感想のページ 作者「ゆ」

ドグラ・マグラ

夢野久作
角川文庫
(2006.8/27読了)

日本のミステリにおける「三大奇書」の一つと称されている夢野久作のドグラ・マグラ。
読み終えた人は精神に異常をきたすとも言われていますがはたして…。

もともと最初に出版されたのは昭和10年(1935)。
いまから70年前。
2・26事件の1年前です。
なので読む人はそれなりに根性が必要かと。
口語調で書かれているけれどもやっぱり読み進めにくいのは確かなので。

舞台は九州の精神病院。
主人公は記憶を失った青年。
精神病院で行われた実験の核を青年の失われた記憶が握っている。
そして青年は記憶を取り戻させられるために様々な話を聞かされ、論文や新聞記事を読むこととなる。

脳髄は物を考える処に非ずという「脳髄論」。
精神病院の異常さを謳った「キチガイ地獄外道祭文」。
胎児は腹の中で人間の進化する過程をすべて見せられているという論文「胎児の夢」。
……

いくつもの狂人に関する記述、それらに関わった人物の証言、精神病院に収容されている人にまつわる惨劇。

一つのストーリーとしての道を読み進めるのではなく、いくつもの断片をあわせてはじめてこの物語が成立するんじゃ…。

あまりに難解です。
理解できるか?と聞かれても「分からない。理解ができない」と答えるしかないのかもしれない。

でもこの「ドグラ・マグラ」という話って再び物語のスタートラインに立ったという話のような。

理解しようと再読を繰り返すとこの物語に囚われてしまうような錯覚に陥りそう。
いままで培ってきたアイデンティティを疑いにかかってしまいそうな(笑

すごいものを読んでしまったなァ。

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