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地獄の奇術師

二階堂黎人
講談社文庫
(2006.8/29読了)

二階堂蘭子シリーズ1作目。

時は昭和42年。
暗躍する怪人。
凄惨な殺人事件。
殺人予告。
三重密室。
女子高生探偵。

えらく懐かしい。
まるで冒険小説のような。

探偵二階堂蘭子と黎人は少年探偵団のようだなぁ。
事件の雰囲気も江戸川乱歩さながら。
そう、なんていうか"昭和のあの時代"という感じだし。
事件も三重密室を取り扱うなど魅力的。

これでもか、とでてくるミステリに関する脚注にもミステリに対する愛を感じるなぁ。

なんというか「雰囲気にしてやられた」(笑

 

さぁこれからあのあまりに長すぎるという「人狼城」に向かって頑張るか。

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聖アウスラ修道院の惨劇

二階堂黎人
講談社文庫
(2006.8/29読了)

二階堂蘭子シリーズ2作目。

外界から切り離されたような修道院で起きるいくつもの惨劇。
それらはヨハネ黙示録になぞらえられたものだった。

1作目に続いて再びキリスト教をテーマの一つにした蘭子シリーズ2作目。
不可思議な暗号。
奇妙なシスターたち。
見立て殺人。
サバト。

雰囲気抜群すぎだ…
そして事件が解明されたあと、事件のさらに奥に隠された真相に至るとこなんてもう!

密室や殺人事件の謎を解く以上に、修道院で起こっていた処々に配置された違和感の解決とすさまじい結末は、もうスゴイの一言に尽きる。

3作目以降も楽しめるといいんだけど。
とりあえず次は「吸血の家」を読む前に短編集にでも行こうかな。

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吸血の家
House of blood suckers

二階堂黎人
講談社文庫
(2006.9/13読了)

二階堂蘭子シリーズ。
文庫では3作目。

遊郭を営む旧家で起きた惨劇と呪いの殺人予告。
決して幸せにはならない血筋の美人姉妹たち。
怪しげな降霊儀式。
そして起こった事件には足跡がない密室状況。

あーもう雰囲気は相変わらず抜群。
トリック自体も使い古されたようなものだけれども、こう来るか!という内容だったので満足です。

あとは「悪霊の館」さえクリアすればようやく人狼城~

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悪霊の館
Palace of evil spirits

二階堂黎人
講談社文庫
(2006.9/16読了)

二階堂蘭子シリーズ第4作目。
だんだん分厚くなっていく、ついに今回は800Pを突破!
まだ次の極厚が残っているからこんなのなんて序の口なのかもしれないけど(笑

今までのシリーズでもっとも猟奇的で驚愕的な話だった…

最初の事件からして4体の甲冑に守られ、さらに魔術的な記号の上に死体があり周りを囲む本で囲まれていた。
しかも死体は全裸、ただし首と両手両足の指はすべて切断されていた、って…。
なぜ死体をこんなに面倒な方法で発見させなければいけなかったのか。

次々に起こる殺人事件と背後にある館の歴史やらを経てあまりに驚愕なラストはすげぇな…と。

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人狼城の恐怖 Dei Furcht in der Burg des Werwolfs
第一部=ドイツ編 Erster Teil:Deutschland

二階堂黎人
講談社文庫
(2006.9/20読了)

……ま、満月……今日は、満月だった……

『人狼城の恐怖 第一部=ドイツ編』本文より

二階堂蘭子シリーズ第5弾。
第一部。
世界最長の本格ミステリ問題編。

ハーメルンの笛吹き男伝説からはじまり、狼男伝説。
人里離れた城で起こる惨劇。
無作為に選ばれたはずの人間が次から次へと不可解な死に方をしていく。
動き出す甲冑。
外には逃げられない。
逃げられるのは断崖絶壁から飛び降りることのみ。

ぐは。
おもしれー。
探偵二階堂蘭子は出てこない。
だからこそ余計な推測なども出ず、ひたすらその惨劇を目撃することになるのは面白い。
ミステリとしてヒントをいくら出されようとも探偵はヒントすらくれない、という状態なわけか。

これで第一部最初の650ページを突破。
次は第二部「フランス編」。

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人狼城の恐怖 La Terreur en Chateau du Loup-garou
第二部=フランス編 La Second Partie;France

二階堂黎人
講談社文庫
(2006.9/20読了)

どうして、僕らは、こんな目に遭わなくてはならないのだ

『人狼城の恐怖 第二部=フランス編』本文より

人狼城の恐怖第二部。
問題編その2。

ドイツの人狼城の崖を挟んだ向かい側にあるフランスの人狼城での惨劇。

ロンギヌスの槍、ナチスドイツが開発した脅威の兵器。
そんなものを背景におきながらこちらの事件は進んでいく。

一人また一人といなくなっていく事態に対峙し、徐々に追い込まれていく感じがぞくぞくさせてくれるなぁ。

問題編の中でいくつかの謎は解かれたけれどもまだまだ謎が残っている。
ここから残り2冊でどんな真相が明らかにされるのかが楽しみ。

人狼城の恐怖第二部までで1350p突破。
残り半分!

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人狼城の恐怖 Dei Furcht in der Burg des Werwolfs
第三部=探偵編 Dritte Teil;Detektiv

二階堂黎人
講談社文庫
(2006.9/25読了)

決まっているじゃありませんか。行き先は《人狼城》ですよ

『人狼城の恐怖 第三部=探偵編』本文より

人狼城の恐怖第三部。
折り返し点もすぎ残るは完結編を残すのみ。

ようやく第三部にして二階堂蘭子の登場。
なぜヨーロッパはドイツまで行くことになったのか。
なぜ事件に関わることになったのか。

事件に関わることで"人狼城の外"でも惨劇が起こっていることが発覚していき、さらに事件は大きくなっていく。

事件は起こった。
しかしその舞台が見つからない。

だが第三部の最後でーーーー。
ここで終わりかよっ、ってとこで終わってしまった。

次ー次ー

第三部までで1900ページほど。
残り4分の1!
しかし長いな(笑
おもしろいけど。

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人狼城の恐怖 La Terreur en Chateau du Loup-garou
第四部=完結編 La Quatrieme Partie;Accomplissement

二階堂黎人
講談社文庫
(2006.9/27読了)

おお、そうだとも。私こそが、君たちの探している《人狼城》の城主だよ

『人狼城の恐怖 第四部=完結編』本文より

城主の登場シーンがめっちゃカコエエ…

二階堂蘭子シリーズ5作目。
世界最長ミステリ、完結編の第四部。

読み終わってから分かる。
表紙のすごさが…
あぁこういうことだったのか。
目玉の描き方もなんとも素敵だ。

ドイツの人狼城、そしてフランスの人狼城での大量虐殺。
そして、バックグラウンドのハーメルンの笛吹き男伝説、ナチスドイツが行っていた実験の数々。
それらの着地点が旧ドイツが残した実験の延長か…

大量虐殺のトリックは………
確かに一連の推理によると可能だ。
けど……なんか想像の斜め上を飛び越えて行ったような感じがする。
でもお見事でした。

人狼城を読み終わったので、これで世界最長本格ミステリ読了のホルダーをゲット(笑
文庫約2500P超。
読了後だからこそ思うんだけど、
長いから無駄な部分が多いわけじゃなく、それほど無駄な部分がなくてこの長さなんだから驚異的だよなぁ。

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悪魔のラビリンス

二階堂黎人
講談社文庫
(2006.9/17読了)

二階堂蘭子シリーズ6作目。
ラビリンスサーガ1作目。

中篇2作で構成されてます。

人狼城で姿を消した蘭子。
その間に助手の黎人がやるべきことは忘備録から昔の事件を出してきて執筆すること。

さてラビリンスサーガ1作目。
これまでとは打って変わって犯人はすべて「魔王ラビリンス」という怪人。
関わる事件にすべて彼(彼女?)が関わっている。
そんな名探偵vs怪人を描いている。

ラビリンスの異常さってのはよく分かるんだけど事件は…
これまでがものすごい事件だったりしていたものだから、なんだかその幕開けとしてはなぁ。
ラビリンス・サーガの2作目「魔術王事件」はものすごい分厚さだっただけにきっとすごい事件であることを期待しよう。

とりあえず人狼城読めよ >自分

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魔術王事件

二階堂黎人
講談社ノベルス
(2007.5/21読了)

つまり、恋慕・嫉妬・憎悪・復讐の四つが、人を犯罪へと走らせる最も重い動機とされているわけです。

『魔術王事件』本文より

二階堂蘭子シリーズ7作目。
ようやく最新作まで追いついた。

ラビリンス・サーガ2作目『魔術王事件』。

あのラビリンス、そして今回の敵「魔術王」。
絶対に逃げられない場所から消えうせ、誰にも盗めないはずの宝石を盗み、大量の虐殺さえ行う殺人鬼であり、仮面の奇術師。

今はもうこのような名探偵の確固たる敵などは現代のミステリにおいてはなかなかいないだろう。
いたとしてもなんか珍奇な奴になってしまいがちな気がする。

でもなんか二階堂蘭子シリーズだと全然OKなんだよなぁ。
血なまぐさくも情緒あるあの懐かしい古典的で怪奇的なミステリの雰囲気を作ってるシリーズだし。

壮大な名探偵と怪人の対決であり、殺人鬼ラビリンスとの本格的な戦いの幕開けであり、この「魔術王事件」と対になる「双面獣事件」の伏線であり、今後のシリーズの行き先を示したシリーズの中でも重要な作品になっていたと思う。

でも長いよ orz
人狼城のときもそうだったけど(笑
今回は新書で800P弱。
人狼城に比べればこれくらいなんでもないけど(苦笑

次の「双面獣事件」が非常に楽しみになる1冊だった。

ディケンズ「エドウィン・ドルードの謎」の話を知らなかっただけに驚きが減ったことが残念。

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双面獣事件

二階堂黎人
講談社ノベルス
(2008.5/29読了)

「究極の悪は常に究極の悪でしかない。家畜のように飼い慣らすことなど、絶対にできないのだ!」

『双面獣事件』本文より

二階堂黎人のラビリンス・サーガ3作目『双面獣事件』。
前作『魔術王事件』と対になる事件。

二階堂蘭子のシリーズを読み続けていてキャラクターにも愛着を持つ人にとってはもはやテンションあがりっぱなしなんじゃないだろうか(笑
ついにあのラビリンスの尻尾が見え始める。
そしてラビリンスがなにを成そうとしているのかも。

次だな。
今回あそこまで描いてしまったらから、おそらく次あたりがラビリンスとの最終的な対決になるはず。
もうそれが楽しみでならない。

目から光線を出し人を焼き、怪力のような力で人をねじ伏せ、吐く息は毒ガスという二つの顔を持ち四つの腕を持つ不気味な生命体「双面獣」。
その「双面獣」によって滅ぼされた村があり、それにあの蘭子を苦しめた犯罪者ラビリンスが絡んでいる。

名探偵vs魔獣という怪奇ものであり、冒険もの。
蘭子シリーズの1作であるために当然古きよき名探偵たちの冒険ものかのような本だった。

この決死の覚悟で怪物という怪奇現象に挑んでいく様がハラハラドキドキもの。
それがまた懐かしい感覚だった(笑
子供の頃に読んだ冒険ものってこんなだったよなぁ、と。
そんな大人でも楽しめる冒険ものかと思います。

あと『魔術王事件』は先に読んでおいたほうがいいかと思う。
というのも2つが対を成す事件でもあるのだけれども、『双面獣事件』を先に読むと『魔術王事件』の楽しみがちょっと減ってしまうような気もするんで。

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ユリ迷宮
Labyrinth of Lilies

二階堂黎人
講談社文庫
(2006.9/7読了)

二階堂蘭子シリーズの短編集。

短編二つに中篇一つ。

短編になるとより作家の個性が出るというが…
二階堂黎人という作家は「今があるのは昔の本があるから」というような、昔の古典を大事にしているんだろうなぁ。

雰囲気や謎の提示、名探偵の推理方法。
目新しいものは特にない。
でもどこかで見たようで見たことのないものばっかり。

そんなに古典ミステリを読んでるわけではないけれどもなぜか懐かしさを感じる。

短編一つ目の館が消失する「ロシア館の謎」はかなり好き。

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バラ迷宮
Labyrinth of Roses

二階堂黎人
講談社文庫
(2006.9/8読了)

二階堂蘭子シリーズの短編集第2弾。

人体発火や皮剥ぎといった残虐な事件を扱っているけれども
残虐性じゃなくて二階堂黎人が書くと怪しげな事件になるよなぁ。
犯人がいる!じゃなくてまるで人でないモノが存在するかのような。

ノスタルジックでトリッキィな展開がない正統派なだけに安心して読めるシリーズのような気がする。
この蘭子シリーズは。

あとは「吸血の家」「悪霊の館」を読んだらついに「人狼城」だな。
楽しみ。

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ADD 喪せし機械のバラード

仁木健
イラスト:椋本夏夜
角川スニーカー文庫
(2006.7/8読了)

本編5巻。

アイの二重人格だった"リン"が分離され新たな体を手に入れ帰ってきた。

 

……読んだはずなのに内容をさっぱり覚えてないーーーー。
多分3章の内容が濃すぎた。
最先端の用語がいっぱい並んでたしなぁ。
絶対領域しかり、ツンデレしかり。
3章を読んだだけでオタク学最先端とは現在どのようになっていてなにがブームなのかが分かるのではないだろうか(笑

内容?
内容は好きですよ。
異能力しかり、人間と機械の境界しかり。

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ADD 怒れる機械のプレリュード

仁木健
イラスト:椋本夏夜
角川スニーカー文庫
(2006.10/22読了)

うお、マジ?こんなにカワイイ娘がパートナー?フラグだ、これは絶対フラグだ!いよっしゃあ!

仁木健『ADD 怒れる機械のプレリュード』本文より

ADD6巻。

相変わらず前半部分の萌えとマニアックな作者の趣味趣向が伺えるところがスバラシイ(笑

クライマックスが近づいてきたようなので展開はシリアス風味。
なのに…あのシリアス下にあってあのキスシーンはぁぁぁぁ。
あのシチュエーションであの会話は反則だろっっっ(笑
証文って証文って

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ADD 滅びゆく機械のソナタ

仁木健
イラスト:椋本夏夜
角川スニーカー文庫
(2007.4/11読了)

……今、リンがこう言いました。『だけどさ、これってある意味、これ以上ないくらい完璧な死亡フラグってやつだよね』だそうです。

仁木健『ADD 滅びゆく機械のソナタ』本文より

Add最終巻。

「私に心を売ってくれ」
脳を制御することで技術力を高め、飢えた子供たちを救おうとする者を止めるため最後の戦いへとコウたちは向かう。

ついに最終巻ですよっ。

機械と人間の狭間で苦悩していた主人公たち。
心とはなんなのか。
本当にそれは機械の自分たちに存在するのかというテーマに取り組んでいたADDシリーズ。

果たして最後まで「愛している」ということが分からないままなのか。

好きと愛しているの差が分からないと悩む姿すら人間的だ(笑

漫画喫茶で覚えた名台詞たちを引用して自分たちの行動に当てはめていくという行動もたくさん見られたが、それすらも人間くさいんだよなぁ。
機械が虚構を現実に引用することで、自らの存在の滑稽さを表そうとするんだけれどもそれが人間らしく見えてしまう。

でも人間でも14歳という年齢を考えたら、自分の存在理由が疑わしく思えて仕方ない時期だったような気がする。
実はそれはかなりリアルな考えなのかもしれない(笑

ラストもなるほどなぁ、こう来たか、と納得。

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黒の貴婦人
The Lady in Black

西澤保彦
幻冬舎文庫
(2005.12/1読了)

タックシリーズ第3短編集。
飲んで議論して議論して何でもない謎からとんでもない解決へ至ってしまう人気シリーズ。

招かれざる死者
ささやかに開かれた飲み会の部屋のチャイムが鳴り、ドアを開けると死体が倒れこんできた。

動機に((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル
現代だからこそ納得してしまうことがもっと嫌

黒の貴婦人
先着5名だけが食べることが出来る鯖寿司。
鯖寿司を先着5名で食べられる店は二つ。
ボアン先輩たちはランダムでこれらの店に行っていたのだが毎回見かける人物がいた。
通称「白い貴婦人」。
彼女はなぜ毎回ボアン先輩たちの前に現れるのか。
そしてなぜそこまでして鯖寿司を食べなければならないのか。

シリーズをずっと追いかけている人必見。
"たかが"と思えるのは他人だけ。
その人にとっては何物にも変えられないことだったりするんだよなぁ。
なぜ「黒い貴婦人」というタイトルなのかを考えるのも非常におもしろい。

スプリット・イメージ
四人の女子大生だけで行く都会からずっと離れた地にある別荘への旅行。
別荘の近くで男の刺殺体が発見される。彼は4人の知っている人だった。
なぜ彼がここに?そして別荘の2階へとたてかけられた脚立はなぜそこになければなかったのか。

この本の中の唯一の中篇。
人間関係黒ッ。
動機あってのトリックだよなぁ。

ジャケットの地図
会長の愛人のような立場で会長秘書をやっていた女性。
会長が残したというジャケットにあるという"宝物の地図"。
しかしそんなものは存在せず…
会長が遺したジャケットに残された痕跡をたどって行くとそこには...

死者が遺す意味深な言葉と残された人への想い。
ため息とか出てしまうな…

夜空の向こう側
ご祝儀袋に残された謎とボアン先輩、ウサコから見たタック&タカチの関係。
大学卒業後のエピソード。

タックシリーズのファン必見エピソードその2。
御祝儀袋の方も後味は相変わらず(笑

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人形幻戯 神麻嗣子の超能力事件簿

西澤保彦
講談社ノベルス
(2005.8/19読了)

神麻嗣子の超能力事件簿シリーズ6冊目。
第3短編集。
収録短編は
・不測の死体
・墜落する思慕
・おもいでの行方
・彼女が輪廻を止める理由
・人形幻戯
・怨の駆動体

このシリーズは「チョーモンイン」こと「超能力者問題秘密対策委員」の出張相談員たちが
不正に超能力を犯罪に用いた人を摘発していくというものである。
超能力が「ある」世界におけるミステリと単純に考えてOK。

さて、6冊目にして神麻さんや響子ちゃんらチョーモンインのエージェントに怪しげな動きが出てきました。
そもそもチョーモンインという機関は一体なんなのか。
薄れていく記憶の理由はどこにあるのか。
そして主人公のはずの保科さんの影がどんどん薄くなっていく(ぇ

西澤作品のほとんどに言えて、やっぱりこの短編集にもいえるんですが、後味が…。
犯行動機に妙なリアリティがあるというか、人の人に対する愛や憎しみっていうのは
表と裏、非常に近い関係にある感情だよなぁ。

次のチョーモンインの文庫落ちは大分後になる。
7冊目は新書の方で読むことになるかもしれないな。

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生贄を抱く夜 神麻嗣子の超能力事件簿

西澤保彦
講談社ノベルス
(2006.12/14読了)

判ります、判りますとも。愛しいひとが頑張っているのを遠めに見守りながら自分も頑張る、これこそが青春でなくて、なんでありましょうや

『生贄を抱く夜』本文より

チョーモンイン7冊目。
8巻「ソフトタッチ・オペレーション」出てるのにあえてこっち。

最後の1編がなかったら終始どよーん、という空気が漂うことになったんだろうなぁ。
西澤保彦の大半のものがそうなんだけれども(笑

今回は主要メンバーでなく、いつものメンバーは完全に脇役。
巻き込まれてしまう当事者たちが主役。

特に「殺し合い」のもうどうしようないラストと「動く刺青」のあまりに意外な超能力の使い方に驚愕。

ミステリにしてはかわいいイラストなのに、どろどろのリアルな人間関係と超能力によって引き起こされる意外な謎解きにどっぷり浸かってから数年。
ついに文庫派から新書派に乗り換えてしまった。

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神のロジック 人間のマジック
Logic of God is Magic of Human

西澤保彦
文春文庫
(2006.9/9読了)

10~12歳の様々な国の子供たちが集められた学校。
なぜ集められたのか。
ここはどこなのか。
学校で行われているのは解答が一つではない「犯人当てクイズ」。
外界から閉ざされたこの施設の存在理由とは。

前半は淡々と学校での生活が描かれる。
そして転校生がやってきてから急転直下怒涛の展開。

あの淡々とした学校生活の中であれだけの伏線を張っていたとは。

なによりも驚愕だったのが犯人が存在しない。トリック自体が現象というところ。
これはすごいわ…

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夏の夜会

西澤保彦
光文社文庫
(2005.6/17読了)

小学校の同窓会に出た「おれ」は当時の仲間と共に昔話に花を咲かせた。
その中に30年前の夏休み、小学校で起きた事件についての話があった。
その時に殺された鬼ババアと生徒から呼ばれていた女の先生。
彼女は一体いつ誰に殺されたのか。
そういったことを議論しているうちに真実は近づいていく。

西澤保彦特有のお酒を飲みつつひたすら議論するという形式。
タックシリーズなんかと似たような感じがしました。
明らかに違う点は主人公たちの年齢が40歳と
年をとっている事。
議論も出来るし、記憶もしっかりとあるけれども
その記憶は朧ろげで自分の記憶が本当に「事実」であるのかが分からない。
自分自身のアイデンティティが揺らいでしまう。
記憶とは自分自身が生きてきた証だが、重要なことさえも忘れてしまう。
何故忘れてしまったのか、忘れるのは印象にないからなのか、
自分の都合のいいように記憶を改竄してしまっているのか。

実際、自分の記憶ほどあやふやなものってないのではないだろうか。

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方舟は冬の国へ

西澤保彦
カッパノベルス
小説宝石連載
(2007.5/30読了)

これから一ヶ月のあいだ、あなたたち三人は家族になるのです。他人も羨むような、とても仲のよい夫婦、そして幸せな親子を演じていただきます。完璧に、ね

『方舟は冬の国へ』本文より

職を探しているときに見つけた職はかなりいい報酬だった。
1ヶ月間とあるところに滞在するだけ。
しかし、一切の質問はなし。
その仕事では見知らぬ女性と女の子と家族を完璧に演じるというものだった。

1ヶ月間の間、家族を演じる。
けれども、家の中は盗聴されているらしい。
ゆえにバレてはいけない。

そんなこんなではじまる家族の生活。
仲むつまじい夫婦を演じるのだからタイヘン。

相手に気を使いながらいかに仲良く見せるかという序盤からだんだんとお互いに惹かれていくラブストーリーへ…

しかし、西澤作品だけにそんな単調なものでもなく。
不思議なことに滞在している家の中では仮の妻とテレパシーが通じるのだった。
……ってまたしても超能力ものなんかいっ(笑

なぜ、そこでだけテレパシーが使えるのか。
そもそも依頼主にとってこの家族を演じることにはなんの利益があるのか。
時折遠くから覗かれているような感覚は現実?それとも……

 

最後に仰天の展開がまっているのかな、と思いきやどうやらいつもの西澤保彦のパズラーものではなく、これは…

謎が解けるという意味ではミステリなのかもしれないけど、大人のためのファンタジーといった方がしっくりくる気がする。

普通の家族よりよっぽど仲がよくて、ただの会話ですら心が暖かくなるような物語だった。
テレパシーの謎とこの擬似家族という仕事の謎が解けたあとに待ってる展開が…

西澤保彦はこういうものも書けるんだなぁ。
新たな新境地を見れたのかも(笑
懐かしいSFに触れたようなそんな感じの読後感だった。

いろんな西澤保彦作品に言えることだけれども、女性の心理をなんでこの作者はこうも自然に書けるんだろう。

女性じゃないので女性から見た感想じゃないんだけれども、栄子のような理屈じゃない言い分とか直感的なことって多々あるよなぁ。

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パズラー 謎と論理のエンタテインメント

西澤保彦
集英社文庫
(2007.9/23読了)

要するに問題はこういうことだ。高築敏郎が刺されたとされる時間帯、アリバイがあるはずの刀根館淳子は、どうしてそれを主張せずに、自分が彼を殺害してしまったと供述しているのか?

『パズラー 謎と論理のエンタテインメント』収録『アリバイ・ジ・アンビバレンス』本文より

西澤保彦の『パズラー 謎と論理のエンタテインメント』。
短編が6つ。
集英社文庫版の解説は巽昌章。

収録話:
蓮華の花
卵が割れた後で
時計じかけの小鳥
贋作「退職刑事」
チープ・トリック
アリバイ・ジ・アンビバレンス

今回は難解な名前が意外と少ないな。
それでもいっぱいあったけど。
中でも「谷谷谷谷」という苗字にはぎょっとした(笑
読めるかっ(褒め言葉

西澤保彦のパズラー。
デビュー作からミステリの中でもパズラーというジャンルを多く出してきた作家だけに見事なものである。

物語がはじまってすぐに浮き上がる疑問。
ふとした疑問からどんどん想像を膨らませていく。

タックシリーズなんかでもよくある無駄とも思えるディスカッション。
色んな可能性を吟味して吟味し続ける。
そうこうしているうちに物語が二転三転四転くらいする(笑

で、いざ核心に迫ってみると('A`) という気分になる。

真実なんか知らなきゃよかったというか、なんとも後味が悪い。
チョーモンインなどにも多いけれども、やっぱりなんかこの後味が悪いってのも西澤保彦風味なんだよな(笑
そういう後味の悪さでは『黄金色の祈り』が一番好き。

謎も読後感も西澤保彦独特の短編集でした。

一番すきなのは「卵が割れた後で」。
普通のミステリならここで終わるだろ、ってところから話がどんどん転がっていくとは…
登場人物同士の濃い関係といい、海外が舞台ならではの演出にさらにひとひねる加えてあるあたりに惚れ惚れした。

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フェティッシュ

西澤保彦
集英社文庫
(2008.10/22読了)

毎朝、起きると朝食前にまず地元新聞の葬儀告知欄をチェックする。それが直井良弘の日課だ。

『フェティッシュ』本文より

西澤保彦の『フェティッシュ』。

西澤保彦の作品の中には多くの変格といわれるSF要素を入れたものがあるが、これもそのひとつだと思う。

しかもほとんど内容を言おうにも言えねー。
いや、もうやっぱりすごいわ…

人のもつフェティッシュなところ。
女装や足フェチ、葬儀通いなどなど。
そういう人たちが出会う一人の美少年。

この美少年をめぐって色々あるわけですが、ああもうなんという…
しかしこのなんとも内容を言えないのが残念。

この美少年が絶対あれであれだと思っていたら、こういうことかとっ。

ラスト50ページのどんでん返しにつぐどんでん返しが非常に面白い本だった。
そして非常に人間臭いところだったり、西澤作品らしい後味もGOODです(笑

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リドル・ロマンス 迷宮浪漫

西澤保彦
集英社文庫
(2006.4/23読了)

いつもの西澤作品だけどなんか違う。
話の最初から既に事件は終わったあとで、そこから話がはじまる。
探偵「ハーレクイン」のもとを訪れる顧客は望みを叶えてもらう代わりになにかを失う。
それは必ずしも物質などではなく時間や心といったもの。
事件は解決する、少しずつ顧客の心の底を覗いていくように。
それはまるで自分自身の深層心理と対峙しているかのような...。

そんな西澤作品だと思って読んでみたら実は変化球だったかのような本でした。

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笑う怪獣 ミステリ劇場

西澤保彦
新潮文庫
(2007.2/4読了)

えと。つまり。
犯人は、怪獣である。
というより。その。
問題の密室をつくった張本人が、怪獣なのである。
……

『笑う怪獣 ミステリ劇場』本文より

西澤保彦の「笑う怪獣」。

連絡短編集。

いい年してナンパにあけくれる三人組が出会う「怪獣」。
誰にも知られてないが確かにそこにいる存在なのである。

まぁ西澤保彦だし、と言ったらそれまでなんだけれども。
怪獣だけでなく、宇宙人(シロクマのあれ)、変身ヒーローに幽霊。

そんな異形な存在に主人公たちは振り回されていく。
けれども内容はなぜかしっかりしたミステリ。

確かにそれらの材料がしっかりと絡んでくる。

今回の「笑う怪獣」では珍しく探偵らしい探偵をする人がいない。
一部の話は除くけど。
本を読んでいくと、なぜ彼らのようなヘンな存在が現れて、事件にどう絡んでくるのかが分かる。
そんな展開だから振り回される三人組のように不思議すぎる現象に読者も一緒に振り回されるような感覚がいいよなぁ。

最後の話までいきつくとなんかこの本の世界に居つきたいと思ってしまった。
続きとか読みたいかも。

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All About マンガっち

西島大介
INFASパブリケーションズ
(2005.12/4読了)

さてゲームと音楽について考え出すときりがないので 20世紀はぜーんぶ無視!
細野晴臣も佐藤大もTGNGもMCマリオも宮沢りえの「GAME」もすっとばして00年代の任天堂的音楽いくぞー!

西島大介『All About マンガっち』本文より

西島大介の「マンガっち」。
いまも色んなところで掲載されてるハズ。

前作「土曜日の実験室」のように色んなところに掲載された西島大介のマンガを集めたもの。
マンガといってしまっていいものか。
マンガというより批評って言った方がいい気もするけど表現しているのがマンガという形態だしなぁ。

日本沈没、アレクサンドル・ソクーロフの太陽、あさのあつこの「時空ハンターYUKI」、ドラじゃないえもんetc

ネタも様々。
これまでもセカイ系やら音楽についても色んなところで語ってきた西島氏。
かわいい絵柄に惹かれて買ってみたらなんのこっちゃさっぱり意味不明という人もきっと多かっただろうなぁ。

それでもなんとなく、ガンダムを経てエヴァに至り、そこからセカイ系へ突入した世代の一人としては西島大介の語る世界は大好きなわけでして。

小説、映像、マンガ、アニメ、音楽。
文化になんでも興味を示せる人にとっては一読してみると楽しい体験ができるかも。

映画「太陽」の昭和天皇ネタに不覚にも爆笑してしまった。
マンガとしてもおもしろいよなぁ。
ネタしらなきゃなんのこっちゃわからんけど。

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土曜日の実験室
-詩と批評とあと何か-

西島大介
INFASパブリケーションズ
(2005.12/4読了)

西島大介短編集。
短編コミックだったり、評論だったり色々入ってます。
漫画なのか?と言われると首をかしげ、小説?と聞かれると違うと答え、評論?ってツッコまれると微妙って答えてしまうようなジャンルがよくわからない本です。

さて、西島大介です。
読むのに色んな知識があればあるほど楽しめます。
エヴァ以降、セカイ系、押井守、世界の中心で愛を叫んだ獣、ウェルズ、宮崎駿、俺の歌を聞けetc.etc

なんだろ。
楽しめたもの勝ちな本です。
素直に楽しめばいいだろうし、ネタに気付けばニヤッとし、言いたいことに対して反論してみたりだとか好きにすればいいと思う。
何事も本から経験を積み、本を創作する。
そりゃ似たような作品とか出てくるわけだけど、そんなのオマージュの系譜なんてどうでもよくて、たまたまその時出会った本がおもしろかった、そういうのこそが本の楽しみ方だと思う。

思わず納得したことをいくつか
・押井守はポスト宮崎駿を『イノセンス』で捨てた→なるほどなぁ。確かにあの映画はCMで期待して見に来た観客を無視した内容だったよなぁ
・高畑勲の『山田くん』が発する批評が誰にも気付かれず無視されたから宮崎駿は『ハウルの動く城』という売れるだけのエンターテイメントを作るために誰もが知ってるキムタクを起用した→確かに。だから宇宙戦争なんかも受け入れられないわけですね

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