感想のページ 作者「み」

神栖麗奈は此処にいる

御影瑛路
電撃文庫
(2006.11/22読了)

わたし以外の人は、みんな宇宙人なんじゃないか?全員が人の殻をかぶって、最後の生き残りの地球人であるわたしを騙しているんじゃないか?たまにそんな風に考える。
そんなわけない。そんなわけないけど、そんなことを考えてしまうほどに、わたしは学校で孤独だった。

『神栖麗奈は此処にいる』本文より

「僕らはどこにも開かない」の作者の第2作目。

ページを開いて最初の一文「わたしには友達がいない」でよしキタっっ!!
と思った人は少なくないはず(笑
そしてやっぱり後ろ向きな、前回みたいな負のベクトルに向いた感情ではなく、行動や言動がネガティブな登場人物がいっぱい出てきてマス。

内容は
自殺者たちは一様に「神栖麗奈」という架空の人物に会い、影響を受け、死んでいく。
神栖麗奈とは一体誰なのか。
そして一体何者であるのか。
そんな神栖麗奈という現象の謎を解くはずが…続くのかよっ!?

続きが気になるので次作「神栖麗奈は此処に散る」へささっ、と突入しようかと思う。

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神栖麗奈は此処に散る

御影瑛路
電撃文庫
(2006.11/23読了)

結局のところ、私の意志はどこにもない。私の行動に、私の意志は反映されない。私は誰かに引っ張られ行動をとるだけ

『神栖麗奈は此処に散る』本文より

「神栖麗奈」完結編。
自殺者が自殺者を呼ぶ。
そこに決まって「神栖麗奈」という実体のないただの名称がある。
その現象のルーツへと物語は収束していく。

曖昧で不確定な現実。
そこに生きる固定されない流動的な人たちに自分というものに対して意味を持たせるという現象こそが"神栖麗奈"だったのかもなぁ。

漠然とした現実の不安感をよく描ききってきたな…
前作からもっと暴力的に刹那的なものにシフトしてくると思ったら、さらに誰しもが理解できる不安感というもののほうに来たか

次はどんな人間のマイナス面を描いてくるかが楽しみな作家です。

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僕らはどこにも開かない

御影瑛路
電撃文庫
(2006.11/21読了)

きっかけは何でもいい。
ただその衝動という弾丸は、引き金を引かれる理由を待って、飛び出すときを待っているのだ。

『僕らはどこにも開かない』本文より

イラストなしの電撃文庫。

人間の負の感情、世界に対する嫌悪感を前面に押し出してきた小説。
あまりライトノベル向けではないけれども、こういうのがあってもいいよなぁ。

あと一歩。
あと一歩、この作家が「書いてはいけない」と踏み込めなかったところまでやってのけたら大化けする気がする。

倦怠感、嫌悪感、憎悪、殺人衝動。
誰しもが持っている感情ゆえに、それを狂っているとは一概に言えないだろう。
だからこそ、
だからこそ躊躇せずに踏み込んで欲しかった。
っていうかこの作者がそういったものを出したときにはぜひとも読んでみたい。
それがげんなりするような内容になろうとも(笑

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パラダイス・クローズド タナトス
Paradise Closed THANATOS

汀こるもの
講談社ノベルス
(2008.1/23読了)

彼はこの中で一番プロに近いアマチュア名探偵。日本一死体に詳しい高校生。刑事よりも詳しいのだ。
高校生名探偵。彼の本当のリングは孤島の館などではない。彼の得意ジャンルは"本格"ではなくバリバリの社会派なのだから。

『パラダイス・クローズド タナトス』本文より

第37回メフィスト賞受賞作。
双子の美少年探偵。
ひとりは周りに死者を次々に呼び出し、ひとりは名探偵。
ミステリ作家が集まる孤島の館で起こる殺人事件がこの『パラダイス・クローズド』。

帯の推薦文は有栖川有栖。

ラストが気が抜けないというか、薀蓄を頑張って読んでよかったと思えた。
あの膨大な量の水棲生物についての文を読んだら「こう関わってくるのかっ」と。

 

さりげなく挿入されてる様々なネタにもくすっと笑わしてもらいました。
遊戯王やロマンシング・サガ、ナウシカにキューブリック、バトロワもキル・ビルも、さらには夏目漱石かなどの文芸作品まで。
どんだけ多岐にわたってるんだよっ(笑

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まごころを、君に THANATOS
sweet to sweet

汀こるもの
講談社ノベルス
(2008.5/17読了)

一瞬の美のために生まれて死んでいく。一瞬のために

『まごころを、君に』本文より

TANATOSきゅんシリーズ2冊目。
美少年双子探偵もの。

一人は探偵でもう一人は死神。
ともに美少年でナマイキ(笑
それにプラスして二人の子守である刑事が語り部。

相変わらずのアクアリストっぷりを見せ付けられ、またこの延々と続く講釈を読み続けなければいけないのかよ…
今回はグッピーの生態と遺伝について、メンデルの法則をメインに語られる。

というのが今回の魚マニア=アクアリストの死神が語ってくれるメインなんだけれども、それが関わってくる後半が面白すぎた。

認めたくないというか、なんだか気に喰わないけれども面白かった。

最初は「まごころを、君に。かよっ。エヴァかっ。今度はエヴァなのか!?美少年探偵でそれ系の属性の人たちにウケがよかったからってエヴァかよ」なんて思った。
で、やっぱりエヴァに影響を受けた世代としては気になって買った。
前作は正直うんちくは面白かったくらいにしか思ってなかったら期待しなかった分おもしろかったのもあると思うんだが。

グッピーもメインなんだけれども、今作では随所にシェイクスピアからの引用が見られる。
(正直「マクベス」と映画「ハリー・ポッター」の共通点なんてはじめて気づかされた。

その引用の量とその引用が後半にかかって来るまるでシェイクスピア作品らしき「悲劇」を描かれたとあっては興奮せざるを得ない。

なんでグッピー談義から悲劇が生まれてしまったのか謎である。
確かにグッピーなくしては、今回の話は成り立たない(笑
しかもしっかり悲劇。

それに今回の事件がシェイクスピアの「ハムレット」や「マクベス」「テンペスト」などの内容を織り込むことで、ミステリというよりも明らかに「悲劇」としか言えない展開に次から次へとつながっていったことに驚愕した。

前作より明らかに面白かったです。

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フォークの先、希望の後 THANATOS
Hedgehog's Dilemma

汀こるもの
講談社ノベルス
(2008.10/10読了)

ここでは誠意のない者、狂気に囚われた者こそが信頼に値し、愛と正義を信じるものほど危険なのです。善意などまやかしです。目に見えるもの、指で触れるものは何一つ信じてはいない。

『まごころを、君に』本文より

THANATOSシリーズ3作目『フォークの先、希望の後』。

あぁ。まただよ。
副題が「Hedgehog's Dilemma」だよ。
前作が「まごころを、君に」だっただけに確信犯だな。
これ確実にエヴァンゲリオンの第4話「雨、逃げ出した後 Hedgehog's Dilemma」だよな…

などと思っていたところ本文中に同じようなセリフがあったのでびっくらこいた。

エヴァをよく知ってる人がいたら、きっと非常に楽しい本だと思う。
本文中にどんだけネタが含まれていたことかw
また、作者なりのエヴァの解釈を本筋に絡めなているかのような内容が読めるのも面白いところ。
そんなわけでまたタイトルに釣られました。
ちくしょう。

今作はミステリというよりも死神「タナトス」の絶望と希望を描いたもの…かな。

周りにいる人を次々に死に至らしめる不能犯であるタナトス=美樹。
誰のせいでもない。
ただ周りの人が死んでいくため。
それゆえに周りから疎まれるだけの存在。

そんな彼の心に迫っていくわけだが。

これがまたいいのだ。
随分ひねくれたラブストーリー。
いや、ラブストーリーではないな。
近いんだが遠いような(笑

さながらハリネズミのジレンマのごとく、タナトスとの交流は非常に厄介極まりないもの。

それを随分と遠まわしに事件の謎と解きつつゆっくりと心を解きほぐしていく。

まったく…
これまでのひねくれた少年像が今作でさらに変わったかもしれない。
くっそ、また面白いものを書いてきやがって。
巻を進めるごとに最初に感じた狙いすぎの双子美少年探偵しかも中2病っぽいミステリという印象が変わってきたなぁ。

ミステリではなかったかもしれないけど、非常に面白いものが読めました。

もちろんこの記事執筆中のBGMは新世紀エヴァンゲリオンのDVD-BOXにあった音声特典の「Hedgehog's Dilemma」と「THANATOS」をループして聞いてます(笑

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旧宮殿にて
-15世紀末、ミラノ、レオナルドの愉悦-

三雲岳斗
双葉社
(2006.2/23読了)

15世紀のレオナルド・ダ・ヴィンチを探偵役に据えたミステリ。

「ジャーロ」に連載された短編5編を収録。

三雲岳斗のミステリです。
コールドゲヘナ以来、MGHから海底密室、ランブルフィッシュやi.d.なども読んでいるのでそれほど違和感はないのですが...

三雲さんってなんでも書くよなぁ。
ラブコメからSFミステリから。

そして今回は15世紀のイタリア。
しかも、レオナルド・ダ・ヴィンチが主役。
イタリア語のルビが満載だし、探偵も芸術家ならではの着眼点だったり、振る舞い方も芸術家だなって思えるし。

個人的に二編目の「窓のない塔から見た景色」のトリックとラスト2ページの言い回しが好き。

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聖遺の天使

三雲岳斗
双葉社
(2006.3/1読了)

奇跡を起こす聖遺物。
そんな聖遺物を所持している"沼の館"という城の主が外壁でまるで磔にされたかのようにして殺された。
しかも殺されたときには複数の人間が天使を見たという。
主の死は神によるものなのか他殺だったのか。

その謎にレオナルド・ダ・ヴィンチが挑む。

三雲岳斗によるレオナルド・ダ・ヴィンチシリーズ第一弾。
第二弾は「旧宮殿にて」。

中世の話であるがゆえに、聖遺物や聖職者、そして錬金術など現代人のしかも日本人から見るとすごく不思議な異世界の話。
それでいてミステリとしては驚異的なトリックを使ってくるときた。
ということはこの時代でもやろうと思えばこの作品で使われたトリックは可能なわけか...

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ランブルフィッシュ 10

三雲岳斗
角川スニーカー文庫
(2006.5/13読了)

ランブルフィッシュ最終巻。
ページ数はいつもの倍。
長々と続いたこのシリーズも終わりか...。

学園ものと見せかけて実はロボットもの。
それに恋愛ものが混ざったり友情ものや熱血もの、陰謀ものだったり。

ごった煮だけどそれが崩壊することもなくうまいこと収束していったという感があります。

惜しむらくは出るたびに友人に借りていたので伏線という伏線を次々に忘れていき、読んでようやく思い出したり思い出さなかったりしたことが... orz

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カーマロカ-将門異聞

三雲岳斗
双葉社
(2006.3/1読了)

平将門の乱の後、死んだはずの将門が甲斐の国に現れる。
将門を討つため、僧兵や陰陽師たちが朝廷の命を受け将門を襲撃する。

将門の真の狙いとは!?

カーマロカ-煉獄のこと。
天国に行くまでの間、生前の罪を火で浄化する。その間ずっと苦しみ続ける場所、だったかな。

生き延びた将門が本当に望んでいたものは一体なんだったのか。
そして将門の乱を起こした真の理由とは。
……将門の名を捨てた鬼王丸がカッコよすぎだ...
そりゃ誰にも止められないよな


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となり町戦争

三崎亜記
集英社文庫
(2008.5/15読了)

まるで遠い砂漠の国で起こった戦争で、死者何百人ってニュースで聞いてるみたいだ。まるで他人事だ。どうしてだろう。香西さんにとってこの戦争はリアルなの?

『となり町戦争』本文より

すばる新人賞を受賞した『となり町戦争』の文庫版。
文庫には新たに「別章」を収録。

となり町との間で戦争がはじまる。
けれども、爆発音がするわけでもないし、緊張状態も見受けられない。
実際にどこで起こっているのかわからないけれども、戦争による死者は10人20人と少しずつだけで増えているらしい。
そこで主人公の僕は戦争の偵察業務にかかわり、戦争を見ようとした。

実際なにが起こったかというとほとんど何も劇的なものは起こっていない。
にも関わらず確実に何かが起こっているという不思議な小説。

個人では把握できていないが大局では動いている、みたいな感じだ。
個人の仕事が個人を離れて放たれるとどう自分の仕事が活きていくのか。

主人公の仕事も、自分の町の戦争による死亡率を減らした。
けれども、それがなぜだか分からない。

そういう風に世界は回っている。
この世界では偵察という仕事が戦争に絡んでいた。
じゃあ現実ではどうだろう。
自分の行動は他人に社会にどう影響しているのか。

確かに。
分からないよなぁ。
予想もつかない。

特にこの主人公のように「間接的に戦争に参加し人を殺す要因をつくった」。
そういう意味での葛藤を見せ付けられるといろいろ感じずにはいられなかった。

 

あと表紙が素敵。
この「何も起きていないかのような」予感をさせるところがうまいこと本の内容を表してるよなぁ。

蛇足だけれども、新規収録の「別章」はいらなかったよーな…
本編と同じテーマを別の角度から書いた内容だったと思えるし。
同じテーマで二度読まされてもな…

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向日葵の咲かない夏

道尾秀介
新潮文庫
(2009.5/17読了)

わからない。ミチオの意図が、どうしてもわからない。
陽は沈み、薄闇が周囲を取り囲んでいた。木々の輪郭も、対峙する少年の表情も、しだいに曖昧になりつつあった。
「僕が、いったい何をしようとしているのか、不思議なんでしょう?」

『向日葵の咲かない夏』本文より

このミステリーがすごい!2009年度版の1位『向日葵の咲かない夏』。

なんとも気持ちの悪い小説である、というのがこの本の第一印象。
子供の純粋さ、大人の純粋さ。
この場合の純粋さはキレイなキラキラしたものなどではない。
むしろ純粋にドス黒く光っているというか…

動物たちが足を折られ口の中に石鹸を入れて殺される事件からすべてははじまる。
主人公である小学生のミチオはある時に友人のS君が首を吊って死んでいるのを発見。
しかし再び現場に戻ると死体はなくなっていた。
そしてS君は蜘蛛になって転生していた。

そのS君と共にS君の死体を探すいわばスタンド・バイ・ミーみたいな話なのだが。

そもそも別の生物に生まれ変わるということを読者は受け入れなきゃならない。

これでミステリなのかよ、というとしっかりミステリしているのだ。
むしろこれを受け入れないとこの本の醍醐味を味わえないわけだが(笑

最後の大仕掛けはたしかに大胆で仰天し、そしてなによりもものすごくげんなりした。
確かに終始恐ろしく気持ち悪く進んでいくストーリーを考えるとものすごくいい着地点だったのかもしれない。

けどなぁ。
不気味すぎる。

主人公のミチオくん。
最初は確かに小学生っぽいんだが、だんだんとその純粋さに別のベクトルが加わりこいつが一体何者なのか知りたくないような少年へと変わっていくのが、な。
それこそがミソなんだけれど…

ともあれミステリ読みであって、特殊な世界観を持つものが好きなら一度読んでおいて損はないかと。

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終末の邪教(上)
新ロードス島戦記 5

水野良
角川スニーカー文庫
(2006.2/24読了)

暗黒の島のマーモ帝国は滅びた。
しかし、真の敵は他に存在した。
世界を滅ぼそうとする教団との最後の戦いがはじまる。

1998年から続いた「新ロードス島戦記」もいよいよ佳境に。
(ロードス島戦記から数えればもう少しで20年なんだよなぁ。

感想とか
…下巻マダー。
連載のスピードから考えると最終巻は1年後くらいか…。
次の巻では前々作のパーンやディードも出てくるようですし実に楽しみ。

それにしてもロードス島戦記史上最も過酷な展開なのではないだろうか >この巻

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終末の邪教(下)
新ロードス島戦記 6

水野良
角川スニーカー文庫
(2006.12/2読了)

「お久しぶりです、ロードスの騎士」
「無事だったようだな……」
「マーモ公スパーク。いや、もはやマーモ王と呼ぶべきかな」

『終末の邪教(下)』本文より

20年にわたって描かれてきたロードス島戦記ここに完結。

新ロードス島戦記になってからはスパーク公による暗黒の島マーモの統一の話へと移り変わっていった。
島を覆う闇の深さ、そして英雄たちの様々な愛のカタチが示されていった物語でもあったと思う。

ラストのスパークとニースの終末でのやりとりがもうすんごいよかった。
まさに愛だなぁ、っていうような。

そっか…ついにロードスの物語も完結なんだよなぁ。
英雄騎士伝からロードスを知り、全部読んで、TRPGに手を出したりもして、そしてそれから約10年。

十分すぎるほどにこの物語を楽しめたなぁ。
(さて、新装版ロードスが出るとか聞いたけどどうしようか(笑

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牧歌の国の魔法戦士
魔法戦士リウイ ファーラムの剣 3

水野良
富士見ファンタジア文庫
ドラゴンマガジン連載
(2006.2/24読了)

魔精霊アトンを倒すために鍛冶師ヴァンの作った武具を探すリウイたち。
次に訪れたのは草原の国ミラルゴの端にある巨人像。
そこで出会ったのは巨人像を500年ものあいだ守ってきた部族と一人の巫女だった。

魔法戦士リウイ最終章第3巻。

1年ぶりのリウイです。
牧歌の国と平和そうなタイトルとは裏腹に「戦争」の巻。
そして魔精霊アトンとの戦い。
…燃えですな。

竜を従え、伝説的な武具を身につけ、アイラという参謀などもついている…
驚異的なパーティーだよなぁ。
ソードワールドの数値で表すとどれくらいになるんだろ、と思ったり。

次の話の「鋼の国の魔法戦士」も連載は終わってるようなので文庫化はきっと早いはず。

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鋼の国の魔法戦士
魔法戦士リウイ ファーラムの剣 4

水野良
富士見ファンタジア文庫
ドラゴンマガジン連載
(2007.1/2読了)

よく負けなかったものだ。人間を倒すことが、おまえが求める強さじゃないからな……

『鋼の国の魔法戦士』本文より

魔法戦士リウイ17冊目。
ファーラムの剣編4冊目。

城塞都市プリシスとそこを治める鋼の女王ジューネの話。

まさか10日以上も積読状態にするとわ……。

初期のころのはっちゃけっぷりはもう見る影もないよなぁ、とか思った。
ただ世界を救うという使命を果たすために進むのみ。
そして今回対峙することになるのは、ただ一つの目的のためにリウイの前に立ちはだかった者。
その目的はリウイたちにとって敵対するものであるが、しかし今回は害悪という相手ではない。
人間を自分たちの目的のために殺すというものだったが…。

重いな…
決してハッピーエンドではないし、ただの経過点ではあるんだろうけれども…
リウイたちにとっての目的のための決断力はここで大幅に上がったんだろうなぁ。

次はついにイーストエンド。
SW短編集などでも異色のものが大抵ここが舞台になるわけだけれども。
でもリウイもロードスなんていう異色中の異色の土地にもいったしなぁ。
イーストエンドは文化からして相当ギャップのあるものになるんだろなー。

語り口調が一人称などではなく、だんだんと客観的なような物語を語られているような感覚を覚えるのは気のせいなんかなぁ。

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神代の島の魔法戦士
魔法戦士リウイ ファーラムの剣 5

水野良
富士見ファンタジア文庫
ドラゴンマガジン連載
(2007.12/23読了)

「土着の太陽神を信仰している未開の島だと聞いてはいるが……」
「噂はいろいろある。だが、実際どうかはいってみないことにはな」

『神代の島の魔法戦士』本文より

魔法戦士リウイ第3部「ファーラムの剣」5巻。
93年からはじまったシリーズも18冊目。
シリーズが終わる頃には20年目くらいなんだろな…

ソードワールドのシリーズでもほとんど語られていないイーストエンドが舞台。
だんだんと魔精霊アトンの復活が近づいてきていることと、次巻の「嵐の海の魔法戦士」への伏線が張られた巻だったように感じた。

結局イーストエンドの謎に包まれていたベールはなんかあんまり魅力に感じられなかったし、異国の文化同士の衝突も万事うまいこと解決の方向へ行っちゃったもんだからちょっと残念。

第2部以降が1冊1国だから国自体を掘り下げられないことも分かるんだけども…
次回もまぁイーストエンドが絡んでいそうだし、さらにこの国の魅力が引き出されればいいんだけども。

女性版リウイは意外によかった(笑

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嵐の海の魔法戦士
魔法戦士リウイ ファーラムの剣 6

水野良
富士見ファンタジア文庫
ドラゴンマガジン連載
(2008.8/30読了)

勇気なんて、他人から与えられるものじゃないわ! 自分の心のなかから、一生懸命、ひっぱりだしてくるものよ。

『嵐の海の魔法戦士』本文より

『魔法戦士リウイ』第3部ファーラムの剣6巻目。
ついに折り返し点かな。

今回の舞台は海の民の王国バイカル。
海の民は財政難であり、頼みの綱は海賊王バラックの残した宝にあり。

嵐の海を乗り越え、バラックの財宝とそこにあるという聖剣を探索するための冒険が今回。

シヴィルかわいいよ ヽ(゚∀゚)ノ
いや、もうまさか…あんなカッコで登場とは。

あとイラストでいうとヴァルキリーの衣装が某ゲームのヴァルキリーのようだと思えてしまった(笑

本編の方は随分と話が進んできた。
伏線がかなり期待できそうな内容だったし。
次はティカと幼竜クリシュが再び主役になるっぽいしな…
リウイ最終章の中でも予想される激しい戦いの一つであるのは確かだろうし。

「嵐の海~」ではヴァルキリーが大きな役割を果たすだけあって、「勇気」というものが様々な場面で描かれていた。
中でも小さな勇者たちの登場と活躍はかなりヒットです ヽ(´ー`)ノ

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スターシップ・オペレーターズ 6

水野良
イラスト:内藤隆
電撃文庫
(2008.12/18読了)

「スターシップ・チャンネルが終わってもいいということですか?」
シノンはヘッドセットのマイクに向かって、問い返す。
「――視聴者の支持が得られなくなったら、どのみちチャンネルはおしまいよ」
「わたしたちに死ねということですか?」
「――それは、わたしたちが決めることじゃないから……」

『スターシップ・オペレーターズ 6』本文より

思えば6巻だけ読んでないや、ということで買ってきた。
この6巻以降新刊って出てないんだな。
6巻出てから3年半が経過しているんだが。

アマテラスの快進撃が続く中、人気も横ばいになってきた。
確かに現在も人気も得ている。
しかし、このまま視聴者が増えない限りはどこかで終わらせる必要がある。
そんな可能性が出てきた。

じゃあ終わらせるにはどうすればいいのか。
爆散か。
投降か。
投降しても大きな刑に課せられるのは確実という現実。

クルーの人間にしても、それに関わる人間も大きな岐路に立たされたわけだが。
…ここで終わりかよ。
キリのいいところだけれども、終わりもついに見えてきただけに続刊がまだ見れない状態なのが残念だよなぁ。

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ICO -霧の城-

宮部みゆき
表紙イラスト:放電映像
講談社ノベルス
(2008.10/22読了)

つないだ手からイコの身体へと、また、微風のように優しく、継母さまの膝のように安らかな感じが伝わってきた。

『ICO -霧の城-』本文より

ゲーム『ICO』のノベライズ。
講談社ノベルス版の表紙は放電映像。
思わず表紙買いしてしまった。

ゲームは未プレイ。
霧の城の中を少年と少女が手を繋いで探索するアクションRPGってことを知ってるくらい。

生贄を求める霧の城の不気味さ。
徐々に紐解かれていく霧の城の謎。
少年の成長。

うおおー。
なんという王道ファンタジー。

城の探索はもとより、霧の城の真実が暴かれた時のなんと面白いことか。
なにより生贄とされた少年と城に囚われていた少女の両サイドから話が展開していくから、どんどん二人に感情移入できる内容だったのもすごくよかった。

特にラストあたりの主人公の葛藤がたまらない。

それにしても手を繋ぐっていいですよね (*´Д`)
最初に手を触れたときの描写ってのもたまらんです。
それに、この手を繋ぐ行為が物語の中でもかなり重要な位置をしめ続けるってのも好み。
ゲームの特性でもあったんだろうけれども、物語として昇華してみせてくれたのも作者の手腕なんだろうなぁ。

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ブレイブ・ストーリー BRAVE STORY 上中下

宮部みゆき
表紙イラスト:放電映像
講談社ノベルス
(2008.12/22読了)

「母さん、僕は旅をしてるんだ。自分の運命を変える旅を」

『ブレイブ・ストーリー 中』本文より

宮部みゆきの『ブレイブ・ストーリー』。
解説は大原まり子。

ゲームが好きで、友達づきあいもいい三谷亘。
家族の中もよくて、父親とも母親ともよく話したりする。
しかし、あるとき父親が外に女性を作り、家を出て行ってしまう。
突然の家庭の崩壊。
そのときあらゆる困難を乗り越えてでも、運命を変えたいと思う者の前に現れる「幻界」への扉が亘の前に開き…

全3巻を一気に読了!
ものすごくおもしろかった。

ファンタジー要素もたいへん面白い。
それ以上に、これでもかというくらいに現実パートに時間を割き、少しずつ少しずつ幻界と現実をリンクさせていくさまは見事なもんです。

亘は現実/幻界を旅することで成長していき、この旅の終焉に待ち受け自らの運命を見出していく。
その過程で仲間とのやりとり、幻界で会う様々な事情を抱えた人との出会い、悪人との出会い。

ファンタジー世界でありながら、現実世界となんら変わらない。
いろんな人がいて世界が構成されている。

その中で亘自身が本当に望むものはなんなのか、自分の生きている世界ってなんなのかを向き合い模索しながら成長する様にはどきどきしながら見守っていくかのように読めた。
そうだよな。世界、社会ってのはなんとも理不尽で自分勝手だったりする。でも絶妙なバランスでなりたってるんだよなぁ。

様々な冒険を経て、ラストを迎えたときの亘の行動にはじーんと来た。
まったく……いい男になりやがって (;´д⊂

大人から子供まで、誰もがわくわくしながら読めるそんなファンタジー小説だと思います。

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R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム

宮部みゆき
集英社文庫
(2007.10/4読了)

ロール・プレーイング(Role-playing)
実際の場面を想定し、さまざまな役割を演じさせて、問題の解決法を会得させる学習法。役割実演法。

『R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム』本文より

はじめて宮部みゆきの本を読んだ。
まずは「R.P.G.」から(笑
ゲーム好きの宮部みゆきの本でこのタイトルなら~と思ったらいわゆるRPGなんて全然出てこないし。
だけれども、このタイトルからしてこの本にしかけられたトリックがはじまっているような気がしてならない。

あらすじすら紹介するのがちょっとためらわれるような内容だった。

普通ならこれは短編に用いられるようなネタなんだろうけれども、中篇~長編くらいの長さにすることで、余計に騙されることで驚けたのかも。

会話のシーンなどがふんだんに使われることで、どんどん誤った方向へ目が向いてしまったような感じだ(笑

以下でちょっとネタバレあり


RPG=役割を演じるゲーム。

これを登場人物たちが家族のフリをしていることで、現実とネット上の二つの人格を持つことになる。
それに読んでて翻弄されるわけだけれども、これにさらに「RPG」という意味を付け加えたところに行き着くとはなぁ…。

騙されるのが少し楽しい小説だった。

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龍は眠る

宮部みゆき
新潮文庫
(2007.10/13読了)

高坂さん、超常能力者って言葉を聞いたことがありますか?

『龍は眠る』本文より

宮部みゆきの『龍は眠る』。
第四十五回日本推理作家協会賞の長篇部門受賞作。

自転車がパンクし立ち往生している少年を車で拾ったところ彼は「自分は超能力者なんだ」と言う。

宮部みゆきが書いた本で内容が超能力者か。
なんかそれだけで「宮部みゆき」らしさを感じてしまうのはエッセイとかの読みすぎか(笑

超能力者は実在するのかどうかというところから始まり、超能力を持ってしまったがゆえの苦悩を遠巻きから感じてだんだんと核心へと近づいていくような内容。

他人に絶対話せないようなことは誰にでもあると思う。
この話では彼らの超能力そのもの。
その能力を持ったがゆえの苦悩を読者は見てしまって、その悩みを真摯に聞いてあげるような感覚で読んでしまった。

だからこの本に共感できるという人が多いんじゃないかなーって思った。

逆に感情移入しづらかったら、この本はものすごく楽しくないものであるような気もする。

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