感想のページ 作者「高里椎奈」

銀の檻を溶かして -薬屋探偵怪奇譚-

高里椎奈
表紙イラスト:唯月一
講談社文庫
(2008.4/9再読)

「……灰色の木を金色に戻す薬を、売って貰えると聞いたのだが」

『銀の檻を溶かして』本文より

最近どうも薬屋さんの話が長くなってきたのでそろそろ再読しないと色んな伏線に気づけないような気がしたので文庫の方で再読。
文庫の方で読んでみると結構細かいところが直されているような気がする。

文庫版の解説は喬林知。
イラストは唯月一。
このイラストではじめて3人組のイメージが的確に沸いたかも(笑

この作品が第11回のメフィスト賞を取った時には賛否両論だったんだよなぁ。
これはミステリじゃない、こういうのもアリじゃないかと本当に意見が真っ二つに割れていたように記憶してる。

主人公の3人は妖怪。
彼らが秘密の暗号「灰色の木を金色に戻す薬をください」という注文を受け取ると薬屋の副業を開始する。
それらは妖怪が絡んだ出来事であったり、摩訶不思議な出来事の解決だったり。

ひょうひょうとしていて捕らえどころのない手品師のような店主の秋、秋とは逆にまじめでちょっとお堅いんだけども色々やり手のザギ、感情的で幼い印象の元気なリベザル。
この3人が活躍するんだけども、語り手ともいえるリベザルがなんともかわいいもの(笑

それに妖怪としても幼いことから人間が事件を起こすことに対しての歪みの様なものや人と人が関係する暖かさのようなものをものすごく真っ直ぐに捉えてくれる。
それが読んでいる読者にとって普通の日常のシーンでも新鮮に読ませてくれるような気がする(笑

最初の1冊目ということもあり、まだまだプロローグ。
警察の高遠や葉山くんの出番はまだ少なめだな(笑

事件は2部で構成されてる。
それぞれちょっと違った視点で描かれているんだけれども、最後に事件がうまいこと融合していくさまはやっぱりミステリとしても十分おもしろいと思う。

あとはキャラクターが好きになれるかどうかでこのシリーズが楽しめるかどうかが大きく変わってくるだろうなぁ。

目次のページへ戻る

黄色い目をした猫の幸せ -薬屋探偵怪奇譚-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2008.4/10再読)

「君の切り札にはジョーカーが五十枚くらい入ってそうだね」
高遠がかき上げた髪を握って、完全にお手上げといった声を出すと、
『手品師の基本ですね』
秋の涼やかな声が会話を締めくくった。

『黄色い目をした猫の幸せ』本文より

薬屋探偵妖綺談2冊目。
2冊目からはノベルス版で再読していこうかと。

ダンボールを空けるとそこには手足のない子供の死体があった。

こんな陰惨なプロローグからはじまる話。
この2冊目以降に警察の高遠や葉山くんがぐいぐい本編に絡んでくるようになる。

事件は陰惨だけど、読後感は最高にいい作品。
語り手が妖怪でまだまだ幼いリベザルで他人との絆、例えば家族や血縁というものに憧れを抱いているというのもあるからこそ、そうした絆の大切さってのに気づかせてくるってところがそういった読後感に影響してくるのかもなぁ。

ガッチガチの物理トリックとかそういうミステリではなく、やさしく人と人の絆を紐解いていくようなミステリです。

あとは高遠と秋の騙しあいのような高等な会話っていうのもかなり見ものな巻かと。

目次のページへ戻る

悪魔と詐欺師 -薬屋探偵怪奇譚-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2008.4/21再読)

言ったろ? 何をしたいかを決めるまでは個人の仕事。したくもない事をさせられたり、したいことをさせてもらえなかったりはよくある事だけど、やりたい事は相手に伝えない限り、させてもらえるチャンスは殆どゼロだ。『始めなければ始まらない』。単純だけど心理だよ

『悪魔と詐欺師』本文より

薬屋探偵妖綺談3冊目。

短編4つに完結編1つという構造かな。
それぞれが独立して完結しているのに、ラストでさらに完結とはこれ如何にと思えるけど実際そうとしか言いようがないかな。

リベザルや高遠、総和さんというキャラクターを掘り下げるという意味でも最初の4編は大きな意味を持ってくる。
そしてラストでは今までもやっぱり謎な人物と思える秋の意外な姿が見え出してくる。
飄々としているだけではないんだよなぁ。
やっぱりその飄々とする中にも意味というものが見え出してきているような気がする。

特に事件が終わる頃の描写とか…、ね。

薬屋さんの1部をリベザルの成長モノとして見てみると、やっぱりこの本あたりから成長しだしてるよなぁ。
子供として扱われるだけじゃなく、彼の物事の見方を少しずつ変えていく。
それこそ子供から大人の考えに近づいていくような。
現実の理不尽さに直面してしまうとでもいうんだろうか。

やっぱりそういったリベザルの成長モノとしても楽しく読めるな。
(そしてやっぱりさっぱり内容覚えてなかったし orz

目次のページへ戻る

金糸雀が啼く夜 -薬屋探偵怪奇譚-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2008.8/15再読)

仮令それが不安定で確信が得られず、どんなに困難だったとしても。
形のないものを信じる事は、本当に難しいけれど。

『金糸雀が啼く夜』本文より

薬屋探偵妖綺談4冊目『金糸雀が啼く夜』を再読。

葉山くんやリベザルという下っぱと、彼らを育てる高遠や秋といった存在。
その上と下の繋がり。
とりわけ葉山くんたちが憧れをもって敬う様がいい関係だよな。

追いつけない存在でありながら、それでもすぐ近くにいてくれる。
そんな親子のような関係なんだけれども、彼らは彼らでなにか大きなものを抱えていて自分には何なのか分からないし、どうすることもできない。
でも何か力になりたいと行動しようとするところが、かわいいというかなんというか(笑

そして今回は秋や座木の過去が絡む事件なだけに、そういうところが強く出てたと思う。

ラストの事件の真相につながる過去の話は今回の巻でかなり好み。
子供の純真さっていいよな ⊂⌒~⊃。Д。)⊃
大人同士の壁にも阻まれず、ただ自分の気持ちを優先させることができるってのが。
こういうのを読むとふっとやさしい気持ちになれる気がする。

目次のページへ戻る

海紡ぐ螺旋 空の回廊 -薬屋探偵妖綺談-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2006.4/14読了)

あらすじ

リベザルの誘拐事件。
座木の養父の死の謎。
そして60年前に起きた女子高生失踪事件。

この3つの事件の謎を追っていくと深山木秋の過去が次第に明らかになっていった...

薬屋探偵妖綺談、第一部完結編。

 

感想

第一部完結!?

読み終わって、あぁ完結だな。
確かに一区切りがついてしまった。
今回の話が一区切りというわけじゃなく、これまでの13冊というお話を重ねてきた上での一区切り。

確かに一つの区切りはついたけれども、次にも繋げられる内容でもあったし、例えこれまでの少しミステリ風味で少し風変わりな日常という図式が変わろうとも続きは読んでみたいなぁ。

 

高里さんが自費出版していた深山木薬店説話集もどうやら講談社ノベルスで出すらしい。

目次のページへ戻る

深山木薬店説話集 -薬屋探偵妖綺談-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2006.1/6読了)

「薬屋探偵妖綺談」初の短編集。
「蝉の羽」が短編第一弾な気もしないけど。
だったら実は「銀の檻~」がそうじゃないかと言えなくもない(笑

去年くらいに自費出版された「説話集」にいくつか短編が加えられてます。
さらに「特製しおり」と「電子付録」付。
ある意味お得です。

10の短編。
色んな人が主人公です。
零一とかたまに「なんでこの人がっ」って人が主役だったりするものも。

「深山木薬店」と「海紡ぐ~」のすぐあとのリベザルの話「深山木薬店 改」が好き。
第二部はじまったらいいなぁ。
実際それを予感させるような記述も「改」にはあったわけだしね。

目次のページへ戻る

ソラチルサクハナ -薬屋探偵怪奇譚-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2007.8/9読了)

今にして思えば余りに平穏で、余りに幸せな日々だ。ある事件を境に、彼らは去ってしまった。
『バイバイ』
呆気なく、跡形もなく。
太陽が失われたようだった。

『ソラチルサクハナ』本文より

薬屋探偵第2シリーズ「薬屋探偵怪奇譚」の0巻。
もちろん「薬屋探偵妖綺談」の続き。
表紙のデザインも一新。
えらくロマンティックになってる!?
セットの手作り感とにじみ出る雰囲気がいいなぁ。

前巻である薬屋探偵妖綺談の最終巻「海紡ぐ螺旋 空の回廊」から7年後の深山木薬店からはじまる。

あまりに衝撃的な出来事からリベザルくんはどうなるのかと思っていたけれども…

本質的には薬屋さんのやっていることは変わらない。
依頼が舞い込み調査し、それが人間の仕業なのか妖の仕業なのかを見極め解決に導く。

けどやっぱり変わったのはリベザルが前シリーズまでのみんなの弟、マスコットというような存在から少し頼もしくなってきているところだろうなぁ。

あとがきで高里椎奈さんも書いていたけれどもこの『ソラチルサクハナ』は0巻という位置づけのようで、どちらかというとシリーズを繋げるための話や今後の伏線みたいなものが沢山散りばめられていたような気がする。

特に7年間の空白というのは今後どう展開されていくのか楽しみ。

(´-`).。oO(思えばこれで薬屋探偵15冊目か…。我ながらよくついてきたよなぁと思う。


秋が出てきたとき思わず感動した。

あの再会シーンとかラストの秋とのやりとりとかはなんかじーんときた(笑

目次のページへ戻る

天上の羊 砂糖菓子の迷児 -薬屋探偵怪奇譚-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2008.9/1読了)

リベザルは事実だけを客観視出来ない。事件ある所に人が在り、人在る所に感情がある。それら全てに等しく心を寄せてしまうから、彼は感情を無視して事実を暴けない。

『天上の羊 砂糖菓子の迷児』本文より

だからこそ、リベザルは人に真摯に接することができる。
ゆえにやさしい。
彼をまた育てた秋や座木も「やさしい」のだと思う。

『薬屋探偵怪奇譚』2冊目。

名実ともに主人公がリベザルになった薬屋さん。
2冊目でさらなる成長をリベザルは遂げるわけだけど。

遭遇する事件は、失血死した女性の真相。
果たして妖怪がらみなのか、事故なのか。
人間/妖怪双方にとって最善の解決を探す。

真実だけではどうにもならないことを知り、悩むリベザルがなんともかわいいものよのぅ(笑

また彼を支えるお馴染みの薬屋メンバーの細部にわたるサポートも見ごたえがあった。
こういうのを見るとリベザルって愛されてるよなぁ。

事件自体はなんとも切ない話でした。
泣ける、というかやりきれなさが心に痛い話だったな…

目次のページへ戻る

それでも君が -ドルチェ・ヴィスタ-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2006.10/19再読)

笑っている人を見ると楽しくなるでしょ?泣いてる人を見たら悲しくなるの。だから、不安がるより元気ださせてあげなくちゃ

『それでも君が』本文より

講談社ノベルス20周年企画の密室本。

31人しかいない世界に生れ落ちたキンカン。
暖かい住人たちと暮らす中、一つの悲劇が世界の真相を暴き出す。

そういえばこのシリーズが高里さんの初のファンタジーものだったんだよなぁ。

この世界に居る人のあたたかい雰囲気はなんか癒される。
あと世界観が文明が発達しているわけでもなく、剣や魔法の世界でもないあたりにほんわかできる。

かといってずっとほんわかしている話でもなく、住人同士の葛藤もあるし、事件が起こってラストの真相があってと物語の緩急のつけ方があるから一気に読み進めさせてくれる。

目次のページへ戻る

お伽話のように -ドルチェ・ヴィスタ-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2006.10/20再読)

どう言えば伝わるだろう。なんと言ったら解って貰えるだろう。

『お伽話のように』本文より

シリーズ第2巻。
1巻のあのラストのさらに後日談の3編を収録。

人と人とのつながりというのを丁寧に描いてるよな。
薬屋探偵もそうだけど、特にドルチェシリーズは。

2話の「幻日、残照」のオチが好き。
現実のように見せかけて…
けれども伏線から「ん?」と思わせておいて、あぁなるほどという展開がなんとも好き。

目次のページへ戻る

左手をつないで ドルチェ・ヴィスタ

高里椎奈
講談社ノベルス
(2006.10/21再読)

傷ついた人間、特に人に傷つけられた人間は、自分自身が癒されるよりも、誰かの力になれたと実感できたときに、本当に救われるんじゃないかと思う

『お伽話のように』本文より

ドルチェ・ヴィスタ最終巻。
6つの短編を経て最終話に至るときに辿りつく場所とは。

ドルチェ・ヴィスタってこういう話だったのか…

なぜ金寛があちらの世界へ行ってしまったのか。
あの世界はいったいなんだったのか。
一気に読んではじめてある程度理解できた気がする。

目次のページへ戻る

孤狼と月 フェンネル大陸偽王伝

高里椎奈
イラスト:ミギー
講談社ノベルス
(2008.7/8再読)

「知らないのなら知れば良い。知らなくて間違えたなら、知ってからやり直せば良い。沢山の事実を知って、見えていなかった真実を見据える。自分で考えて行動する。お前はもう、手を引かれて歩くだけの、目隠しの子供じゃない」

『孤狼と月 フェンネル大陸偽王伝』本文より

フェンネル大陸偽王伝1冊目の『孤狼と月』を再読。

ストライフ王国の王族であり、軍の指揮官でもあったフェンベルクが国外追放された先で見ることになる様々な真実。
それらは次第にフェンの心にある感情を抱かせていく。

偽王伝が完結し、真勇伝がはじまったいま読み返してみると、だいぶフェンの中の変化というものが読み取れた気がする。
フェンの根っこの部分にある優しさ。
そして無知ゆえのある種の閉塞感。

閉塞感って思えたのは当たり前を当たり前として受け止めていたこと。
自分から知ろうとしないと、意外と世界が拓けてこないもんだからなぁ。
はじめて自分から物事を知っていく楽しさを知り、今までの価値と比べて考えることをするようになる。

自分を終わらせようとしていた中盤から、異文化を知り、自分がどうあるべきか、どうしたいのかというがフェンの感情から汲み取れるようになってくると読んでるこちらも考えさせられる。
自分にはそれができているだろうか、ってね。

そんなフェンが元々持っていた優しさを根幹として、様々な国を回り、これから目指す世界がどんなものなのか。

それを予感させるためのプロローグこそがこの1巻だったと感じられました。

目次のページへ戻る

騎士の系譜 フェンネル大陸偽王伝

高里椎奈
イラスト:ミギー
講談社ノベルス
(2008.7/9再読)

汝は何ぞ。我は護る者。王とは何ぞ。民を守る者。民とは何ぞ。王を支える者。王を護るは何者ぞ。我ら、騎士なり。王に忠誠を誓う者なり。

『騎士の系譜 フェンネル大陸偽王伝』本文より

フェンネル大陸偽王伝2冊目の『騎士の系譜』を再読。
この話での騎士道には惚れるわ…

この巻から本編がスタートと言っても過言ではない。

ソルド王国という軍を持たない王政の国で起こる陰謀劇が描かれる。

主人公のフェンが軍を持たなくても平和を維持できる国に接し常識を覆されたりしながらも、新しい知識を柔軟に取り入れていく様に何か国を動かす資質を持っているように感じさせられるよなぁ。

こうやって異質で知らないものと出会うことに対しての好奇心ってのもこの巻あたりから発揮しだしているように思わせられる。

陰謀劇として見ても面白いんだけども、そういうフェンの成長として見ても面白い。
なによりも、理不尽な出来事に出会おうとも常に誰かの幸せを願いながら行動していこうとする様を見せてくれたことは特に見ものだったと思う。

目次のページへ戻る

虚空の王者 -フェンネル大陸偽王伝-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2005.6/11読了)

あらすじ
ストライフ王国の国王の末子であり王国において謀反人である
少女フェンベルクは、誘拐されたソルド8世王の手がかりを追って
300年間鎖国している極寒の国パラクレスへと入国する。
フェンはそこで8世王によく似た人物と遭遇する。

フェンネル大陸偽王伝の3巻。
薬屋探偵シリーズやドルチェ・ヴィスタシリーズを手がける
高里椎奈初の本格ファンタジー小説。

国を追われたフェンベルクが遭遇する様々な見知らぬ国々の思惑や謀略。
そうした国家の黒い部分とは対照的な新しい土地で出会う人々の温かさ。
そういったものに出会いながら彼女は旅を続けていく。
旅をする理由、フェンベルクの今の願いは世界中のことを見て廻ることだから。

ようやく3巻。
物語が動き始めたな、って感じだろうか。
薬屋シリーズやドルチェなどを読んでて
「この人がファンタジーの世界」を描いたらどうなるんだろう、
と思っていたらついに出ました。
いつもの高里テイスト(やさしく感じられる文体)で綴られるファンタジー世界。
こんな小説を待っていた人って結構多いのでは。

3巻を読み終わってふと思ったこと。
1巻2巻で何が起きたのは漠然と覚えていたけど、人物を数名忘れていました。
近々読み直す必要がありそうです。

目次のページへ戻る

闇と光の双翼 -フェンネル大陸偽王伝-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2005.11/10読了)

フェンネル大陸偽王伝第4巻
いつもの1.5倍くらいのページ数。

あらすじ

ソルド王国へ帰還したフェンたちは待っていたのは宗教大国シスタスによって引き起こされた戦火だった。
その戦いで逃げ遅れたという親友のロカを救うためにフェンたちは戦場へと赴くことに。

感想

フェンネル大陸はだんだんと色んな人の思惑が関わってくる話になってきたよなー。
登場人物を覚えるのに一苦労

今回の話、そして今後で注目するべきはやはりフェンが自分自身の主張として貫いてきたことを行動で表せるのかってところでしょう。

中でも「助けられる命は一つ残らず助けたいんだ」は名台詞だよなぁ

目次のページへ戻る

風牙天明 -フェンネル大陸偽王伝-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2006.1/14読了)

あらすじ
侵略を繰り返すシスタス。
シスタスに対抗するため国々が団結するための連合を作るためフェンたちは各国を駆け回る。
しかしその間もシスタスは侵攻を続けていた。
シスタスに対してフェンのとった行動とは!?

フェンネル大陸偽王伝第5巻。
ついにタイトルの「偽王」の謎が明らかに。


感想とか

表紙がコレで内容が「偽王」そのものだもんなぁ。
読み終わってから表紙をよく見ると…こういうことか!?

ついにフェンネル大陸の歴史にフェンの名前が出てきた瞬間という第5巻。
強国シスタスに抗うためにこれからただ純粋に平和を願うフェンがどう人々のいさかいに翻弄され、そしてどう決断していくかが楽しみ。

登場人物も大分増え、各キャラクターごとに微妙な接点なんかも出てきたりとかしてるのを見ると、サイドストーリーとか出そうだなぁとか期待してしまう。
あとがきでも「出すかも」というようなことを書いてますし。

11月に4巻が出て、2ヵ月後の1月に5巻。
次あたり高里さんの本は薬屋さんかなぁ。

目次のページへ戻る

雲の花嫁 -フェンネル大陸偽王伝-

高里椎奈
講談社ノベルス
(2006.11/20読了)

何処にいても天はあり、大地に境はない

『雲の花嫁』本文より

薬屋探偵の作者でもある高里椎奈が描くファンタジー、フェンネル大陸偽王伝6巻。

偽王を名乗ることで、大国シスタスに反逆したフェンたち。
その偽王としての名の重さや自らが成したい世界というのが見えてきたような巻だったなぁ。

少しずつ様々な国を巡っての旅から、色んな国の勢力や動向などをからめた群像劇の要素が増えてきた気がする。
けどまだまだ解かれない謎が多いような気がする。
シスタスが何故勢力を一気に拡大したかとか…。

目次のページへ戻る

終焉の詩 -フェンネル大陸偽王伝-

高里椎奈
イラスト:ミギー
講談社ノベルス
(2007.3/10読了)

王は人の上に立つものではないかもしれない。
では、王とは何処に在るものなのか

『終焉の詩』本文より

高里椎奈のフェンネル大陸偽王伝7巻「終焉の歌」。
西大陸編完結。

Σ 今月の講談社ノベルスは1冊だけかよっ。

とりあえず買ってきました。

5巻で「偽王」を名乗り、名前が広まり、人々に期待される人物となったフェン。
ついに彼女ら一行は「目的の場所」へ。

次から次へと懐かしい人物だったりが出てきてた。
確かに西大陸編完結編だ…。

けどまだ続きそうなところはたくさんあるし、本編終了後に新章スタートの予定ありとも書いてあった。

もう3年くらい続いてるシリーズになってたのか。
はじまったのはつい最近だと思ってたんだけどなぁ。
いつの間にやら7冊。
イラストのミギーさんも最近いろんなところで見るようになったし。
高里さんもそれまでは薬屋の人というイメージだったけど、今ではこのシリーズもあるし、漫画の原作からのだめのノベライズまでやるようになったし。
このフェンネル大陸偽王伝がはじまってから作者・イラストレーターともに有名になってきたよなー。

目次のページへ戻る

草原の勇者 -フェンネル大陸真勇伝-

高里椎奈
イラスト:ミギー
講談社ノベルス
(2008.1/17読了)

皆、不安なんだよ。今を変えたいのにどうしたら良いか知らなくて、燻って、悲しくて、でもそれは指針を得れば力になる。便乗じゃない。迷子になってた願いに勇者が進む向きと方法へ導いてあげてるんだ

『草原の勇者』本文より

「フェンネル大陸」第2部1巻。

思いのほかはやく第2部「真勇伝」が開始。
今巻は草原の国リムナンテスが舞台。

革命が起こる激動の国というこれまで以上にシビアな環境に遭遇するフェンたち。

国を動かすとはどういうことか?
上に立つものの資質など、今後フェンたちの前に立ちはだかりそうな展開が続出。

それと同時にフェンにしてもサチにしても自分たち自身の出自に関する問題も出てきたりしていたので、今後個人に焦点があたりつつも大きく大陸自体が動き出すような予感。

緊迫する展開でありながらも優しい物語であったので安心。
場合によってはものすごい禍根を残しながら1巻が終わるんじゃないかという予感もあったので余計に(笑

目次のページへ戻る

太陽と異端者 -フェンネル大陸真勇伝-

高里椎奈
イラスト:ミギー
講談社ノベルス
(2008.12/8読了)

「ここはグールだけが死ねない島だ。生き延びたくば頭を使い、この島から逃れる事だけを考えろ」

『太陽と異端者』本文より

フェンネル大陸真勇伝2巻目『太陽と異端者』。

フェンたちが次に向かったのはグールたちが住まう島。
海賊と嵐の影響でフェンはたったひとりグールたちが住まう「人喰いの島」へと流されてしまう。

偽王伝の最初も人間とグールの話からはじまった。
いったいどこに差があるというのか。
ただの風評から互いに敵対するのはあまりに醜いんじゃないか。

そういった考えをもったフェンだからこそ人望を得ていった。

だが、今回はグールたちの中に放り出されることになる。

なんてこったい、です。
初心に立ち返るだけじゃなく、今度は逆の立場にフェンを置くのかよ!?

これはあまりに予想外だった。

それにしても今回の話を読んでいて思ったのが、フェンは実に一貫した考えを持ってるよなぁ。
どんな立場にいても、彼女が心から望むものは変わらないよなぁ。

あとはグールが大きな役割を果たすだけに、フェンとテオの関係にもいろいろあったわけで。
そうだよなぁ。
よく考えたらフェンとテオについて深く掘り下げるってことは、これだけ長くシリーズが続いていても今までほとんどなかった。
そのことの方がちょっとびっくりだ(笑

目次のページへ戻る

小説 のだめカンタービレ

高里椎奈
原作:二ノ宮知子
脚本:衛藤凛
講談社
(2007.1/6読了)

でも僕はあいつのピアノが、すごく好きなんですよ

『小説 のだめカンタービレ』本文より

薬屋探偵妖綺談の高里椎奈による「のだめカンタービレ」のノベライズ。

なんですとっっ
今度はメフィスト賞作家の西尾維新に続き高里さんがノベライズっ!
しかも「のだめカンタービレ」かよっっ。

ぶっちゃけものすごく不安だった。
高里さんの本が大好きで、のだめも好きで。
けれども漫画は漫画のドラマはドラマのやり方があって。
そしてそれが必ずしも小説と結びつくとは限らないし。

そんなことを思っていたけれども、全然心配なんてする必要がなかった。
おもしろかった。
原作そのまんま。
内容がしっかりわかっててもおもしろかった。
頭の中でのだめも千秋もシュトレーゼマンも動き回ってた。
そんな感じだった。
ギャグもテンションも言い回しも違和感なかったし。
漫画にはない地の文にも笑わされた。

このノベライズはよかったんじゃないかな、と思った。

のだめに興味はあるけれども、少女漫画を読むのは苦手だ、という人には是非。

やっぱのだめ好きやわ。

目次のページへ戻る

小説 レッド・クリフ 上

高里椎奈
脚本:ジョン・ウー/カン・チャン/コー・ジェン/シン・ハーユ
講談社
(2008.10/7読了)

戦わない世界の為に、私達は戦うのです

『小説 レッド・クリフ 上』本文より

ジョン・ウー監督の『レッド・クリフ』を『薬屋探偵妖綺談』の高里椎奈がノベライズ。
ってなにやってるんですか高里椎奈さん(笑
まさか三国志の映画のノベライズで見かけることになるとは。

たしかに、薬屋さんの中でも多くの故事成語を使ったりしているだけに、ある意味あっているのか。
それに加えて近年の『フェンネル大陸』シリーズでも多くの名戦闘シーンを描いただけにいい抜擢なのかも。

「レッド・クリフ」=「赤壁」。
えぇまさにあの「赤壁の戦い」の映像化です。

魏の曹操に対抗するため、呉の孫権と蜀の劉備が手を結び、軍師である呉の周瑜と蜀の孔明が策をめぐらしていく。
また、戦地に赴く彼らの国や忠誠心、また彼らの妻達の戦いも描かれる。
それだけにキャラクターたちの心の描写をメインにストーリーは進んでいく。

映画化を聞いたときは「赤壁」だけかよっ、と思ったもんだけどこういう描き方もあるのか。

さて下巻ではいよいよ戦闘という内容なので、楽しみだ。

三国志にはじめて触れる人でもOKな内容だったので、三国志ファンならずとも楽しめそうな内容でした。

目次のページへ戻る

小説 レッド・クリフ 下

高里椎奈
脚本:ジョン・ウー/カン・チャン/コー・ジェン/シン・ハーユ
講談社
(2009.3/19読了)

「周楡。認めたくはないが、今回はお前にまんまと騙された」
月に語りかけるように、曹操が呟く。川に向かって風が吹き、彼の裳の裾が乾いた音をさせてはためく。唇を引き結んで対岸を見据え、曹操は身を翻した。
「三日以内に全軍、川を渡り、赤壁に総攻撃を仕掛ける!」
遂に、最後の命令が下された。

『小説 レッド・クリフ 下』本文より

高里椎奈による映画『レッドクリフ』のノベライズ下巻。

いよいよ赤壁の戦い。
策略と策略がぶつかりあい、友情や愛情も戦いを通して育まれていく中で赤壁へと突入していく様が見事だ。

確かにレッドクリフはアクションが見ものだが、心の葛藤も十分に面白いじゃないか。
特に下巻では女性陣の内面が多く描かれており、物語も女性達の動きによってある場所では悲劇に、ある場所では男性人に決意を促していく。

こういう描き方は小説版ならではなのかもしれない。
でも脚本をベースにしているわけだから、これを読んでからだと映画の「PART2」をより楽しめそうな気がする。

目次のページへ戻る

inserted by FC2 system