感想のページ 作者「よ」

クライマーズ・ハイ

横山秀夫
文春文庫
(2008.8/29読了)

「なあ安西、お前、なんで山に登るんだ?」
「下りるためさ」
安西はあっさりと答えた。
悠木は梯子段を外された思いだった。
「下りるため……?」
「そ、下りるために登るんさ」

『クライマーズ・ハイ』本文より

『クライマーズ・ハイ』を読了。
文庫版解説は後藤正治。

冒頭にある引用の言葉。
あぁ、これは分かる気がすると最初で思ってしまって orz

この言葉の持ち主と主人公の「クライマーズ・ハイ」とも呼べるような人生。
まるで比較するかのような生き方の違いが熱く描かれていた。

85年の航空機事故が発生。
地元としての新聞のあり方を問いながら、ひた走るひとりの記者。

なにが自身の正義か、遺族が求める新聞とはなにか。
現実とひたすら戦いながら自分を貫こうとする様が非常に熱い。

それもページをめくらせてくれる要素なのだが、実際にあった事件や当時の世相、そして作者がこの当時に記者をしていたということも大きな要因。
リアリティのある筆圧を感じる小説だった。

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半落ち

横山秀夫
講談社文庫
(2005.10/13読了)

「妻を殺した」と自首してきた現職の警部。
彼はアルツハイマーを患った妻のことを想い、妻を殺害。
最愛の妻を殺害後「二日間」自らの死に場所を求めさすらったと供述するがどこに行ったかはだけは口を閉ざしたままだった。

部下の刑事や記者、弁護士、裁判官など様々な人の視点から犯人である現職警官を追う重厚なストーリィ。

ネタバレ含みます


生きる目的をすべて失ったとして、それでも生きる目的を見出せるのかというのがテーマの本。
そうだとしたら犯人の梶がとった行動って"すべてを忘れていくことを恐れた妻を殺してあげること"だったわけだけど、それって治る希望すら絶ってしまうということになるわけか。
アルツハイマーのことをよくわかっていないから言えることなのかもしれないけど……。
これらのことから裁判長の章でのラスト1ページには賛成。
そんな優しさならこの世に必要などないと思う。

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