感想のページ 作者「れ」

黄昏のベルリン

連城三紀彦
文春文庫
(2008.3/14読了)

不思議ね、私は子供の頃から運命って言葉を信じたことはないの。運命なんてなくて、私の人生があるだけだったわ。私がたとえば数分後に事故に遭って死んだとしても、それは私の生き方だわ。でも、二度だけ私は運命という言葉を信じようとしたのよ。マイクと出会った時と、それからあなたと出会った時と――

『黄昏のベルリン』本文より

1988年の「週刊文春」傑作ミステリーベスト10の1位作品。

ドイツ人女性から自分が第二次世界大戦中に強制収容所で生まれたと知らされ、自分の出生のルーツを探るため遥かヨーロッパへ旅立つ主人公の画家。
東京からベルリン、ニューヨークにパリと自分の出生の秘密を探っていく過程で次々に謎が降りかかってくる展開がエキサイティング。

そして登場人物たちが自分を強く持っている、いや、あまりにもハードボイルドな人たちというのもなんだか渋みがある。
登場する世界の様々な場所は随分と色彩豊かな表現で描かれるのに、この登場人物たちのハードボイルドさによってこの世界観が妙に厳格なものに仕上がってるよな…

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