言いたかったことってのに気づけたような気がする。

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キャラねっと完全版 愛$探偵ノベル
idol detective novel (no-bell)

清涼院流水
イラスト:ささきむつみ
モデル:椿名梢
角川文庫
THE スニーカー連載
(2007.4/28読了)

高1の終わり頃から、オレは、ある女の子のことがずっと気になって、ぜんぜんあたまから離れねーんだ。そのせいで、高2に進級しても、いまいち実感が沸かねーんだよ

『キャラねっと完全版 愛$探偵ノベル』本文より

清涼院流水の『キャラねっと』文庫化。

1作目の「みすてりあるキャラねっと」。
2作目の「めいきゃっぴキャラねっと」。
3作目の「であいまちょキャラねっと」。

1作目がスニーカー文庫で出て、それから2作目以降は文庫化されることなく全作合本+書き下ろしありでノベルス化した。
それを全面改稿したのがこの「完全版」。

未成年のみがプレイできる超ヒットしたとされるオンラインゲームが舞台。
そこで起こるキャラ殺人事件、キャラ消失事件などネットゲーの中に潜むバグを見つけ出し解決する。
そんなデバック探偵たちの話。

オフラインでのことは話しちゃいけないことになっているから、主人公の目を通して描かれるネットゲーの中の世界。
そして事件と恋愛が同時に進行し…

いい青春大説だよなぁ。
今ではこの世界のことも過去のこと。

はじめて読んだときにはまるで随分先のことのように思えてた。
そして現在2007年。

まったく同じ技術まで追いついたということはないにせよ、先の未来のネットゲームではなくそこらへんで普通にプレイできる世界の話のようにすら思える。

だから事件そのものがすごい珍しいもののように思えないし、もしかしたらあるかも、とさえ思えてしまう。

でもこれを最初は2001年に発表してたんだよなぁ。

その当時、なにが起こってたか。
2001年から2003年まで。
彼らは世界のありとあらゆる出来事を受け止めながら、ネットに接続していた。

そのあたりはまるでトップランシリーズのようだった。
そういやこの時こんなんがあったよなー、そんな風に思い出しつつ読んでた。

愛$探偵ノベル。
愛か金か。
愛か$か。
そしてアイドルを述べるノベル。
または「アイドルのベルで鐘で金」。

そんな清涼院流水ならではの言葉遊びも健在。
というかパワーアップしてるなぁ(笑

また、清涼院流水のあとがき。
そして角川書店編集部による「自称"「敗北」した小説"のその先の光~大切な大説の稚拙な解説」は必見。

キャラねっとを書き上げた時、ライトノベルに敗北宣言をした清涼院流水。
その時いったいどういう心境でどのようなことを述べていたのか、2001年からはじまった「キャラねっと」という企画について結構つっこんで書かれています。

清涼院流水の著作の中でも極めて青春度が高い大説だと思う。

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秘密室ボン QUIZ SHOW

清涼院流水
講談社文庫
(2006.5/18読了)

密室本企画の一つである『秘密室ボン』の文庫版。
やっぱりかなり加筆修正されてます。

キャラ教授を彷彿とさせる人がいたりとか、クイズの内容がメフィスト賞受賞者32人分に増えてたり…
そのほか色々加筆されてました。

中でも今回は「非密室バム」の収録と巻末の「メフィスト賞の秘密」が収録されている。
「バム」がまさか収録されるとは…
存在は知っているけれど、読むことはきっとないだろうと思ってたのにw
巻末に収録されている「メフィスト賞の秘密」も第2回受賞者の清涼院流水しか語れないような内容だったり、メフィ賞好きにはたまらない内容かも。

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ぶらんでぃっしゅ?

清涼院流水
<ゲスト>西尾維新・森博嗣・飯野賢治
幻冬舎
(2006.1/13読了)


清涼院流水はやっぱり清涼院流水だった。
流水による"コトバ遊び"ここに極まれり。
コトバ遊びの楽しさを知るための必読書。
実際にそう言っても過言ではないと思う。

迷走期はなんだったのか。
これこそが新・清涼院流水のスタート地点っていうような本じゃないだろうか。

清涼院流水の本は全部読んでいるつもりだけれども、今回のぶらんでぃっしゅ?こそが実は最高傑作なんじゃないかって思ったり。

あなたにとっての<ぶらんでぃっしゅ>もぜひ教えてください、と本の中で問われたので折角だから答えてみようかと思う。
<プラン、ドイツ?>
(多分これは本の中では出てこなかったハズ

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LOVE LOGIC
ラブ・ロジック~蜜と罰~

清涼院流水
角川書店
(2008.1/27読了)

当クラブは会員の皆様の<秘密の恋人>――"Secret Lovers"をお探しすることを活動目的とする団体です。

『LOVE LOGIC』本文より


清涼院流水デビュー10周年記念本の1つ『LOVE LOGIC』。

恋人を見つけるための会員制サイトに登録した10人がロッジへ集められた。
そこで行われるゲーム。
ゲームに勝てれば最良のパートナーと一緒に脱出、ゲームに負ければ死。
デッド・オア・アライブのゲームが開始される。

3人称でひたすら客観的に進む前半。
そして後半からがこの本の本領発揮。

これは「ゲームブック」形式で進む本である。
90年代半ばくらいに見なくなったジャンルをまさか流水の本で見ることになるとは(笑

ゲームブックというからには自ら参加しなければならない、そして読み進めたからといってすべて順番どおりに書いてあるわけじゃない。

当然この本の執着地点も最後のページではないです。

自分でゲームに参加し、すべての人を生還させない限りラストの驚愕は味わえない。
読むうえで幾多のバッドエンドを経験しながら進むしかないのである。
もしくは途中で投げ出して、ネタバレをいくつも目にしながらなんとか最後のページを見つけるか。

ラストのかなり意外な着地点にもげんなり(褒め言葉)したんだけれども、生き残れそうで生き残れないバッドエンドもあったりと楽しめた。

推理部分などをメモしたり、ページを戻るのがめんどくさいからという理由からフローチャートを作ってみながら読んだのも楽しいと思えた理由かも(笑

ラストのページにたどり着くのに苦心したからこそってやつかな。

そのフローチャート、終わってみたらまるで「かまいたちの夜」のごときフローチャートになってました。
そこに記されたバッドエンドを見る限り、よく頑張ったなぁとちょっと自分を褒めてあげたくなった。

副タイトルの「蜜と罰」も読み終わってみれば、GOODです。
どっちも存在してるってところがなおOK!

…でも清涼院流水初心者にはちょっとオススメしかねる内容かも(苦笑

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エルの終わらない夏

関田涙
講談社ノベルス
(2005.6/9読了)


あらすじ
17歳の早河荏瑠は母を亡くし、
赤ん坊の時に会って以来会った事のない伯父に引き取られることになった。
伯父の住む館では17年前、荏瑠の生まれた年に身元不明の女性が殺され、
事件の後に父が失踪したという場所だった。
長閑な田舎で出会う少年「誠」と
小学校の時からの神出鬼没の青い髪の不思議な少女「ウラニア」と共に
自分自身のルーツを探る。

関田涙1年ぶりの新作。
これまでの著作である名探偵ヴィッキーシリーズとは異なる本作。
とはいえ、ヴィッキーシリーズの記述者の誠と非常に良く似た人が出てきますので
前作までのファンにとっても読む価値は有りです。
そして今作に出てくる誠は次回からのシリーズものにも出てくるようです。

前作までとは違って作者の関田涙さんは今回のエルで
キャラクターは一体誰のものであるのか、ということを意識して書いたそうです。
なので、最後にはキャラクターはしっかりと前を向いていける、そんな話です。
ある種の成長モノと言ってもいいかもしれません。

荏瑠もウラニアもキャラをようやく把握できてきたし、
感情移入もしはじめたっていうところで終わるのが残念。
けど、これをシリーズ化してしまうと問題もいっぱい出てきてしまうわけで。
1冊完結だからこそできる話。
そして、関田涙の著作の中では一番好きな話です。
少なくとも今までよく言われてきた
「関田涙は後味が悪い」(話がおもしろくないというわけではありません)
と言っていた人にはこれを読んで再評価して欲しいものです。

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パラサイト・イヴ parasite EVE

瀬名秀明
角川ホラー文庫
(2006.10/2読了)

ついにミトコンドリアが解放される日がやってきました

瀬名秀明『パラサイト・イヴ』本文より


第2回日本ホラー小説大賞受賞作。

積み続けて幾星霜。
ようやく読んだ。

死んだ妻の細胞を研究することで妻は生き続ける
そして細胞は変化していき…
妻から取り出した腎臓を移植された女の子の身にも変化が起こり始める。

細胞が意志を持ち繁殖していく過程がなんともホラー。
妄執というか執着というか…
そういった怖さは日本のホラーにおける代表格にあたるものだし、過程はすべてSF的に説明を加えられてより具体化され、ものすごい勢いで"それ"がおそいかかってくる。

そのスピード感がすごかった。
スピード感があるのに暗く忍び寄ってくるような感じが特に…

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