感想のページ 作者「つ」

凍りのくじら

辻村深月
講談社ノベルス
(2005.11/9読了)

藤子・F・不二雄を人生の目標にかかげる父が失踪してから5年。
病気の母親と二人で暮らしている理帆子。
彼女は世界を冷めた目で見ながら生きていた。
そんな理帆子のSukosiFuhaiな元彼氏が日常を少しずつ狂わせていく…

SukosiFusigiな物語。

感想

辻村深月この3作目で大化けしたかもしれない……

友情と愛情と親子の物語。
けれどもそれは決して爽やかなものじゃなく、いつ毀れてもおかしくない儚い関係。
それに"ドラえもん"というスパイスが加わってより美味しくなってます。

お互いに意思疎通が完璧にできているなんて人はいない。
だからといってお互いがお互いを理解できるように努力に努力を重ねるなんてことはきっとしないだろう。
どこかで妥協する点があったり、相手を認めたりする終止符がどこかにあるもんだと思う。
でもそれらを探して頭の中をぐるぐると回転させたあげく迷走する。
けどそれでいいんじゃない。
楽しめたモン勝ちなんだよ、うん。
少なくとも人を"こんな人"っていうラベルをつけてしまって付き合うよりはいいと思う。
と言いつつ間違いなくやってるよなぁ。


読んで思わずドラえもんを読みたくなった(笑

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スロウハイツの神様 上

辻村深月
講談社ノベルス
(2007.1/23読了)

チヨダ・コーキの小説のせいで人が死んだ

辻村深月『スロウハイツの神様 上』本文より

辻村深月の5作目。

本を読む人なら、誰もが経験する「~の本の所為で事件が起こった」そんな類の事件。
でも読んでる人からすれば絶対にそんなことはないし、それを報道してるメディアに対して違和感を覚えたり嫌悪感を抱いたりする。

まさにそんなことを小説で読むことになるとは。
そのきっかけとされた作家と作家のまわりに集まるクリエイターたちの話。
まるでトキワ荘のような。

メディアに対する不信感や盗作疑惑など、本にまつわる話が次から次へと出てくるのが面白い。

さて、次は「スロウハイツの神様」下巻。

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スロウハイツの神様 下

辻村深月
講談社ノベルス
(2007.1/25読了)

あれだけ求めたきた、小説にできること、その可能性。その欠片を見たように想った。

辻村深月『スロウハイツの神様 下』本文より

「スロウハイツの神様」下巻。

小説家チヨダ・コーキの小説が人を殺したと騒がれた事件。
それからの長い年月。
再び作家として復帰してからの様々なクリエイターが一つ屋根の下で行った共同生活。

登場人物の誰もが自分の作品、作るものに対して悩み、道をふさがれ、それでも進んで。
人と人との関係に悩んで決断して。

そんな一人一人のエピソードが次第にひとつの終着点へと向かって伏線を回収していく流れが見事。

いい青春小説を読めたなぁと思う。

みんなが集まって、そして楽しい共同生活も終わりを迎える。

そのあとのエピローグがすごい読んでて心地よかった。
登場人物たちがあのチヨダ・コーキを中心とした共同生活の中でなにを感じ、どう自分と向き合っていったか。
彼らのあとが見れたことがなによりよかった。

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僕のメジャースプーン

辻村深月
講談社ノベルス
(2006.4/14読了)

あらすじ
ぼくの幼馴染のふみちゃんが登校拒否になってしまった。
原因は学校でふみちゃんが可愛がっていたうさぎが惨殺してしまったからだった。
しかし、犯人は捕まるもそれほど重い罪には課せられないという。
ふみちゃんのためにぼくは犯人に対して罰を与えようとする。

感想

罪と罰。
人間を殺すと重い罪になるが、動物を殺してもたいした罪にはならない。
じゃあどんな罪ならば、いいのか。
相応の刑を自由に執行できてしまう可能性を秘めている能力を持った「ぼく」が主人公というのがおもしろい。

事件があったことを忘れてしまえばいいのか、被害者と同じような目にあわしてしまうのか、それとも…

そんなことを読みながら考えさせられた。

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