感想のページ 作者「な」
39 刑法第三十九条
永井泰宇角川文庫
(2007.4/21読了)
刑法第三十九条
永井泰宇『39 刑法第三十九条』本文より
心神喪失者の行為はこれを罰しない。
2心身耗弱者の行為は、その刑を軽減する。
永井泰宇の「39」1作目。
妊婦とその夫を惨殺する事件が発生。
裁判にて被告がおかしな行動をとったため、精神鑑定に移すが…
事件自体は冒頭の50Pで終わる。
そのあとに延々と精神鑑定の様子や被告の過去をめぐる物語へと進む。
読後に刑法第三十九条のあり方についても色々と考えさせられたし、裁判の進め方、精神鑑定の方法からどうやって証拠として提出されるのかなど、「へぇ」と思うところもあった。
物語としてどうこうというよりも、よく聞く「心神喪失者」とは?「精神鑑定」の意義ってなんなのか、はたしてこのままでいいのか。
そんなことを考えさせるために一般の読者に対して突きつけてきた作品だったように思った。
難解な刑法についてやよく分からない単語の羅列などがないためかなり読みやすかった。
そこはさすがに刑法や司法についてよく知った上で誰が読んでも理解できるようにしてくれたんだろうなぁ。
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宇宙捕鯨船バッカス
中島望ハルキノベルス
(2005.9/5読了)
21世紀末。
第三次世界大戦によって汚染された地球。
そして遠い別の惑星から来た異星人の出現によって驚異的なスピードで発達する科学。
人類にはそうしなければいけない理由があった。
もはや地球の中だけでは地球に住む人類を養うことはできなくなっていた。
未来に希望を見出せずにいた少年沖田正午は地球へとつかの間の急速をとりに来た少女との出会いをきっかけに宇宙へ行きたいと願うようになた。
中島望がSF!?
格闘小説じゃなくて?
というのが第一印象。
世界設定もこだわっているところが多々見られて満足。
単純におもしろい。
宇宙船同士の戦闘も、命を賭けたはじめての闘い、意外に感情的な女性型アンドロイド、船内でのドタバタ、宇宙に行くまでの葛藤。
問題点としては、伏線これだけ張ってるんだから次も出るに違いないという確信がないこと。
出て欲しい。
是非。
今回の中島望の小説には今のところ不幸なヒロインは出てきてませんw
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ランデヴーは危険がいっぱい
宇宙捕鯨船バッカス
中島望ハルキノベルス
(2006.4/4読了)
海賊船、人間を襲う謎の怪生物、そして全長300Mもある巨大な鯨との戦い。
捕鯨船に乗り込んだ沖田正午を待ち受けるいくつもの命の危機とは。
宇宙捕鯨船バッカス第2巻。
まさか2巻が出るとは思わなかった。
しかも伏線が出てきたり、登場人物が増えたりだとか。
どうやらまだ続くみたい。
1巻の時にはあんまり感じなかったけど「中島色」が随分強くなってきたような。
特に怪物ベレムノーズの描写とか…いわゆる残虐シーンでの表現方法が…
1巻のときに萌え方向へシフトしたか!?とも思ったけど、今までの中島小説でした。
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ベテルギウス決死圏
宇宙捕鯨船バッカス
中島望ハルキノベルス
(2006.10/2読了)
身を守るためなら人を殺す覚悟もできているつもりだった
中島望『ベテルギウス決死圏』本文より
宇宙捕鯨船バッカス第3巻。
最終巻。
最終巻のはずなんだけど、確かにバッカスの物語の終着点へは無事着陸した。
けど……けどなぁ。
宇宙のあまりに壮大な恐怖というか、自然の恐ろしさってのは常に描かれている。
そしてその中で人間が生きなきゃいけないという過酷さは健在。
中島作品ではめずらしい萌え要素があったりしますが、それはそれ。
やっぱり作品自体の持つ強さこそが魅力なんだろな。
最終巻だったわけですがラスボスが急に現れて、航海の目的も達成という展開がまるでご都合主義のように思えてしまうのがちょっと残念。
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クラムボン殺し
中島望講談社ノベルス
(2006.10/9読了)
クラムボンが何なのかを、読んでいるみんなに考えてほしかったのかもしれませんね
中島望『クラムボン殺し』本文より
第10回メフィスト賞受賞者"中島望"によるミステリ小説。
格闘もの、SFと来て10作目にしてついにミステリへ。
…"人形はひとりぼっち"もミステリといえばミステリなのかもしれないけど。
舞台は小学校、"ケンちゃん"がひき起こす見立て殺人と主人公の住む地域で起こっている眼球抜き連続殺人の真相とは。
ミステリだなぁ。
けど主人公の女性の視線恐怖症の原因となったものをいかに克服していくか、というテーマの方が強い。
中島望の小説の中でいろんなキャラクターが魅せた強さのようなものを、残虐な事件の経過と対決を通して見せてくれたような気がする。
どうでもいいネタバレ
いくら小学校とはいえ…
確かにおもしろいけれども…
蘇部健一の「ふつうの学校」は学級文庫には入れないだろ、と思わずツッコン人は他にもいるはず(笑
実際どうなんだろう。
教育関係者の人に聞いてみたいところです。
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一角獣幻想 ユニコーンナイトメア
中島望講談社ノベルス
(2009.3/20読了)
「愛しているよ」
『一角獣幻想』収録『終わりなき夏』本文より
「永遠に?」
彼は内心でうんざりした。
永遠にこの女を愛し続けられるかなんて、わかるわけがない。
中島望のホラー短編集。
…中島望がホラーだって!?
おいおい、なんの冗談だ(笑
バイオレンスな意味でホラーってのなら分かるが。
そう思って読んでみるとホラーだった。
著者は子供をテーマにしたホラーだと書いているが、確かにそうだ。
それも子供の純真さを逆手に取るようなホラーが多かった。
もうなんだかイヤなもん読んでしまったなぁ。
斬新な新しさでもないし、むしろ古典的なものだと思う。
そしてどの話も生理的にイヤなものが詰まっている。
そういえば中島望のルシフェルの1作目あとがきで塾の講師をしているという記述があったように記憶している。
そういう経験もあったのだろう。
子供に接しているという経験があるからこそ、中島望の描く作中の子供の視点に納得できてしまう。
そんな短編ばっかりでした。
格闘ものの後はSF、そしてミステリ。
今度はホラー。
次は一体どこに行く気だろう。
個人的にはまたSFを書いて欲しいもんです。
バッカスは素直に面白いと思ってます。
収録話
・ 「花いちもんめ」
・ 「一角獣幻想」
・ 「終わりなき夏」
・ 「敗北」
・ 「母願う」
・ 「方舟荘殺人事件」
・ 「卵生少女」
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曲矢さんのエア彼氏 木村くんのエア彼女
中村九郎イラスト:うき
ガガガ文庫
(2009.3/23読了)
「曲矢、いや、師匠っ」
『曲矢さんのエア彼氏』本文より
「木村くん? どうしました?」
「俺にエアを教えてくれ、俺はエア彼女が欲しいんだっ」
曲矢はゆっくりと瞬きした。
そしてやはりゆっくりと、真っ直ぐに、俺に向かって右手を差し出した。
「本気なんですね、目を見ればわかりますよ……木村」
目に付いたタイトルなので購入。
エア彼女/彼氏の痛々しさを描かれているので、もう目も当てられない。
そうそうこういうのが読みたかった。
エア彼女獲得を目指して周囲の視線にも耐えるシーンがなんとも(笑
これって脳内じゃなくて「エア」なところが余計に痛いです。
もう最低です(褒め言葉
と実にライトノベルっぽい設定と妄想に付き合うっていると次第に本が醸しだす空気が変わっていく。
ええっ。
えええええーー。
ちょっと待て。
こんな展開かっ。
おいおい冗談だろ。
痛々しさで通していくかと思いきや、そんなところに着地すんの、すっげぇヽ(゚∀゚)ノ
かるーく読もうかと思っていたら、意外なほどにいい本に出会えたのかもしれん。
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ズッコケ中年三人組
那須正幹ポプラ社
(2006.2/22読了)
ハチベエ、ハカセ、モーちゃんのあの三人組が帰ってきた。
1978年に彼らが生まれてから、もし年を重ねていったら…すでに四十歳である。
現代に生きる40歳の彼らはどんな生活をしているのだろうか
オマケで表紙裏にズッコケシリーズ全50巻の表紙画像付。
22巻までは読んでました。
強烈に印象に残ってるのは「時間漂流記」。
ズッコケ三人組に十数年ぶりに再会しました。
ただ、彼らは年をとっていましたがw
現代に生きる彼らはいかにもベテラン社会人。
世の中が決して楽しいことや幸せなことばっかりではないことを身にしみて痛感している。
けれども、彼らは小学校6年の時からの面影があったし、なによりも彼らそのままだった。
自分たちの経験したことはずっと、それがその人自身の糧になっていくんだよなぁ。
なにも物語りに限ったことじゃなくてね。